藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

すでにある徴候。

認知症は、これから日本でも最も広がっていく病気だという。
決定的な原因がわからないことと、つまり特効薬がないことが国中の不安を集めている。
それはともかく。

多くの認知症の方たちと会って話し、さて「普段の仕事仲間」と話していると、妙な共通点に気がついた。

「人の話を聞かないとか、聞こうとしない姿勢」とか。
「関心がない話題については、完全に無表情になる」とか。
「日中頻繁に"生あくび"をする」とか。
さらに「バイアス(固定観念)でしか物事を見ない」という具合に続く。

つまり、なんというか「すでに始まっている感じ」がするのだ。
"脳の老化の徴候"はすでに40代くらいから出ているのではないだろうか。

まだ認知症の原因については「若い頃の性向」についての研究は聞かないが、どうも「少しづつの徴候」は出ているような気がする。
また認知症の症状については、幼児体験やPTSDなどが影響する、という説も多いが結局は「幼い頃からの生活感情の蓄積」がもたらしているというのは珍説だろうか。

徘徊には理由がある、とか凶暴な行動には過去のトラウマがある、と言われているが、結局は「それまでの蓄積」が老年に出るのだとすれば、老年期に鎮静の薬だけを処方しても解決はしない。

若い頃から「将来に渡って傷を残す感情に配慮」しないと認知症の発症の根本解決にはならないのではないだろうか。

今の効果の出にくい薬物処方を見ていて、つくづくそう思うのだ。
心の病気は心を診ないと治らないのではないだろうか。

「脳は何歳になっても若返る」医師が教える「認知症」予防&治療〈週刊朝日
 認知症の根本治療薬はまだないが、進行を遅らせる薬はある。また認知症は、自分の心持ちひとつで発症を遅らせたり、進行を遅らせたりできる病気でもある。一方的に怖がらずに理解し、毎日の生活を変えることが大切だ。【図表】認知症の「薬物療法」と「非薬物療法」ってどんな治療?

 認知症は、物忘れをおもな症状とした脳の病気だ。いろいろな原因から細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりすることで脳に障害が起こり、生活に支障をきたす。まず記憶障害(物忘れ)が起こり、思考や判断力の低下、会話の途切れや、見当識が失われる(後述)などといった認知機能の障害も起こる。

認知症の定義は、これらの障害が6カ月以上続き、社会生活や日常生活に支障をきたしている状態であることだ。

愛知県在住の富永幸子さん(仮名・78歳)の娘は、久しぶりに会った母親の財布が膨らんでいることに気が付いた。連れだってスーパーで買い物をすると、小銭がたくさんあるのに1万円札で支払うそぶりを見せた。実家の冷蔵庫を開けると、印鑑が卵を並べるところに置いてあった。

認知症専門医の遠藤英俊医師はこう話す。

認知症の診断基準として、(1)お金(請求書)の支払いができない、(2)薬の服用が守れない、が指標となっています。前者は信用を失ったり周りの人を巻き込んで迷惑をかけたりし、後者は自分の命にかかわったりします。認知症は本人や家族の生活に影響を及ぼすからこそ、介護が大変な病気と認識されているのです」

現在の日本には、600万人程度の認知症患者がいると言われている。主な原因となる病気は70種類以上もあり、ほとんどの認知症神経変性疾患や脳血管障害が原因のため、進行を遅らせることができても根本的に治療をすることはできない。もっとも多い認知症の原因は、神経変性である「アルツハイマー認知症」。また、「脳血管性認知症」や「レビー小体型認知症」も数が多いため3大認知症と呼ばれ、全体の約90%を占めている。

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 プライドが高い富永さんを病院に連れていくために、娘は芝居をした。「受けたい検査があるの。お母さんも一緒に受診しない?」と。

「病院に行くことを話す際には、その方の心やプライドを傷つけないことが大切です。家族に対する不信感を抱かせないように注意しましょう。頭ごなしに説得することは禁物です」(遠藤医師)

認知症を疑ったら、専門医がいる「物忘れ外来」や「認知症外来」を受診する。一般病院の場合は、神経内科脳神経外科、老年科を初診に選ぶことが多い。どうしても受診を拒否する場合には、各市町村の認知症初期集中支援チームに相談すると、チームメンバーが自宅にまで来てくれるサービスもある。

病院ではまず「問診」をする。付き添いの家族と本人を個別に最近の生活の様子や病歴、服用している薬を聞く。次の検査は「心理検査・知能検査」。本人の記憶力や認知機能の程度を調べ、簡易長谷川式認知症スケールやMMSE(ミニメンタルステート検査)をおこなう。ビタミン欠乏症や甲状腺の機能低下がないか「血液検査」をし、CT(脳の断面図を撮影し、脳の萎縮や変化を調べる)、MRI(脳の周りに電磁波を当てて、脳の萎縮を診る)では、腫瘍や脳梗塞などの病変の有無がわかる。初期に一定の部位の血流が悪くなるアルツハイマー認知症は、SPECT(脳の血流量を調べる)検査をすることで早期診断が可能だ。検査結果を総合して医師が診断する。

認知症の根本治療薬はありませんが、認知機能を改善したり、進行を遅らせたりする薬はあります。ただ、それらの薬も有効率は3〜4割程度なので、薬だけでは限界があります。認知症の治療は、薬物療法に加えて、適切なケアを提供する、心とからだによいとされるリハビリテーションをおこなうことが大切です」(同)

認知症の治療は、「薬物療法」と「非薬物療法(脳活性リハビリテーション)」に加えて「適切なケア」と「なじみの環境」の四つが柱となる。予防に始まり、MCI(軽度認知障害)、中等度から終末期まで継ぎ目なしに診る「フルステージ診療」が主流になりつつある。環境が変わると認知症の症状が悪化するため、なじみの環境の維持も重要だ。また認知症の人は、自分が今いる場所や状況を正しく認識することができなくなる「見当識障害」を発症する。認知症の進行を遅らせるには、決まった時間に食事をとるなど時間の感覚を維持させることが大切。主治医選びは、患者の状態をきちんと把握し、生活指導をしてくれるかがポイントになる。「主治医によって寿命が変わる」と言っても過言ではない。

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「脳は何歳になっても若返る」と話すのは、脳内科医でMRI脳画像分析を専門とする加藤俊徳医師だ。脳の中には記憶を司る「海馬」があり、目や耳から入ってきた情報を集めて整理をしている。アルツハイマー認知症は、この海馬が萎縮することで発症する。逆に言えば、海馬を元気にするような生活を送ることが、健康な脳を保つ秘訣である。

「脳細胞の代謝には酸素が必要不可欠です。特に海馬は、脳の中でも多くの酸素を必要とします。深呼吸や瞑想をするなど、新鮮な酸素を豊富に取り入れるようにしましょう」(加藤医師)

ほとんどの認知症は、現在の医学では治すことはできない。喫煙者は非喫煙者よりも約4倍、糖尿病の人もそうでない人に比べると約4倍、アルツハイマー認知症になりやすいといわれている。要は、生活習慣病を予防・治療することが、認知症予防につながる。魚や野菜、ナッツ類など、認知症予防によいとされる食材を積極的に取り入れつつ、バランスのよい食事をすると脳の働きも活性化する。脳は、日々の刺激によって変化し成長するので、常に新しいことに興味を持って挑戦する。熱中できる趣味を見つけて、ストレスフリーになる。

「たばこや深酒をやめて、規則正しい生活を心がけましょう。新聞を読んだり、いろんな人とコミュニケーションをとったりするなど、意識して脳を使う生活に変えていきましょう。適度な運動をおこない、足腰を丈夫に保つことも大切です。認知症を予防することは、難しくないのです」(同)

知的活動、適切な栄養、適度な運動、社会参加が認知症予防となる。脳を若々しく保つために、自分の生活を振り返ってみることが大切だ。(本誌・長谷川拓美)

週刊朝日  2018年4月20日