藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

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Uberがそのうちトヨタをも脅かすという話。
確かにAirbnb(エアービーアンドビー)とか
Uber(ウーバー)とかつまり今まで「相乗り」とか「間貸し」とか既にあるものだが、ITのパワーを駆使すると恐ろしい効果をもたらす。

未だITの最大のパワーは「スピードとシェア」である。
つまり時間と空間の節約だ。

この調子でいけば、まだまだ応用分野はありそうだ。
例えば会社の採用とか、
人の出会いとか、
時間のシェアとか、
つまり"色んなエネルギーをシェアして効率化する"ということならば何でも当てはまりそうだ。
近所のスーパーに行くのだって、ついでにお願いすれば便利だし。
自分の持っている旅行カバンは使ってもらって構わない。
食事やお酒の相手だって、推薦の書籍だって、旅行だって何でもお互いが活用できる。

本気でその分野を編集する人がこれからも次から次へと現れて、まだまだIT化は進んでいくのに違いない。
柳の下のドジョウはまだまだいっぱい泳いでいそうである。

ウォール街の予言 カーシェアが「産業の王」を脅かす  編集委員 西條都夫
2015/12/22 6:30ニュースソース日本経済新聞 電子版
 今年11月17日、全米の自動車関係者を震撼(しんかん)させた一通のリポートが発表された。著者は米モルガン・スタンレーのアナリストで、自動車セクター分析のグローバルヘッドであるアダム・ジョナス氏。日本を含む各国で基軸産業の座を占め、かつてピーター・ドラッカーが「産業の王」と呼んだ自動車業界が近い将来、破壊的イノベーションにさらされて、場合によってはdisruptされる恐れがある。そんなショッキングな内容である。
筆者が注目した記事・12月17日 日経新聞朝刊13面「トヨタ、来年も1000万台超」・12月6日  日経ヴェリタス46面「シェアリングエコノミーの衝撃」
 disruptは日本語に訳しにくい言葉だが、写真フィルムの米イーストマン・コダックデジタルカメラにdisruptされ、携帯電話で世界一だったノキアフィンランド)は米アップルのアイフォーンにdisruptされた、と言えば、イメージが湧くだろうか。ある日突然、新手の競争相手が登場し、長年かけて築き上げた工場などの事業基盤や、組織内に蓄えた技術や熟練が意味を失い、会社が根底からひっくり返る。そんな事態を指す言葉だ。
ウーバーと契約していることを示す印を出す車(6月、米ニューヨーク)=ロイター
 では、何が自動車産業をdisruptするのか。今はやりの自動運転技術ではない。モーターとバッテリーさえあれば、誰にでも簡単につくれるといわれる電気自動車(EV)でもない。リポートのタイトル「Autos&Shared Mobility」が示すとおり、1つのクルマを多人数で使うカーシェアやライドシェアが自動車産業を追い詰めるという。
 このリポートの著者のジョナス氏がこのほど来日し、彼と話す機会があった。その言い分をかいつまんで紹介しよう。
クルマは「所有する(own)モノ」から「分かち合う(share)モノ」に変質する

 今でも分かち合うクルマがないわけではない。だれでも対価を払えば利用できるタクシーやレンタカーは「多人数でシェアするクルマ」の一形態だ。いわゆるカー・シェアサービスは日本でもそれなりに定着してきたし、米国ではウーバーテクノロジーズなど素人運転手がハンドルを握るライドシェアも登場した。
西條都夫(さいじょう・くにお) 87年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て編集局編集委員論説委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。
 ただ、今は「所有されるクルマ」が圧倒的に多い。マイカーを、見ず知らずの他人が運転することはない。ジョナス氏の試算では、世界中のクルマの累計走行距離は現時点で年間およそ10兆マイル(1マイルは約1.6キロ)で、このうち自分の車を自分のために運転する走行形態が全体の96%を占め、残る4%がタクシーやレンタカーやウーバーのようなシェア型の走行だという。
 ところが、ウーバー型を中心にライドシェアの比重は年を追うごとに大きく伸び、2030年にはシェア型走行が全体の56%を占め、「自分のクルマを自分のために運転する」は44%と少数派になるという。台数的にはそれでも「所有されるクルマ」が多いかもしれないが、ライドシェア型のクルマは稼働率が高いので(つまり駐車場にムダに止まっている時間が短い)走行距離ベースでは過半を占めるのだ。
ウーバーがトヨタに追いつくのは簡単

 トヨタは世界最大の自動車メーカーで、売上高はおよそ2500億ドル(約30兆円)。新車販売における世界シェアが13%に達する堂々の巨人である。
 では自動車市場を台数ベースでなく、走行距離ベースで見てみよう。すると年間10兆マイルの走行のうち、ウーバー車の延べ走行距離は近々年間200億マイルに達し、世界走行シェアは0.2%に達する。1マイル走るごとのウーバーの平均売り上げ(運転手の取り分を含む)は1.5ドルで、この中には車両購入コストにとどまらず、駐車場や保険、修理などもろもろのコスト(むろん人件費も)が含まれている。
 これをベースに計算すると、トヨタの売り上げにウーバーが追い付くためには走行シェアが1.7%まで増えればいい。「同社の過去の実績を見ると、これはそれほど困難な目標ではない」とジョナス氏。80年の歴史を誇るトヨタに、創業10年に満たないウーバーが会社規模でひけを取らなくなる日も近いと予言する。
新車販売は今から10年後に頭打ちになる

 「クルマの分かち合い」が増えることで、これまで順調に伸びてきた新車の販売台数は2025年ごろに1億台弱に達し、その後は頭打ちになるだろうと予測する。ただし、走行距離は伸びる。今のクルマの平均稼働率は3.5%(一日約50分)にすぎないが、多くの人がシェアすることで1台当たりの走行距離は大きく伸びるからだ。
トヨタの売り上げにウーバーが追い付くのは「困難な目標ではない」と語るジョナス氏
 「でも頭打ちなら、自動車業界は成長の壁に突き当たるにしても、disruptされることはないのでは」と質問すると、「自分のクルマから他人と共有するクルマに変わることで、自動車のコモディティー化が急速に進むだろう。これは既存の自動車メーカーにとって大きな挑戦だ」という答えが返ってきた。
 これは明言しなかったが、恐らくジョナス氏の頭にはエンタープライズ(法人向け)IT市場とのアナロジーがあるのではないか。「ITパワーのシェア」ともいえるクラウドコンピューティングの普及で、米IBMやヒューレット・パッカードなど法人向けの大型ハード企業は軒並み苦しい状況が続いている。お得意先の企業ユーザーが自分専用のマシンをあまり買わなくなったからだ。

 日本の自動車産業リーマン・ショック東日本大震災など数々の苦難を乗り越えて、再びピークを迎えつつある。関係者を取材しても、表情や言葉の端々から自信が伝わってくることが多い。だが、時にはジョナス氏のような「煙たい話」「不吉な話」に耳を傾けることも必要だろう。ちなみに今回驚いたのはジョナス氏はIT系の人間ではなく、長年にわたって自動車業界をカバーしてきたカー・ガイであることだ。トヨタとウーバーを同列で論じる自動車アナリストがウォール街の中枢に存在することの意味は、けっして小さくない。