藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

どちらも世界最大。(Uber)

UberAirbnb
車の移動と宿泊施設。
どちらもエネルギー効率とスピード性からみて"シェアリング"にとても馴染む。
Uberは始まって六年。
ドライバーはすでに世界361都市で110万人を超え、月一億回を超える実車はすでに世界最大の旅客企業だという。

自分は知らなかったが例えばUberでは「行先のオーダーを受けて配車し、目的地に人を運ぶ」だけではなく「どこかの目的地へ移動する"ドライバーの移動の流れ"に合わせて、それに乗りたい人を集める」という。

まさに巨大な物流の(相乗り)コントロール・システムである。

さらにすでにこの物流網に、食品やモノを乗せることが始まっているというから、宅配便とか郵便網なども巻き込んで大規模な物流網の再編が起きる可能性が高い。
まだ新しいサービスだけに、トラブルとか事故対応のノウハウもこれから蓄積されていく必要があるが、ともかく「ITを駆使してシェアする」という潮流は弱まることはないだろう。

仕組みを聞いてみれば実に自然で無理がなく、いままで登場しなかったのが不思議とさえ思えるくらいだが、目指す方向に無理がない故の急成長なのだと思う。

中国、ウーバーが爆発的成長 会社員も副業で稼ぐ 2015/12/22 6:30日本経済新聞 電子版

 個人の遊休資産や時間を他人のために活用し利益を得る。「シェアリングエコノミー」と呼ばれる新たな経済活動が、世界規模で猛威を振るっている。その2大巨頭、自家用車の相乗りサービスを手掛ける米Uber(ウーバー)と、自宅の時間貸しサービスを担う米Airbnb(エアビーアンドビー)の爆進が止まらない。岩盤規制で両者を阻む日本にもいずれ、この潮流は押し寄せる。その最前線をリポートする。

中国・成都で業務用洗濯機の営業職を務める黄永洋さんは、古びたタクシーを横目に毎月、数十人の客を自家用車で運んでいる (写真:町川秀人)

 中国・上海から飛行機で3時間半。人口が1400万人に膨れ上がった西部最大の都市、成都。業務用洗濯機の販売会社で営業のマネジャーを務める黄永洋さん(41歳)の生活は2015年4月以降、一変した。ドライバーの副業を始めたからだ。世界を席巻する「Uber(ウーバー)」のドライバーである。

 ウーバーは「タクシー配車アプリ」と称されることも多いが、語弊がある。日本を含む各国で既存のタクシー・ハイヤーの配車も手掛けるが、世界規模で見れば、生み出す膨大な収益のほとんどは、黄さんのような一般ドライバーと自家用車によるものだ。自家用車に相乗りする、という概念から「ライドシェア(相乗り)」サービスと呼ばれる。ウーバーはその新市場を開拓した世界最大手だ。

 黄さんが終業後や空き時間にドライバーとなるのは週50〜60時間。本業の月収は6000〜7000元(約12万〜14万円)だが、その6割に当たる4000元(約8万円)ほどの副収入をウーバーから得ている。副業におとがめはない。

 「成都の人間は昔からスローライフ。茶を飲んだり、麻雀をしたりして暇な時間を潰していた。でもウーバーのドライバーを始めてから、だらだらと過ごすことはなくなった。お金も入るし、生活が良くなったと感じている」
 客はスマートフォンスマホ)のアプリで車を呼び、目的地を入力するかドライバーに直接伝える。1組で車を独占することもできるが、同じ方向に向かう他人が途中で乗り込む安いメニューもある。成都では全乗車の約半数が、この複数組の相乗りという。
 料金は地域によって異なるが、1組で使うとタクシーに比べ3〜4割安、相乗りだと6〜8割安が目安。決済は、利用者があらかじめ登録しているクレジットカードから自動的に引き落とされ、現金の授受は発生しない。
 12月の取材日、黄さんにスマホのドライバーアプリを営業状態にしてもらうと、数分で付近の大学から配車要請が舞い込んだ。呼んだのは大学3年の劉宇軒さん(21歳)。市街地のキャンパスから車で30分ほどの場所にある別のキャンパスへ行き、友達と食事をするという。タクシーで50元ほどかかる距離を20元ほどの料金で移動した。「ウーバーは週に1〜2回は使うけど、タクシーは高いからほとんど使わない」
 今、黄さんのようなドライバーと、劉さんのような客が世界中で日々、爆発的な勢いで増えている。


Uber(ウーバー)の使い方
 客側は、スマホのアプリをダウンロードし、クレジットカードを登録すればすぐに利用できる。車を呼びたい場所をアプリ内の地図上で示すと、リクエストがかかり、数分以内に車が到着する。料金は、地域やメニューによるが、タクシーに比べて3〜8割安い。クレジットカードで自動決済され、領収書や走行履歴をいつでも確認できる。
 一方、ドライバー側は、自家用車とスマホを持ち、身元チェックをクリアすれば、原則、誰でもドライバーになれる。一旦、登録されると、好きな時間に「営業」できる。近場で配車要請した客と自動的にマッチングされ、ドライバー向けアプリに通知され、15秒以内に受ければ、配車が確定。迎えに行く場所や行き先もアプリに示される。


■世界で月間1億回以上の乗車
 ウーバーを手掛ける米ウーバーテクノロジーズの設立は2009年。以来、わずか6年で営業エリアは世界67カ国、360都市以上に広がった。同社が開示した最新の情報によると、月に4回以上、営業するドライバーは世界で110万人以上。彼らが客を運んだ回数は月1億回を超える。「旅客を担う組織」として考えれば、世界最大手と言える。


 金融市場の評価もうなぎ登りだ。上場前に史上最も高い評価額を付けたベンチャーとしてもてはやされており、米紙によるとこれまでの調達額は100億ドル(約1.2兆円)超、企業価値は推定646億ドル(約7.9兆円)に達する。
 ただ、こうした数字はあまり意味をなさない。成長期にあった米ツイッターフェイスブックなどと同様、数カ月もたてばすぐに陳腐化してしまうからだ。
 爆発的という言葉では足りないほどの勢いで今も成長を続けており、その勢いがしぼむ気配もない。そして、あまり知られていないが、その爆心地は既に欧米から中国に移り始めた。
 深刻な渋滞と大気汚染問題に直面しながら、中国のライドシェア市場はまさに倍々ゲームで拡大の一途をたどっている。ウーバーが2014年に乗り込む以前から、ライドシェアサービスは存在した。市場を独占していたのがタクシー配車アプリを手掛けていた地場企業の大手2社。2015年2月、その2社が合併し、滴滴快的という巨大企業が誕生した。
 そこへ、ウーバーが乗り込んだことで、市場がさらに活性化している。
 ウーバーの中国市場への熱の入れ方は半端ではない。米ウーバー創業者のトラビス・カラニックCEO(最高経営責任者)はめったに人前に出てこず、コメントも出さないことで知られる。その彼が2015年9月、中国・北京で開かれたイベントに登場し、こうぶち上げた。
 「我々が中国に参入した時に数%だった市場シェアはたった9カ月で30〜35%に増えた。我々は中国市場だけに12億ドル(約1500億円)を投じ、来年までに100都市で展開する。中国は、間違いなく米国を超える世界最大のライドシェア市場となるだろう」
 事実、ウーバーは80都市以上でライドシェアを手掛ける滴滴快的を猛烈に追い上げ、既に21都市でサービスを展開。全世界のウーバーの乗降数に占める中国の割合は3割を超えたという。21都市だけで1日に約100万回の乗車がある計算になる。
 中でも成都は最も成長が早い。サービス開始から1年の2015年10月には登録ドライバー数が成都だけで77万人、アプリのユーザー数が350万人を超えた。
 この成都で、ウーバーにとって大きな意味を持つ画期的な取り組みが始まった。それは、「交通革命」と呼ぶにふさわしい、壮大な社会実験の始まりとも言えるものだ。
■目的地を決めるのはドライバー
 2015年9月、成都のウーバードライバー向けのアプリに「uberCOMMUTE(ウーバーコミュート)」というメニューが加わった。ウーバーは世界に先駆けてこのサービスを成都から始めた。


 ウーバーコミュートを理解するのは少々難しい。簡単に言えば、ドライバーが朝夕の通勤時に、同じ方面に移動したい他人も乗せる、というもの。客側ではなく、ドライバー向けの新メニューとなる。
 「通常、ウーバードライバーは顧客が行きたいところに行く。しかしコミュートでは、ドライバーが行きたい方面にしか行かない。それが最大の違いだ。成都から始めたのは、ウーバーの利用が最も活発な都市の一つであり、成都市の政府もオープンで前向きにサポートしてくれるから」
 2015年9月からウーバー成都ゼネラルマネジャーを務める“タイガー”こと方寅氏(29歳)はこう話す。方氏は、マレーシア、タイ、インドネシア、そして重慶や南京など中国4都市のウーバー現地法人を立ち上げてきた辣腕。中国市場開拓のカギを握る人物だ。
 想定されるウーバーコミュートの主な利用シーンは朝夕の通勤時だが、実際は、時間帯・行き先ともに、ドライバーが好きに設定できる。つまり、ドライバーがコミュート状態にあると、たまたまその瞬間、ドライバーの周辺に、ドライバーが決めた行き先と同じ方面に行きたい客がいた時のみ、配車の要請が入るという仕組みだ。
 客側からすると、ドライバーがコミュート状態であろうと、通常の営業状態であろうと関係ない。2組以上が相乗りするメニュー、中国では「People’s Uber+」と呼ばれるメニューを選択し、行き先を指定した時のみコミュート状態のドライバーに遭遇する可能性がある。が、たとえコミュート状態のドライバーであっても、料金もドライバーに入る収入も通常のドライバーと変わりはない。
 このサービスのどこが革新的なのか。実例で説明しよう。
 冒頭に登場した黄さんは1日のほとんどを客先への営業回りに費やしており、以前だとこの時間帯はウーバーの営業ができなかった。だが、コミュートが始まると、営業回りをしながら、ウーバーで稼ぐことが可能となったのだ。
 黄さんの自宅は会社から徒歩圏にある。取引先から会社に戻る時、あるいは自宅に直帰する時、急いでいなければ必ずコミュート状態とし、客を乗せている。今では4000元(約8万円)ほどのウーバー収入のうち、4分の1がコミュート状態での稼ぎ。コミュートだと、客を拾う確率が下がることに加え、安いプランに限定されるため、通常の営業状態に比べ時間当たりの稼ぎは低くなる。それでも、黄さんはコミュートを気に入っている。
 「コミュートはお金目的ではない。自宅近辺の客に出会えるので友人を作ることができるし、営業時のガソリン代も節約できて、環境にもいい」
■空白を活用、市場や富を生む
 成都に次いで2015年10月には上海、12月には北京や米シカゴでもコミュートが導入され、2016年は世界に拡大していくという。ウーバー成都の方氏は言う。
 「人は車を持っていれば、必ずどこかに行く。そのどこかにその時間、行きたいと思っている人も必ずいる。我々は、世界中で運転する全ての人がコミュートドライバーになることを夢見ている。それが、都市や環境のために達成したい我々のビジョンであり、ゴールでもある」
 アジアのウーバー拠点を次々と立ち上げ、中国でも最重要市場である成都を任された方氏の発言は重い。
 ある地点へ向かう空車と、同一時間帯・同一方向へ向かいたい客をマッチングするコミュートは、無駄な移動を作らないという点で、タクシーとは決定的に異なる。つまり、ウーバーの真の狙いはタクシーの代替手段を作ることではない。
 地球上で移動している全ての車の空席と目的地を把握することで、自動車交通システム全体の劇的な最適化を図る──。これこそがウーバーがやろうとしている革命の本質だ。タクシーのように見える今は仮の姿であり、革命への通過点にすぎない。
 しかも、革命の対象は人間の移動に限らない。米国では、ウーバーの空車を使ってランチや事務用品などを届ける新手の配送サービスを次々と打ち出し、実験している。
 眠っていた“空白”を活用し、エコな社会を実現する。結果として、新たな市場や富も生まれる。これが、シェアリングエコノミーという、新たな経済活動の真の姿と言える。
日経ビジネス 2015年12月21日号記事を再構成]<<0