藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

まずは四十肩から。

五十肩、というといかにも中年の症状のようだが、周囲に聞いてみるとほとんどの人が経験している。
多くは四十代の人だから割合広い意味で普及しているようである。
自分も十年ほど前突然「水平線以上」に腕が上がらなくなって驚いたものだが、整形外科の医師に聞くとすべては「肉体の声」だという。

関節も内臓も、いろんな部位が少しづつメンテナンスを必要としてくるけれど、車のように細かく気遣っているとそれなりに長持ちする。
毎日使いながら定点観測していく感覚が長寿の秘訣なのではないだろうか。

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ある日突然腕が上がらない…五十肩を防ぐ3つの簡単ストレッチ

“動きにくい肩”は将来の全身の運動不調を示すサインだった

2016/3/24 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

医療機器メーカー総務課勤務、人から「若く見えるね」と言われるのがうれしい44歳。パソコン作業に偏りがちな日常生活がたたったのか、最近どうも肩の動きがぎこちなくなってきた。週明けの通勤電車では利き手でつり革が持ちにくい。社内ではずっと隠していたが、部内の若手の送別会で、万歳三唱の際に腕を上げるのに難儀しているのを見た部下が「あれ課長、五十肩っすか」とちゃかす。すかさず部長が「おいおい、まだ四十肩ぐらいにしてやれよ」というと部内は大爆笑。笑顔でごまかしたものの、くっ、悔しい。若さが売りのオレなのに…。早くこの痛みを治した〜い。

(イラスト:川崎タカオ
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 中高年になると「腕を動かすと肩に痛みを感じる」「腕の動きが制限されて、腕を上げたり、服を着替えたりという動作がしにくくなる」といった症状が出ることがある。江戸時代には「五十肩」という名前で呼ばれるようになるが、「そこまで長生きしておめでとう」という意味もあったらしい。

 しかし、近年、症状を訴える人の若年化が進み、昭和になると四十肩という言葉が登場。そのうち三十肩と呼ばれる日も来るのか…。

 仲野整體東京青山の仲野孝明院長は「肩のトラブル若年化の主な原因は、パソコン作業などデスクワーク時の姿勢の悪化と運動不足がある」と話す。ただ、たかが肩と侮ってはいけない。肩の動きの不調は、腰や脚の動きにも悪い影響を与え、将来、いわゆるロコモティブシンドローム(運動器症候群)を引き起こすことにもつながりかねないという(関連記事「40代以上が危ない! 8割が20年後に要介護!?【中野ジェームズ修一】」)を参照。

 仲野院長は「五十肩はもちろん、ちょっとした肩の不調にも気を配り、生活から改善することが大切だ」と話す。

肩の動きをチェックしてみよう

 五十肩とは医学的にはどういう病気なのか。肩の動きに関係する主な骨は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つ。これらの骨には大小さまざまな筋肉がついているが、そのうちインナーマッスルと呼ばれる深層部にある筋肉や腱にキズがついたり、ときに石灰が沈着して起こるのが五十肩だ。症状が重く、エコー(超音波画像診断)やMRI(核磁気共鳴画像法)などで診断された場合は、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱炎などと診断されるが、一般的には四十肩、五十肩などと俗称で呼ばれる。

 五十肩の原因について仲野院長は「運動不足などで肩関節の可動範囲が狭くなると、ちょっとした動きで筋肉や腱に負担がかかることがある」と話す。肩の老化と言っていいかもしれない。以下の方法で、ちょっと自分の肩の可動範囲をチェックしてみよう。

(1)腕を真上に上げる動作
 まず両腕を前から真上に上げる。「気を付け」の姿勢を起点として、ゆっくり腕を上げて耳の横まで180度上げられれば合格。痛みは感じなくても、少しずつ可動範囲が狭くなり「つり革」につかまりにくくなっている人もいるからご用心。

(2)腕を横に上げる動作1
 「気を付け」の姿勢から、手のひらを前に向けて、両腕を横から耳の横まで上げる(腕が横を向いた時に親指が上)。肘を伸ばしたまま、自然に腕が耳までつけば合格。

(3)腕を横に上げる動作2
 (2)と同じ動作を、手のひらを後ろに向けて行う(腕が横を向いた時に親指が下)。ちょっとやりにくいはずだ。可動範囲が狭くなったり、肘が曲がったりしてしまうときは、肩の老化が始まっているサインだ。


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肩の骨を意識しながら腕を振って歩く

背伸びストレッチ

鎖骨から大きく動かすような気持ちで腕を伸ばすと、肩の筋肉を大きく使うことができる。
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 肩の動作チェックで可動範囲が狭くなり始めていたら、若々しい肩を取り戻すための生活改善を行おう。といっても難しいことを始めるわけではない。仲野さんは「まずは背伸びをするように背筋を伸ばした姿勢で、肩の骨を意識しながら腕を振って歩くこと」だという。

 普段のパソコン作業などで丸まりがちな背筋を伸ばすことで、腕をきちんと振りながら歩けるようになる。肘はまっすぐ後ろに下げることが重要だが、このとき肩甲骨をしっかり動かすことを意識することが大切だ。手提げカバンは腕を振りにくいので、通勤時などはリュックタイプのビジネスバッグを利用してもいいだろう。

 屋内では、ときどき背伸びをしたり、腕を伸ばしたりする運動を行うとよい。鎖骨から大きく動かすような気持ちで行うと、肩の筋肉を大きく使うことができる。

仕事の合間にできる肩の運動

 仕事中の生活改善としては、可能な限りパソコンの使用環境を改善することが大切だ。モニターの位置が低いと、猫背の姿勢になり肩にも負担がかかるので、台などを置いて目の高さに配置するといい。またキーボードの高さも、できるだけ低くし、ひじが直角になっていると肩への負担が軽くすむ。そして、休憩できるときには、以下のような肩のストレッチをしてみよう。

(1)バルーンストレッチ
 立ったまま、背筋を伸ばして、軽くあごを引く。両手は両脇に下げた状態で、手のひらを外側に向けながら、下図のように肩甲骨を寄せる。めいっぱい息を吸って、3〜8秒キープ。しっかり胸を開いて、上半身を伸ばす。

バルーンストレッチ

親指を後ろ側に向けた状態で真っ直ぐに伸ばした両腕を、肩甲骨を寄せながら後ろへ回す。
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(2)肩ねじり
 両腕を横に水平に伸ばして、右の手のひらを上、左の手のひらを下に向けた状態に腕をねじる。次に手のひらの向きを左右逆にした状態にねじる。肩甲骨から腕をねじるイメージだ。


片方の手のひらを上に向け、もう片方は下に向ける。それぞれ逆になるように腕を回し、リズミカルに1分ほど繰り返す。
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“動きにくい肩”は将来の全身の運動不調を示すサインだった

2016/3/24 荒川直樹=科学ライター

肩トラブルは全身のケアを見直すチャンス

 では五十肩を発症してしまったときにはどうしたらいいのか。痛みが非常に強いときは、やはり医師、薬剤師などに相談し、消炎鎮痛剤などを処方してもらい経過を見ることが大切だ。症状によっては画像診断が必要な場合もあるだろう。

 しかし、同様に大切なのは「強い痛みはないが、肩が気になってしょうがない」「肩を上げにくいといった」症状のときだ。病院に行くほどのことではないからと、放置されてしまいがちだが、それは冒頭で説明したような運動器の老化スパイラルの第一歩につながりかねない。「快適な自分」を取り戻すよう努力してほしい。

 仲野院長は、「肩の不調がある場合、まずは肩を冷やさないようにしながら、正しい姿勢を意識して肩を動かすのがよい」という。冬であれば、下着の上から貼るタイプのカイロを当て、夏はエアコンで冷えないよう肩をしっかり包む下着を着用することなどが勧められる。

 そして、いろいろな運動、ストレッチを試すことも大切だ。書籍やWebページを閲覧すれば、さまざまな肩の体操、ストレッチが掲載されている。また、人づてにトレーナーや治療家を紹介してもらうなどして、自分に合ったアドバイスをしてくれる人を探すのもよいだろう。

 仲野院長は「気になったら何かやってみる。それが、いくつになっても快適に動ける自分になるコツです」とアドバイスする。

仲野孝明(なかの たかあき)さん
仲野整體東京青山 院長、姿勢治療家
仲野孝明(なかの たかあき)さん 1973年三重県生まれ。大正15年に創業し、二度の藍綬褒章を受章した仲野整體の4代目に生まれ、自身もこれまで15万人以上の患者を治療する。柔道整復師認定スポーツトレーナー。介護予防運動指導員。姿勢関連の著書に、『9割の体調不良は姿勢でよくなる』(KADOKAWA/中経出版)、『長く健康でいたければ、「背伸び」をしなさい』(サンマーク出版)がある。ホームページはこちら 。
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