藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自然の法則。

結婚について、結局どんどん制約を増やすことが「引き」を促しているような気がする。
自由に恋愛ありき、という雰囲気に戻さなければ、一層窮屈になるのではないだろうか。
「負け犬ブーム」「婚活ブーム」と言うけれど。

「手に入れた自由はもう二度と手放せない。しかし、自由を使いこなすには覚悟がいる。「結婚」を強制されないことは、誇り高く「結婚を選ばない」という意味でもあるのですね。

結局は冷静に自分の選択を考えていく、と言うことに違いない。
他人とか世間の価値観にどれだけ振り回されないか、ということは割合大きな「自分らしさ」なのだと思う。
結婚とか恋愛とかに限らず、仕事とか趣味とか。

「恋愛結婚」という自由を手にした中国の女子たちについて
2016年04月14日

 友人が、化粧品会社が手がけた中国版のCMをFacebookでシェアしていたのですが、それを見て、胸がいっぱいになりました。なぜなら、日本の女性たちもかつて通った道だったから。

 ※コマーシャルはこちらから見られます。

「私は売れ残り」

 中国の急速な近代化は、高層ビルの林立だけではありません。女性たちの意識も変わっています。おしゃれになり、メイクを楽しみ、仕事で得たお給料で好きなものを買い、自由に生きる――。しかし、彼女たちにも悩みがある。結婚です。

 CMに登場する女性たちは言います。「売れ残り」「高望みなのよ」「わたしは売れ残り。25歳で結婚していない女性です」

 彼女たちの親が自ら婚活にいそしむ様子も描かれていました。公園は娘、息子の写真や履歴書を持ち寄る親の“婚活マーケット”となっているようです。その人数たるや、さすがに人口が多い中国だけあって、すごい迫力。

 美しく、頭のいい、何一つ非の打ちどころのない、自分たちの大事な大事な娘……なのに結婚だけができない。そして親が悩み、懇願するほど、その願いは娘たちを泣かせます。「私は親不孝なのだろうか?」「でも本当に好きな人と結婚したい」「いつかはあきらめなきゃいけないの?」

 でも、ある日、親たちが公園に行ってみると、娘たちの美しいポートレートとメッセージが並んでいました。「結婚しなくてもわたしは幸せになれるし、自信をもって生きていく」「売れ残りじゃない。パワーウーマンよ」「本当にいい人が見つかるまで待って」「独立して人生を楽しんでいる」

 親たちは娘のメッセージにハッとします。「本人が望むなら」「うちの娘はきれいよ」と、笑顔で娘を抱きしめながら話すシーンも印象的でした。そして化粧品会社からのメッセージ――「周りの重圧に支配されない人生を」。

日本の婚活女子たちは、迷い続けている

 いや、こんな時代があったね。日本にも。甘酸っぱい気持ちで思い出しました。まさにバブルから90年代後半でしょうか? 「イブを過ぎたクリスマスケーキ」とか言われながらも、女性たちは人生を楽しんでいた。

 1988年にマガジンハウスから「Hanako」が創刊されました。読者像は「平均年齢は27歳女性。年2回は海外旅行へ行き、ブランド物を思い切って買う。東京近郊の大学を出て、一流会社に勤めて3〜5年以上、今すぐ会社を辞めても、海外で3か月は暮らせる資金あり。キャリアと結婚だけではイヤ」。

 いやいや、こういう強気な時代もあったのですよ。女性たちは結婚についても強気でした。「わたしを変えない結婚あります」みたいな見出しの特集記事もありましたから。

 そして2003年「負け犬ブーム」、2008年「婚活ブーム」と、時代は移っていくのです。

 手に入れた自由はもう二度と手放せない。しかし、自由を使いこなすには覚悟がいる。「結婚」を強制されないことは、誇り高く「結婚を選ばない」という意味でもあるのですね。

 そして2016年。小町を見ると「婚活」の悩みは尽きません。例えば「婚活、難ありでしょうか」というトピ。「仕事の関係で外に出ていましたが、近々日本に戻りますので婚活をはじめようと思います。友人に散々縁遠い条件だといわれたので、ここの皆様にもご意見を頂きたく」

 トピ主さまは女28歳、外資系総合職で年収は620万円(昇給あり)。貯金は1億8000万円+土地少々(死別による相続分含む)。身長172センチとのこと。

 28歳の3高女性(高収入、高身長、高学歴、外資系、海外勤務有り)! 男だったら大モテですよね。趣味のプロレスについても、「男性には受けが悪い」と友人に言われたとか。日本では「自分らしくいると結婚できない」と悩んでしまうのですね。

 「婚活について」というトピでは、「もうすぐ30歳」というトピ主さまが、こう問いかけています。「少しまえから婚活をして結婚相談所で知り合った方がいるのですが、付き合い始めて本当に私は結婚するのだろうか?と考えると結婚したくないなぁと感じはじめてしまいました。お相手の方が嫌いという訳ではなく結婚もしたい思いもあるのですが、何だかモヤモヤしています。お互い何だか遠慮して付き合っているように感じて…」

 この方に対しては、「お見合いが向いていない」「相手が好きじゃないだけ」などなど、先輩女性たちから「自分もそうだった」という書き込みが寄せられていました。「まだ若いのだから、もっと踏み込んで付き合って、ダメなら次にいけ」というアドバイスが多いようです。

日本とフランスの恋愛・結婚を比べてみる

 一方、恋愛相談サイトを主宰する「ぐっどうぃる博士」は、ときどき小町を検索すると「好きじゃない人と結婚した人が幸せになっている」と指摘しています。

 いったい何が正解なのか? この「迷い」も「喜び」も「苦しみ」も、私たちが手に入れた自由の正体なのだと思います。

 「結婚できない」と多くの人が嘆いている。でもそれは日々「嫌な人とは結婚しなくてもいい」という自由を選び続けていることなのです。97%が結婚していた団塊世代では、日本女性の誰かが「DV男」や「だめんず」と結婚していたのですから、そういう人たちと結婚しなくていい自由はあるはずです。男性だって同じですね。結婚したくない女性とは結婚しなくていいのです。

 冒頭に紹介した中国のCMで、親たちは嘆いています。「私たちのころは簡単だった。お見合いをすれば決まったから」――中国の女性たちは初めての「恋愛結婚第一世代」となるのでしょう。

 その後、どんなことが起きるのかといえば、今の日本を見てください。お見合い結婚世代の子どもたちは、親たちがあまり幸せそうでないのを見て恋愛結婚しようと思った。そして、恋愛結婚した親たちもあまり幸せそうでないのを見て、次の世代は「結婚や恋愛にいまひとつ乗り気になれない」。『「婚活」時代』を共著した山田昌弘先生がそう話されるのを聞いて、なるほどと思いました。

 一方フランスは、お見合い結婚世代の親が離婚するのに苦労しているのを見て、子どもたちは結婚しなくなった。出生率もガクッと下がりました。

 政府は慌てて制度を変え、法律的に結婚しなくても、家族になって子どもを持つ人たちに不都合なことがないようにしました。子どもができると、結婚していなくても「家族手帳」がもらえます。その後、LGBTの人のために「PACSパックス」と呼ばれる制度ができて、異性愛の人も「これは便利」とパックスの制度を利用するようになった。結婚にともなう義務がなく、でも税金などは有利になる、“良いとこどり”です。

 今やパックスや同棲どうせいカップルから生まれる子ども、いわゆる「婚外子」は5割以上ですが、小さな子どもはほどんどが両親と暮らしています。フランスはくっついたり別れたりしながら、「出生率2.0以上」という社会になったのです。

 さて中国女子たちは、いったいどこに向かうのか? 少なくとも、一度手にした「自由」は、もうパンドラの箱に押し戻すことはできません。自由を謳歌おうかし始めた彼女たちに、前を向いて進んでほしいと願わずにはいられません。

2016年04月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
プロフィル

白河桃子 (しらかわ・とうこ)
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。婚活ブームを起こした「婚活時代」(山田昌弘共著)は19万部のヒットとなり、流行語大賞に2年連続ノミネート。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「専業主夫になりたい男たち」(ポプラ新書)。公式ブログ:http://ameblo.jp/touko-shirakawa ツイッター:@shirakawatouko
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