藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

国民気質。


ようやく先進国、というかいろんな意味で成熟社会を迎えて、取り立てて「爆買い」とか「土地買い」とかについて騒いでいるのは、「成熟への過程」ということなのかもしれない。

中国と言わず、東南アジア全域。
欧米といえども「食べ物が日本以上に美味しい」という経験は少ない。

日本の駅弁とか地方の食堂なんかも数十年前はそれほど美味しくはなかった。
クオリティがえらく上がってきたのはここ数年ではないだろうか。
今や駅の売店も、デパ地下の売り場も高級店に並ぶ品揃えになったのは驚きだ。

思うに、欧米でも国内の航空便で食事をする人は少ない。
何かを食べる人も、持参したサンドウィッチとか、スナック菓子とかをボソボソと食べているくらいだ。
日本の新幹線のように、四、五人で乗り合わせていざ大宴会、というのはちょっと変わった文化に見える。
それはそれで楽しいけれど。

ともかく、美味しいものは「どこででも」「いつでも」「安く」を追求するスタイルはまだこれからも続きそうだ。
繁華街の居酒屋でも「さらに安く、おいしく」という試みは自然に起きている。
ひょっとしたら、自然とした"こういう気質"こそが日本人の強みなのではないだろうか。
だって誰にも強制されていないもの。

中国 駅弁に見る参入規制

 中国の駅弁はなぜまずいのか――。最近、中国のネット上で盛り上がっている話題だ。ネットユーザーらが車内販売の日本と中国の弁当を写真付きで比較し、中国の弁当の貧弱さを嘆く。この問題を突き詰めると、中国の経済成長を阻む問題が浮かび上がる。

駅弁を買わずにカップ麺などで済ませる人も多い=ロイター

 日本の新幹線の弁当は一千円前後するが、中国のネットをのぞくと、中国の高速鉄道の弁当も40元(約630円)前後はする。現地の所得水準を考えるとけっして安くはない。ただ、日本の弁当には様々なおかずが並ぶが、中国はおかずが3品程度しかなく、割高な印象を受ける。15元程度の安い弁当には「まずい」という声があふれる。

 この結果、長距離移動の乗客は5元前後のカップラーメンを持参し、お湯を注いで列車内で食べることになる。ネット上では中国の駅弁がまずい理由を巡りさまざまな議論があるが、誰もが「競争の不足」を指摘する。

 中国は「中国鉄路総公司」が路線を管理し、関連業者が車内販売で優先的に取り扱われているようだ。事実上の参入規制や既得権の保護があるのかもしれない。新たな企業が参入し販売を競えば、価格は下がり、質も向上するはずだ。

 消費が中国の成長をけん引すべきだといわれて久しい。だが、個人消費は盛り上がりに欠け、成長率は6%台後半にとどまる。消費者はお金はあるのになぜ使わないのか。答えは簡単だ。代金に見合う商品の質やサービスがないと感じているからだ。ネット上の駅弁への不満は、消費者が安くて質のよい駅弁を買いたがっている証拠だ。潜在需要はあるのに、供給側が対応できていない。

 「爆買い」も同じだ。中国では高い関税や間接税があるため、外国製の高級ブランド商品の価格が高い。外国で買った方が断然安いので、海外旅行中にすさまじい買い物をする。本国で買い物をさせたいなら減税や規制緩和で外国製品の価格を下げればよい。

 中国の富裕層の間で、医療ツーリズムが流行している。サービスの悪い中国の病院を嫌い、日本や東南アジアで観光のかたわら健康診断を受けるようになった。手術や治療で外国に通う人々もいる。中国は医療機関規制緩和を進めて、サービス向上に向けた競争を促すべきだ。

 豊かになった消費者の需要に見合う産業を育成すれば経済成長は続くはずだが、いざ規制緩和となると既得権者の保護に傾く。中国は4月から海外の買い物が一定額を超えた場合、空港での課税を強化した。これでは「爆買い」抑制に効果があっても、中国内の消費拡大にはつながらない。

 病院に外資を導入する政策も発表したが、中国で開業した外資系100%の病院はわずかだ。関連法規の複雑さが外資病院の進出を拒んでいるとみられる。既得権でがんじがらめのため、供給側の改革は進まず、消費も動かない。

 もっとも、中国の構造改革は進まない方が日本にはありがたいのかもしれない。豊かになった中国の消費者が日本で新幹線に乗って駅弁を食べて、割安の日本製品を買う。サービス抜群の病院で検査や治療を受ける――。中国で使うはずのお金をそっくりそのまま日本で使うのだから。

編集委員 村山宏)

「Nikkei Asian Review」(http://asia.nikkei.com/)に「Unpopular train food in China illustrates obstacles to growth」と題して掲載