藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分にもできること。

大隈教授のノーベル賞評を聞いていると、その中心は基礎研究の大切さだ。

これってビジネス界の「投資とリターンの関係」に似ているなぁ、とつくづく思った。

まずビジネスの世界だと「世間に受けるかどうか(売れるかどうか)はともかく、ともかく自分は"これ"をする」という場面は少ない。

そこに

「たとえ五年くらいでは成果は望めないかもしれないが」というのは技術系・開発系でしかもよほど恵まれた環境でないと程なく「打ち切り」となるのがご時勢というものだ。

企業だって、五年も赤字だと(よほど蓄えがない限りは)市場から退去させられる。
つまりはバランスか。

どんな会社でも、その何割かを必ず「基礎研究的なもの」に割り当てること。
ことにそれを中小企業が実践することって大事なのではないだろうか。

「基礎研究」とか「社会奉仕」とかさらには「人材育成」とかに手が回らないのが中小企業である。
むしろ大企業よりも、中小の自分たちが「そういう体質」を持てれば大きく社会の構造が変わってくるのじゃないだろうか。
日本のの9割以上が中小企業なのだから。

基礎研究とか開発は「大企業とか個人だけが手がけるもの」という固定観念こそ、中小企業が打ち払わねばならない思い込みかもしれない。
少しずつ、やってみよう。

基礎研究 長期的視点で
2016/10/4付
 細胞内のたんぱく質を分解する現象「オートファジー」を追い続けている大隅良典・東京工業大学栄誉教授に、2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった。最近になって生命現象の重要な役割を担っていることが分かり注目を集めているが、大隅栄誉教授がこの研究を始めたのは1988年。改めて長期的な視点で研究に挑む重要性が浮き彫りになった。

 大隅栄誉教授は28年前に東京大学教養学部に小さな研究室を立ち上げた。細胞内にある小さな器官がどのように分解されていくのか、その仕組みを解明しようと研究に着手した。「競争の激しい分野で研究することが苦手。人のやらないことを手掛けたい」という思いがあり、黙々と酵母細胞の観察を続けた。

 飢餓状態にした細胞でオートファジー現象が起きる様子を初めて観察した瞬間を振り返るときも、成果を淡々と解説する。九州男児という意識もあるのか、喜怒哀楽を表情にあまり出さないが、基礎研究者としての自負を強く持つ。粘り強い研究姿勢に共感する研究者は多く、東京大学の水島昇教授ら優れた若手研究者を育てた。

 大隅栄誉教授が研究者の心得として学生らによく問いかける話がある。「もし無人島で1人で住んでいたら、このような研究をするだろうか」。基礎研究に打ち込めるのも社会あってのことだと唱えるとともに、短期的な視野に陥らないようにしなければいけないと付け加えている。

 近年の日本は経済成長や産業競争力を目標に、科学技術をその推進役にしようと躍起だ。重点投資を看板にする政府プロジェクトはあるが、約5年で成果を出すように求められる。それで実現する成果は予想された範囲にとどまり、社会へのインパクトは新しい発想から生まれた非連続な研究に及ばない。

 オートファジー研究から実用的な成果はまだ出ていないが、その可能性を感じさせる研究開発が目白押しだ。大隅栄誉教授もその急速な展開には驚く。研究の土壌を地道に耕さないと、大きな実りを得られない。基礎研究を大切にする政策が必要だ。
編集委員 永田好生)