藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

既存vs革新は変わらず。

日経、若手経産官僚の記事。
政治や官僚の仕組みを知れば知るほど「これを根底からやり直すのは難しいだろう」という無力感に苛まれる。

国のビジョンを示す政治。
実現の具体策と戦略を示す官僚。
これがいかに肥大化しているか。

さらにはその肥大化体質が、日本の大企業にも広く侵襲している。
知れば知るほど「ちょっと手に負えないな」と思ってしまう。
けれどそんな閉塞感の中でも、動き出す異分子はいるらしい。

彼らが分厚い上層部の壁を突き破るのは並大抵ではないだろう。
明治維新よりも手強い相手かもしれない。
けれど、分厚い「既存の岩盤」があれば、それを打ち壊す勢力もまた醸成されてゆくのは時代の理だと思う。

さて、若い人たちへ。
自分がどちらの側に回るのか。
あえて戦列には加わらずにビジネスとか、科学とか、違う分野を目指すのか。

いつも時代の輪郭は見えないけれど、これからも乱世に突入するところなのかもしれない。
そんな風に見れば、ちょっと今の世界も面白い感じがしないだろうか。

若手官僚、旧弊打破へ一歩
 経済産業省の若手官僚が日本の問題点についてまとめた提言「不安な個人、立ちすくむ国家」が反響を呼んでいる。65ページにわたり、現役世代が高齢者を支える社会構造「シルバー民主主義」からの脱却や子どもや教育への投資を最優先課題にすべきだと訴えた。経産省によるとダウンロード数は140万件を突破。フェイスブックなどの交流サイト(SNS)でも話題になった提言に携わった官僚は、どんな人たちなのか。

 経産省の菅原郁郎前事務次官の呼びかけで、公募に応じた若手官僚およそ30人が昨年夏から勉強会を重ねて、5月にまとめた。日本は人々の価値観が変わっても、定年制や年金・介護制度などが長らく変わらないために変革が進まないなどと指摘した。

 ほかの省庁からは、通商や産業、エネルギー政策などを担う経産省の「本業」からの逸脱だと批判する声もある。しかしプロジェクトのリーダー格である須賀千鶴さん(37)は「経産省は何をやっても『おまえの仕事じゃない』とは言われない。世の中に本当に必要なことを率直に議論してみようとなった」と語る。

 須賀さんは米国で経営学修士号(MBA)を取得し、途上国支援や気候変動対策、クールジャパン政策に従事してきた。いまは商務・サービスグループで教育・シニア産業の育成などを担当する「若手の有望株」(幹部)だ。

 須賀さんと同じ部署で教育産業の転換に取り組むのが、日高圭悟さん(37)。報告書ではいい教育を目指し、民間サービスや最先端テクノロジーなどを活用するよう提言した。「現場の教員が疲弊している。IT(情報技術)導入や、部活のアウトソーシングを進め、公教育の自前主義を変えたい」と話す。

 「意欲と能力のある個人が『公』の担い手に」――。そんなフレーズとともに、村民が自ら村道や農道、水路を整備する長野県下條村の事例を紹介したのは、伊藤貴紀さん(26)だ。同村に出張し、実際に道路を造る住人を目の当たりにして驚いたが、地方財政が厳しいなか、こうした動きが打開策のヒントになると考える。

 民間による官の代替という議論には、普段は金融とITを融合するフィンテックの振興を手がける足立茉衣さん(30)も賛同した。中国でネット通販大手・アリババ集団(浙江省)の幹部に取材したときのこと。「先進的な企業は国家を超える」と痛感した。

 政府の国内総生産(GDP)至上主義に疑問を呈したのは、貿易振興課に勤めている石渡慧一さん(28)だ。指標では数字が独り歩きしがち。しかし1人当たりGDPが上昇しても「個人の生活満足度は世界的に伸び悩む」という矛盾を独自の分析で示し、人とのつながりや健康寿命を重んじる政策を訴えた。経産省の先輩官僚の一人は「若手官僚が、引用ではなくデータを駆使し、自分で根拠を示した。プロジェクトは教育の場にもなった」と話す。

 「霞が関文学」と皮肉られる従来の無味乾燥な行政文書とは一線を画し、あえて論争を呼ぶ。賛成ばかりではない。「国が価値観に踏み込むのか」「政治家の仕事ではないか」といった批判的な声も聞こえる。

 資源エネルギー庁放射性廃棄物の対策に取り組む宇野雄哉さん(31)は「分はわきまえないといけない」としつつ「官僚は今まで萎縮しすぎていた。国の制度は価値観との相互作用。避けては通れない」とはっきりと言う。

 各省庁の縦割りや前例踏襲といった悪弊がずっと指摘されてきた霞が関。若手官僚の自主性や実感に基づく変革の一歩は踏み出された。具体的に進めていけるかどうか。ここからが正念場だ。(辻隆史)