藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

性善説の検証。

*[ビジネス]ワークマンの秘密。
作業服チェーンのワークマンが好調だという。
さらに「ワークマンプラス」というカジュアル作業服のお店は機能とデザインが良くて女性に大好評らしい。
 
が成長の秘訣は決して目新しいものではない。
お得意様・地元密着型の出店計画(夫婦推奨とのこと)。
現場の意見の尊重。
エクセルでの売上データの共有。
製造元との売れ筋・在庫データ交換。 
なんだかこれだけ見ていると昭和の松下電器の経営訓のようではないか。
(製造元とのデータ交換は)ワークマンが持つ需要予測データを基に、納める商品の種類や数量を考えてもらうためだ。
そして同社は、メーカーが提示した数量を全て買い取る。
何か本当にそれっぽい。
メーカー側に悪意があれば、期末などに大量の商品を押しつけられるリスクがある。
だがワークマンは積極的に開示すればサプライチェーン全体で無駄を省け、むしろ味方を増やせると考える。
データを基に工場の稼働を調整すればメーカーは閑散期に大量生産でき、ワークマンはその分、安く商品を仕入れられる。
今後は海外メーカーへの開示も積極化する。
 
現代の、POS管理を徹底して、今後の需要予測をAIにさせるシステムとはかなり違うがとっても人間的だ。
できればこういう企業が成功例になってほしい。日本発。
そのうちワークマンにも優秀なAIロジックが導入されれば、それが最強なのではないだろうか。
 

破竹の勢いワークマン 秘密は「エクセル」

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ワークマンでは18年から新業態のワークマンプラスに注力する

8期連続で最高益更新

作業服チェーン最大手のワークマンは2019年3月期、8期連続で最高益を更新した。アウトドアに特化した新型店が好調の原動力とされるが、理由はもう一つある。徹底したデジタル化だ。高度な人工知能(AI)よりむしろ昔ながらの「エクセル」を駆使。上意下達ではなく、全社員がデータを基に議論するようになった。その強さは販売の最前線に見て取れる。
朝7時。ワークマン足立区役所前店(東京・足立)の開店と同時に、建設作業員が駆け込んできた。当日の作業で必要な商品は現場ごとに異なり、働く人によってサイズもバラバラだ。だが作業員は迷うことなく長靴や安全ベストなどの会計を済ませ、足早に現場に向かっていった。
同店では約100坪(約330平方メートル)の売り場に常時1700品目の商品を陳列する。「以前は発注だけで毎日2時間かかった」と中西千賀子店長は話す。だが17年に導入した自動発注システムを使えば、作業はレジのボタンを押すだけ。時間はわずか10秒になり、6月の同店の売上高は前年比約1割伸びた。
大手アパレルが苦戦する中で、ワークマンが好調だ。19年3月期の単独売上高は669億円と前の期比19%伸び、営業利益率は20%を超えた。
けん引役が昨年立ち上げた新型店「ワークマンプラス」だ。低価格でデザイン性の高いアウトドア衣料が話題となり、客層を女性や若者に拡大した。既存店売上高の改善がそれを下支えする。前期は14%も増え、競合を大きく上回る。

全社員に分析スキル

原動力は全社で進めたデジタル化。入社2年目から研修を徹底し、エクセルの「関数」は必須スキルだ。営業担当者はiPad片手に独自の分析ソフトを駆使し、地域ごとの売れ筋商品や販売ピーク月などをデータベースから導き出す。改革の効果が顕著に表れたのが、需要予測の高度化だ。
アパレルチェーンでは一般的に、何が売れるかを予測し、適正量を仕入れて売り切ることが収益を左右する。見込みを外すと過剰在庫を抱えて苦しむことになる。
ワークマンはこの予測作業を大幅にシステムに任せようとしている。店長がレジ端末の「一括発注」ボタンを押すだけで納品される仕組みを、17年から順次導入する。
作業服は一般的なアパレル商品とは異なり、少なくとも10年程度は売り続ける。ワークマンは品ぞろえの97%を全国で統一し、店舗レイアウトも標準化している。そのため、どの商品を店舗のどこに置けば、いつ売れるかといったデータが膨大に蓄積されている。
このデータや直近の売れ行きを基に、発注すべき商品の種類と量を算出。個別店舗の発注作業を自動化し、適正な在庫を保てるようになった。ワークマンは主に、フランチャイズチェーン(FC)方式で展開する。経験が少ない人が店長になっても、発注作業で戸惑わずに済む。システム未導入店の欠品率は平均7%程度だが、導入店は約4%に改善した。
「データ分析力」を部長への昇進条件とする、「ショック療法」(土屋哲雄専務)も15年に実施した。既存店改革のハードルは、自らの経験をもとに現場の提案を握りつぶしかねない管理職の存在だった。そうした事態を防ぐため、客観的なデータを使って議論するよう求めたのだ。
これがワークマンの社風を形作る。店頭での在庫重複や売れない商品を検出するプログラムは、基幹システムから抽出したデータを活用し、社員がエクセルを使って開発した。土屋専務は「高度なAIよりも、因果関係を理解できるシステムの方が使いやすい。社員全員で使いこなすことが重要だ」と話す。

取引先にデータを開示

7月に入り本格化した夏のセールは、アパレル業界が陥っている悪循環の象徴だ。アパレル企業の多くは収益性よりも売上高を重視し、売れ残ると分かっていながら縫製工場などに生産を発注する。過剰に仕入れた商品を売り切るには、値引きに頼らざるを得ない。
ワークマンがデータ活用を徹底するのは、こうした悪弊と一線を画す狙いもある。焦点は調達量の適正化だ。店頭在庫や倉庫の空き具合といったデータを取引先メーカー31社に開示する。ワークマンが持つ需要予測データを基に、納める商品の種類や数量を考えてもらうためだ。そして同社は、メーカーが提示した数量を全て買い取る。
メーカー側に悪意があれば、期末などに大量の商品を押しつけられるリスクがある。だがワークマンは積極的に開示すればサプライチェーン全体で無駄を省け、むしろ味方を増やせると考える。データを基に工場の稼働を調整すればメーカーは閑散期に大量生産でき、ワークマンはその分、安く商品を仕入れられる。今後は海外メーカーへの開示も積極化する。
取引先と協力し、必要な商品を必要な量だけ生産すれば、利益を削ってセールを実施しなくても済む。作業服という「ニッチ」で勝負しているため、一般的なアパレル企業と競争環境が異なるのも事実だ。だが供給過剰に悩む業界がワークマンから学べる点は多い。

急成長のひずみも

破竹の勢いを続けるワークマンだが、急成長ゆえの弊害も生じている。17年には群馬県に物流センターを新設したが、出店増で「容量は既に不足している」(土屋専務)。
需要予測システムも万能ではない。ワークマンプラスが想定以上に話題を呼んだことで、「人気商品に顧客が集中し、冬場にはかなりの欠品が出た」と小浜英之社長は話す。過剰在庫を気にするあまり、機会損失が生じている。
同社は3月、「生産管理グループ」を新設。生産量のほか、物流センターに入出庫する商品やその時期などの見直しを進めている。「売れる商品を売れるタイミングで店舗に入れるようにする」(小浜社長)方針だ。
ワークマンは25年までに1000店体制を目指し、手薄だったネット通販も強化する計画だ。既存の仕組みを改善するだけでなく、新たな価値を生み出せるかでデータ分析の真価が問われる。
(勝野杏美、前橋支局 木村祐太)