*[ウェブ進化論]変わらず遺すこと。
FTより死後のデジタル情報について。
これまでは故人の記録といえば日記や遺言くらいだったが、今の時代はデジタル上に跡が残る。
メールやLINEのやりとりや他のSNS。
さらに画像や動画、ブログや論文の類まで、「これまで」とは記録の量が桁違いだ。
それだけ「いなくなった人」をたどる伝(つて)があるのはいいことだがそれを「そのまま」にしておくのか、情報として「誰かが受け継いで管理する」のかはこれからの問題だ。
個人的には、自分の逝った後のことなど好きにしてくれ、と思うがしばしば「歴史は後から上書きされる」とも言われる。
「後から誰でもが好きにいじくるデジタル記録」はやはりまずそうだ。
かといって、遺言で誰かを指名して「データの管理」を任せるのもいかがなものか。
お金に関わるような財産についてはともかく、「知的財産」としてのデジタル情報については、ある意味「不可侵」なルールが必要なのではないだろうか。
古今東西、世界中の記録は後から「塗り替え」を免れなかった。
ブロックチェーン的に「改ざんを許さない個人の記録」がこれからの主流になるという予感がする。
千年後、二千年後でもまったく変わることのない先人の記録が残る時代がこれから始まる。
[FT]技術進歩、死後の個人情報管理が課題に
死後のデジタル上の個人情報や遺伝情報の取り扱いについて考えておいてほしい――。こうした声が研究者から上がっている。
技術の進歩で、死後の個人情報管理が課題になっている=ロイター
米シアトルで開催されたアメリカ科学振興協会(AAAS)の会合に参加した専門家は、テクノロジーが幅広い分野で使われるようになり、慎重な取り扱いが必要な個人情報を大量に残して亡くなる人が出てきていると指摘した。
■アクセス権は誰に?
ソーシャルメディア、アプリやウェブサイトを通じて大量の個人情報が蓄積され、またヒトの遺伝子や生体試料がバイオバンクに集められている。しかし専門家によると、利用者や提供者の死後これらのデータがどうなるのか、また誰にアクセス権があるのかに関する一貫した規則は存在しない。
「データやプライバシーの安全性について話すのは当たり前になったが、死後の個人情報の扱いについても話し合いを始めるべきだ。ただ死については誰も話したがらないので少し厄介だ」
米フェイスブックは利用者が亡くなった後も追悼アカウントとして残し、指名された人物がアカウントを管理できるサービスを提供している。米グーグルの利用者は、信頼できる人物に自分の死後アカウントの一部へのアクセス権を付与できる。しかしいずれの場合も生前の準備が必要で、手続きは各社で大きく異なる。
■多くは「なりすまし」
フサイン博士によると、故人のアカウントにアクセスし本人が生きているように見せるのは「よくある」ことで、多くの場合はなりすましで遺族の同意を得ていない。また特にアジアで頻繁に行われているという。
「偽物の私が永遠に生き続ける可能性がある。友人や家族は問題視するだろう。もし私のきょうだいが亡くなった後、誰かが彼のアカウントを使っていたら私たち家族は彼はもういないと伝える。しかしその人物は『自分は生きている』と返答するはずだ」
また米ワシントン大学医学部のステファニー・マリア・フラートン教授(生命倫理)は故人の遺伝情報の取り扱いも課題だと指摘する。数百万人が自分のDNAを研究所やバイオバンク、また遺伝子検査サービスの米23andMeなどの民間企業に提供している。
■「グローバルな合意不在」
「提供したDNAが検査後どうなるか考えることはめったにない。現状では提供者の死後の遺伝情報の取り扱いについて社会的、グローバルな合意は存在しない。法的にも非常にあいまいで遺伝情報保護のための法律や規制はほとんどない」
フラートン教授は、遺伝情報の提供者は病気診断など特定の目的のために自分の死後家族が情報へアクセスすることを認める権利を持つべきだと話したが、血縁関係を調べるといった目的でDNAデータを使われたくない人もいるだろうと話した。
「我々の研究過程の多くでより広範囲の同意が必要になり、結果として自分の遺伝情報に関する発言権はどんどん縮小している。そのわずかな権利さえ死後には事実上消滅する」
フラートン教授とフサイン博士は死後のデジタル・遺伝情報の取り扱いについて社会全体でオープンに話し合う必要があり、また個人も自分の情報をどうしたいか決めておくべきだと指摘した。
By Clive Cookson
(2020年2月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
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