藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

驕らぬこと

【松沢 哲郎:まつざわ てつろう】


京大霊長類研所長。
1950年生まれ、愛媛県出身。
世界が注目するチンパンジーの知性研究「アイ・プロジェクト」に三十年かかわる。
当初は哲学を専攻し、視覚心理学からネズミの脳の研究に入り、アイと出会う。

松沢は言う。
「先生の役割で一番重要なのは、その子が自分で勉強したい気持ちにさせること。
イヤなら入ってこなくてもいいし、(学習を始める)白い丸を押さない自由もある。
やりたいならやれるチャンスを与えているだけ。
そこで引き出される能力がある。」


至言。
相手がチンパンジーであれ、教育の要諦は変わらない、と最近思う。


またチンパンジーが短「期記憶では人間に勝る」ことを引き合いに、



チンパンジーができることを人間の大人ができないことのショックはなかなか受け入れがたい。


素朴な信念を壊してしまう。

人間は、人間がすべての中心にいると考える。
自己中心的にしか見ることができない。


人間と動物との関係、なんて無神経なことを平気で言っちゃう。
人間も動物の一種なのにね。


人間と自然との共生なんてのもおかしい。
人間は自然の一部ですよね。


人間と自然を対置してしまうところに環境問題の根があるわけで、自分も自然の一部だと考えればもう少し世界は違ってくるんですけどね。


三十八億年前に生命が誕生して、今日までずーっと命を繋いできたという意味では、現在命あるものは全部勝ち組である、上下や優劣はない。
たまたま犬、たまたまチンパンジー、たまたま人間、というだけなんです。


それがチンパンジー研究がもちらした最大のメッセージです。


JR東海 「ひととき」より>


一つの研究に打ち込む科学者のひた向き。
また彼が説く、その「全自然体感」ともいうべき、全体思想。


ひたすら、チンパンジーと向き合い、
ひたすら考え続けた松沢氏の、非情に新鮮な「自然感」を行間に読む。


あらゆる哲学にも通づるような。
爽やかな。


松沢氏は将来は、このチンパンジー園に同化してしまうかもしれぬ、と結んである。


さもありなん、と思う。


ひた向き、はいつも美しい。
そんなものに感動する最近の自分があるな、などとも思う。