藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

四重苦

人はあえて「少し苦しい程度の負荷」をかけ続けないと成長しない、というのが自分の四十余年の数少ない教訓である。
けれど、それが「背負いきれないほどのもの」に急になると破綻する。
国のことでも自分のことでも「破たん」を防ぐには、問題を先送りして目を瞑(つぶ)ってしまうのではなく、相手を正面から受け止める必要がある。
自分が犯してしまったミスとか、降りかかる災難など理不尽に思うものもあるだろう。
けれど放置しても問題は、まずなくならない。
悪魔は祓わねば立ち去ってはくれないのである。

日経のコラムより。


「日本の40年分の課題、中国直撃 」と題するコラム。
急激に成長している中国は、日本が40年かかって経験してきた問題を走馬灯のように追いかけ、一気に大きな苦境を迎える、というもの。
中国も労働人口が縮小にむかう、とか安い農村労働力が尽きかけている、などという少々疑問に思う点もあるが、大きな流れは正しいように思う。
ことほどさように「成長時」に過熱を防ぎ、なおかつ成長を妨げない、というのはデリケートで慎重を要するものなのだろう。
というか、為政者にしても「全体」を見ることは不可能なくらい複雑な市場になってしまい、もはや思い通りのコントロールというのは不可能なのかもしれない、と思う。


物事には両面がある。
片方に誘導すれば、違う方から不平が出る。
本当に国民が「総じて幸せ」になる方向にドライブするには「政治のプロフェッショナル」と「強烈な志」が必要なことを痛感する。
やはり深い思想、というのは人間社会には欠かせない。

日本の40年分の課題、中国直撃
住宅バブル・貿易摩擦…、一気に噴出 成長と同時対処必要に

 【北京=品田卓】中国が不動産対策、人手不足、人民元など広範囲な政策課題に直面している。27日には不動産税導入を決め、1990年前後の日本のバブル対策と類似してきた。人手不足による賃上げや人民元改革などは高度成長期の日本が抱えた課題で、数年後には、労働人口の減少期に入る。中国では、日本がこの40年間に経験した様々な課題がほぼ同時期に噴出しており、政策のかじ取りは一段と難しくなっている。


「日本のようなバブルの発生・崩壊が起きないよう、どう手を打つかが重要だ」――。中国当局関係者はこう解説する。


中国政府は2010年から金融緩和路線を徐々に見直し、住宅ローンなど不動産融資規制強化に動き出した。それでも不動産価格の高止まりは続き、27日、地方政府が日本の固定資産税にあたる不動産税を試験的に導入することを認めると発表した。不動産税制のスタートだ。


日本ではバブルが深刻になり始めた1989年に金融当局が融資自粛を強化する通達を出した。効果が薄く、91年に地価税法が成立した。中国は不動産対策を融資から税制へと一歩前に進めた点で日本の対策と似ている。


いまの中国経済は日本の80年代半ばから90年代前半にかけてと似ている点が多い。対米摩擦も同様だ。日本の対米貿易黒字が拡大し、自動車輸出問題が生じた。中国でも、胡錦濤国家主席の今回の公式訪米の最大テーマは貿易不均衡問題だった。日本では当時、三菱銀行のバンク・オブ・カリフォルニア買収を先陣に邦銀が相次ぎ米銀を買収。日本脅威論がさらに激しくなった。中国工商銀行は今月、米銀を買収。日本の80年代と同様の道を歩んでいるように見える。


だが中国は日本の高度成長期に起きた政策課題も消化し切れていない。昨年から本格化した賃上げラッシュ。人材供給源だった農村の余剰供給力が終わり、人手不足になる「ルイスの転換点」が始まったとの見方が出てきた。日本では60年代に起きた現象だ。賃上げが加速すれば、安い労働力という中国の魅力は薄れる。公害など環境対策も始まったばかりで、人民元改革もこれからだ。


さらに2020年までに中国も労働人口の減少時代が来るとされる。日本がいま直面する経済成熟期の課題も同時に迎えることになる。社会保障などの負担がさらに膨らむ。




重慶市は不動産税導入をいち早く表明した(重慶市開発区のビル建設現場)
 中国は文化大革命で破壊された経済を1978年の改革開放路線への転換をきっかけに立て直し、一挙に30年余りで国内総生産(GDP)世界2位に駆け上がった。成長を最優先にまい進した結果、日本が40年かけて徐々に進めた政策をいま一挙に処理する必要に迫られている。


経済だけではない。政治改革や人権問題、貧富の格差対策も道半ば。このため成長を続けないと、国民の不満が一挙に噴き出しかねないだけに、高成長維持と、バブル対策、貿易不均衡是正、格差縮小などに同時に取り組む必要がある。


3月には今後5年の政策運営方針を決める全国人民代表大会全人代、国会に相当)が開かれる。7月には中国共産党結党90年を迎え、2012年秋には習近平国家副主席が共産党総書記に就任、新体制が発足する見通しだ。政策難題をどの程度処理できるか、この1、2年が重要な節目になる。