藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

皮肉でなく。

「藤棚の 上に青春 置き忘れ」

実にいい。(じわっ)
薄紫に咲く藤の花たちの上に、まったく自分の青春など置き忘れて来たようなものだ。
でも、それが淡い色の「藤棚」の上だったところが、そこはかとなく切ない。
これは伊藤園の主宰する新俳句大賞の佳作。
だがこれはどうだろう。

『「何になる? 子供の答えは 正社員』

うう。
悲しい。
少々の皮肉が込められているにせよ、そこまで目標を狭める必要があるだろうか。


江戸時代から、川柳は世相を映す、と言われている。
確かに庶民がやるせない日常や、政治への不満を句に込め、上手く描写したものは多い。

こどもでも 店長なのにと 妻なげく

「ランチ代 牛丼価格に 値下げされ」

実に時代の実態が謳われているな、と思ったが、今回はそれ以上。
「居候、四角い部屋を 丸く掃き」などはずっと可愛い方だろう。
時代の風刺は面白いけれど、「もういいや」というマインドは、特に若い人には持って欲しくない。


若さというのは何者にも代えがたい"武器"なのに、それに魅力がなくなってはそれこそ「丸腰」である。
「先」に野心の燃える「何か」が無くなってしまったからと言って、実は一番豊かなのは今の世代なのである。
「その豊かさ」を思い知ってこそ"これから"についての野望も湧いて来ようと思う。


経済的な発展でなくとも「よし、これから何をしてやろうか」という気構えは持っていてもらいたい。
「豊かになればなるほど、どんどん気力が抜けゆく」のでは、あまりに不甲斐ないではないか。

「役員の ブログで知った 社のピンチ」

これはIT時代の皮肉だろうか。
リアルの対話が希薄化したここ数年の「ネット社会」の傑作川柳である。

「何になる? 子供の答えは 正社員」 サラリーマン川柳
 「何になる? 子供の答えは 正社員」「指舐(な)めて ページをめくる アイパッド」。第一生命保険は17日、「第24回サラリーマン川柳コンクール」の入選作100句を発表した。2010年の流行語や世相を織り込み、「コンビニで 整いました 母の味」など家庭の微妙な人間関係をコミカルに描いた作品が多かった。

 2万6686句の応募があった。3月16日までインターネットなどで投票を受け付け、5月に上位10句を発表する。

 「ランチ代 牛丼価格に 値下げされ」と家庭内の価格競争激化を嘆いたり、「山GIRL? 妻はお腹に 山がある」では、カラフルなファッションで登山を楽しむ山ガールにかけて妻の体形を皮肉った。

 「役員の ブログで知った 社のピンチ」という句では会社の風通しの悪さに驚き、「上司より 頼れる使える スマートフォン」と、IT化に遅れる上司に冷たい視線を送るような悲哀漂う句もあった。

div/div.JSID_key_html
$.JSID_actGadgetReload_scrap