藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

チャンスは常に目の前に。

JAあいち建設部が、「暮らす会」の主婦と共同して、これまでにない「広くはないけれど、快適に過ごせる家」が誕生したという。
記事の主旨はいちいち最もなのだが、失礼ながら「そんなこともやってなかったの?」という疑問の方が大きくなった。

「1年かけて、賃貸集合住宅に暮らす7人の主婦メンバーから、暮らしの実態と住まいに対する要望を聞き取り、その声を集めて整理し、カタチにした賃貸アパート」とのことである。

その具体的な中身は

適材・適所に造り付け収納の確保、
作業スペースの広い(少なくとも幅60cm)キッチンカウンター、
室内物干し場、
玄関土間収納。
ヒットしたのは「勝手にボード」と呼ばれる、好きにデコレーション出来る壁など。

さらには

また、玄関ドアの外壁に頑丈なフックが欲しいという意見には「うーん、なるほど」とうなった。外出理由が何であれ、女性は両手に荷物を持って帰ることが多い。ましてや赤ん坊を抱いて買い物袋を提げているときなどは玄関の鍵をバッグから取り出すのが大変。かといって荷物を床に置きたくない。そんな時に荷物を掛けるフックがあれば、荷物を汚すことなく鍵を探すことができるというわけだ。

とまあ以下様々な工夫の余地があり、それを丹念に集積して"賃貸住宅"に反映したということである。

観察する力、集積する力。

トイレにいても、風呂場にいても、リビングやキッチンにいても、「ああ、こういうものがあったら便利なのに…」と自分たちは割合頻繁に感じているらしい。(玄関に、小さな棚や低い椅子、さらになんでも引っ掛けられるフックなどがあると非常に重宝する、ということは最近の自分の発見である)

ただ、「それら」をきちんと感じ取り、記憶し、解決策が出るまで辿りつけるかどうか。

というようなことは、日常のビジネスでも全く同じである。
あれ。変だな、と思うようなことを逃さずメモし、時折見返す。(ブログはクラウドだからそういう面でも便利である)
そんな「思考の習慣」がいつか大きな変化をもたらすのではないかと思う。
住宅の中では感じても、こと仕事タイムになると、日々のタスクをこなすことに意識を奪われてしまい「これはどういうことかな」というふうに俯瞰して思考することがないものである。
この工夫されたデザイン住宅にあやかり、「斬新ではないけれど、心地よいサービス」などを考えていければいいな、と思った。

住まい手目線の賃貸集合住宅完成
asahi.com{住まいのお役立ちコラムより}
昨年1年かけて、賃貸集合住宅に暮らす7人の主婦メンバーから、暮らしの実態と住まいに対する要望を聞き取り、その声を集めて整理し、カタチにした賃貸アパートが名古屋市中川区に完成した。

「暮らす会」主婦メンバー7人とJAあいち建設部・地域開発課・ハートホーム担当メンバーが力を合わせてこの世に生み出したのは、今までにありそうでなかった「広くはないけれど、快適に毎日が過ごせる家」。見学してみると、そこでの快適な暮らしぶりが容易に想像できる間取り、しつらえであった。

主婦たちのさまざまな意見・要望を素直に、熱心に聞いて基本プランを何度も書いてくださった(株)娯住創の清水さんの聞く力と根気強さがなかったら生まれなかった新商品でもある。

住まい手と供給側が力を合わせて生み出した「ジェイ・クルール」(JAあいち経済連が新商品として開発した住まい手目線の賃貸集合住宅の名称)第一号の誕生は、私にとっても大変うれしいことであった。なぜなら、私は昨年「暮らす会」のメンバー会議の司会・進行を務め、彼女たちと共に住まい手側の立場、生活実感から暮らしやすい賃貸集合住宅を考え、討議を重ねてきたからである。

新築物件を見学した時には、生まれたばかりの我が子に初めて対面したパパのような気持ちであった(ママは、生みの苦しみを味わったJAあいち経済連のハートホーム担当者たち)。

主婦メンバーからは、家事動線と家族それぞれの移動動線のスムーズさ、適材・適所に造り付け収納の確保、作業スペースの広い(少なくとも幅60cm)キッチンカウンター、室内物干し場、玄関土間収納など色々の要望が出たが、「賃貸は退去時の修繕費が怖くて壁に釘一本打てない。これでは自分らしくインテリアを飾ろうと思っても、何もできない。せめて一面だけでもいいから好きにして構わない壁はできないものだろうか」というアイデアが印象的であった。

そこでハートホームチームは「勝手にボード」と銘打って、LDKの一面を好きに使っても退去修繕の対象にしない壁を実現した。今回のジェイ・クルールにも採用されている。釘を打って額をつろうが、直に絵を描こうが、アクセントクロスを貼ろうがご自由にという壁である。

また、主婦メンバーの周囲の住まい手対象のアンケートも実施したが、「賃貸だからこそ各室に造り付け収納を標準装備にしてほしい」という意見が多かった。将来持ち家に移る時に、そこに合う家具を買いたいので、賃貸入居時には買いたくないというのがその理由であった。

造り付け希望の家具の順位は、以下の通り。

1位:各室クローゼット(85.0%)

2位:玄関下足入れ(71.7%)…30足分は必要

3位:洗面リネン棚(56.7%)

4位:食器戸棚(35.0%)

5位:リビング収納(31.7%)

また、玄関ドアの外壁に頑丈なフックが欲しいという意見には「うーん、なるほど」とうなった。外出理由が何であれ、女性は両手に荷物を持って帰ることが多い。ましてや赤ん坊を抱いて買い物袋を提げているときなどは玄関の鍵をバッグから取り出すのが大変。かといって荷物を床に置きたくない。そんな時に荷物を掛けるフックがあれば、荷物を汚すことなく鍵を探すことができるというわけだ。

また、このフックは雨にぬれた傘を一時的につるして水を切りたい時にも便利。玄関内にびしょぬれの傘を持ち込むと湿気が充満するので、なかなかよいアイデアである。

以上のような多岐にわたる要望をかみ砕いてカタチにし、地域の特性から割り出したターゲットに併せて採り入れる要素を絞り込んで出来上がったのが今回見学した物件である。

ターゲットは新婚間もないDINKS。2人ともフルタイムで働いているので、何より家事が合理的に進められることが重要なポイントである。3タイプ見学したが、どの部屋も広めの玄関土間収納があり、靴はもちろんスポーツ用具を始め趣味の道具、灯油タンク、その他家の中にあげたくないものがしまえる。

造り付けウオークインクローゼットには、洋服掛けだけではなく季節外の布団がしまえる中段があり、棚の下は押し入れだんすやスーツケースなどが収納できる。

キッチンは対面式で、2人で立ってもぶつからない広さを確保。キッチンカウンターは2,400mm〜2,550mmを採用し、広めの作業スペースも確保してある。キッチンカウンター側に2カ所、背後の壁にも冷蔵庫用、レンジなどの家電製品のためのコンセントがしっかり配置され、キッチンでよく見かけるタコ足配線とは無縁であることが一目でわかる。

浴槽は大きく「主人が喜びそう!」と一緒に見学した主婦メンバーが驚きの声をあげた。洗面室には洗濯物干しのパイプが付けられており、居室の物干しパイプと合わせると、雨の日の洗濯物干しも心配無用。

雑多なもので散らかりがちなリビング・ダイニングにも収納が造り付けられている。

「勝手にボード」は、どの部屋タイプもリビング・ダイニングに取り付けられており、住む人の好みによってインテリアに変化が出せそうである。

このようにジェイ・クルールは、間取りやデザインが先にあるのではなく、建てる場所に住むであろうターゲットを明確にし、そのプロフィルに合わせて、主婦たちの協力によって蓄積してきた住まい手目線のさまざまな工夫を盛り込む賃貸住宅。

「ライフステージに合わせて住み替えながら、一生賃貸生活を楽しみたい」という人が増えている現在、住まい手の暮らし方に合わせた賃貸が増えることは、大いに喜ばしいことである。