藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

先端モデル国、ニッポン。


ドラッカーのいう「定年10年延長説」と似た話で、"精神年齢低下説"というものがあるという。
中身は至ってシンプルで、今の六十代以下の人は、それ以前(つまり戦争体験の有無か)に比べて、「約十歳分は精神的成熟度が低い」という意味である。

二十歳は十歳程度。
三十歳は成人程度。
四十歳は三十くらい。
五十歳でせいぜい厄年前。
もう人生の仕上げに入る、とも思われる六十歳で、まだ五十歳。
さらに人生の終盤、くらいの印象の七十歳で、まだ定年前(あるいは直後)の六十歳である。

確かに。
四十七の自分も"実はまだ三十代後半"とイメージして見れば、かなりリアルな感じがする。
それだけ精神の熟成が進んでいないのかもしれない。


けれど、日本の社会はまだ"十年巻き戻し"には対応していない。
制度として、定年とか、年金とか、医療保険とか、そんな「枠組み」だけがそのままの躯体で残っている。
今週は「超高齢化の先進国、日本」をずっと見てきたけれど、あらためて「世界で初めて日本が体験する」、いわゆる"未体験ゾーン"に、入ってきているようである。

年も取ってきて、若いころよりも数段"ポジティブ思考"になってきているので、この超高齢化社会も「初めてのチャレンジ」として、ついに欧米や新興国に対して「だから日本人はこうするのだ」という例を示す格好の舞台ではないかと思うようになってきた。


世界一寿命が長い、というのはある意味「とてもすごいこと」である。
「妊娠段階から新生児、乳児、幼児、青年、中年、壮年、老人、超高齢者まで」あらゆる層に対して最新医療が整備され、結果寿命が延びたのである。
何か「高齢化社会が悲観すべきでしかないこと」といういい方には賛成できない。
これほどお年寄りが生き延びる国だから、「だからこれからをどうしようか」ということを前向きに考えるべきだろう。

社会保障費はあと四年で1.5倍の151兆円になり、一方就業人口は全人口の50%を切った。
とはいえ、介護などの特定業種では今後も極端な人手不足が予想されるという。

ひょっとしたら日本は、EUよりも、どこよりも先んじて「次世代の人口モデル」を実践してゆく国なのかもしれない。
だからこそ、年金の先送りとか、子供手当の金額論争とかを続けるのではなく、"100年先を見据えたグランドデザイン"を描かねばならないと思う。
ピンチはチャンス。


今、これから、何をするかが問われているようだ。

(5)「働き手」、人口の5割切る 製造業の海外移転に拍車
20〜30歳代の減少響く

少子高齢化を背景に労働力の減少が加速している。会社員や自営業、職探し中の人を合計した「労働力人口」は2010年に6241万人となり、5年前に比べて4.6%減った。総人口に占める割合は48.7%と25年ぶりに5割を下回った。若年世代の人口が減っているためだ。この傾向が続けば技術継承が滞り、国内製造業の海外移転に拍車をかけかねない。社会保障の担い手もさらに手薄になる。
総務省国勢調査を基に算出した。10年の総人口は1億2806万人と5年前に比べて0.2%増えたが、労働力人口は同じ期間に300万人減った。20〜30歳代の働き盛りの世代の人数が250万人減ったことが大きな理由だ。

日本の総人口に占める労働力人口の割合は1970年に初めて5割を突破した。第2次ベビーブームで総人口が増えて5割を割り込む時期もあったが、会社で働く女性が増え、90年には再び5割を超し、その後はこの水準を維持してきた。

若年労働力の減少は現時点では大きな問題となっていない。景気の低迷で企業の雇用意欲が減退しており、むしろ若年失業者の増加が問題視されている。5月の完全失業率は4.5%に達し、ハローワークで職探し中の人に対する求人数を示す有効求人倍率も0.61倍と1倍を下回っている。

もっとも景気が回復・拡大過程にあった06〜07年は有効求人倍率が1倍を超え、造船・重機や情報サービスなど多くの企業が必要な人員を確保できなかった。東日本大震災の復興が進んで景気が本格回復に転じれば、人手不足がより深刻化する可能性が高い。

すでに地方の金型工場などでは国内では若手労働者が確保できないとして、中国に工場を移す動きも出始めている。原子力発電所事故による電力不足をきっかけに国内空洞化が懸念されており、労働力不足もこの傾向に拍車をかけかねない。

足元でも医療・介護など人手不足が慢性化している業種がある。介護最大手のニチイ学館は今年4月入社で700人の新卒採用を予定していたが、実際の内定者数は半分以下にとどまった。採用枠の9割以上を占める介護職で予定数を大幅に下回った。内閣府は「労働力人口の減少が続けば、潜在成長力は30年に0.5ポイント程度押し下げられる」と試算する。

社会保障に対する政府の支出は25年度に現在の1.5倍の151兆円に膨らむ。労働力が減り続ければ、現役世代の負担がさらに増すのは必至だ。労働力の減少に歯止めをかけるためには、景気回復に備えて女性が働きやすい環境を整えたうえで、中長期的な視点で少子化対策を進める必要がある。