藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

消える業平橋。

バスの行き先表示も(なぜか平仮名で)"とうきょうスカイツリー駅"に一瞬にして変わってしまった。
以前の名前は「業平橋駅行き」。
これは何とも風情のある名前だと思っていたので少し残念。

読売「受験サポート」より。

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

伊勢物語」によれば、隅田川までやってきた業平が、見知らぬ鳥を見つけ、舟の渡し守から「都鳥」という名前を教えてもらって読んだものと言います。

近所を流れる隅田川の水面を眺めて、千年も前に平城天皇の孫の業平が船を浮かべて、船頭とそんな会話をしていたのだろう、と思って遠目のスカイツリーを見ると20xx年、なんて当時から見ればトンでもない未来の話であり、けれど川はさほども変わらずに流れているのだなぁ…(遠い目)
などとぼーっとしているとしばし現実を忘れる。

お、遅刻遅刻。

強調の「し」

=読売新聞のコラム「なぜなに日本語」の毎回のテーマを、もっと詳しく解説します=
 東京都墨田区東武伊勢崎線業平橋駅」が「とうきょうスカイツリー駅」に改名しました。東京スカイツリーの最寄り駅であることがすぐわかるのは便利ですが、伊勢物語の主人公である在原業平にちなんだ駅名がなくなるのはちょっとさびしい気がします。

今回の新聞コラムでは、強調を表す「し」について取り上げました。この「し」の用例として必ず挙げられるのが次の業平の歌です。

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

伊勢物語」によれば、隅田川までやってきた業平が、見知らぬ鳥を見つけ、舟の渡し守から「都鳥」という名前を教えてもらって読んだものと言います。

「名に負う」は「名前として持つ」意味で、そこに強調の「し」が入った表現です。都鳥なんていう名前を持っているのだったら、さて、質問しようじゃないか。都(京都)にいる私の思っている人(奥さん)は無事かどうか…といった意味です。名前が都鳥なら都のことが分かるはず、というのは、ちょっと無理があるかもしれませんが、それだけ都を慕う気持ちが強かったということでしょうか。

この歌は古今和歌集にも載っています。コラムで引用した「生きとし生けるもの」は、この古今和歌集の序文に出てきます。「花に鳴くうぐひす 水に住むかはづの声を聞けば 生きとし生けるもの いづれか歌をよまざりける」

ウグイスやカエルの鳴き声も「歌」ととらえ、この世に生きているものはすべて、歌をよまないものはないのだ、と力強く訴えています。

 (読売新聞用語委員会・関根健一)