二足歩行の人間、腰痛に悩む人は多い。
自分もその一人だったが、ここ数年の下半身ストレッチでなんとか切り抜けて来た。
それはともかく。
腰痛の原因はストレスである場合があり、ストレスが血液の流れを阻害して、神経を刺激して結果腰痛を引き起こすという。
そう言えば、腰痛に悩む人には「内向性、あるいは他因主義」の人が多くはないだろうか。
つまり、日常に起こるストレスを「他人のすることだから仕方なし」という気持ちでいる人である。(つまり"関心の輪")
その逆が「自分がかかわることで、そのストレスを何とかしてやろう」と思える人である。
プライドが高く、そのストレスの対象についても「自ら相手に語りかける」ということはせず、結果的には自分の「内部ストレス」を高めているような構造ではないだろうか。
つまり、周囲の出来事について、理由はともかく「その原因や調整、解決方法について、正確な分析が出来ない人」ということになるだろうか。
他人のことであれば、実に沈着冷静な人が、一たび自分の会社や家族や友人のことになると取り乱し、現状の冷静な分析すらできなくなることを、我われはしばしば目にしているのではないだろうか。
これからの社会、「ストレスとの上手な付き合い方」というのもかなり重要なテーマである。
ストレスで腰が痛くなるって、ご存じでしたか? 腰痛に精神的要素が大きいということは、漢方医学では古来、言われてきたことです。このことは最近、西洋医学的でも言われるようになりました。つまり、ストレスが多い状況で交感神経が活性化すると、筋肉が常に緊張状態になり、血液の流れも悪くなります。こうした神経的な緊張のかたよりが慢性的な腰痛となって表れるのです。また、腰痛は体のエネルギーである精気の衰えも原因とされています。このような状態を腎虚(じんきょ)といいます。そこで、基本的な治療としては、ストレスによる緊張状態を緩める方剤か、腎を補う補剤か、もしくは両方を服用する、ということになります。
私は外科の研修医として働いていた頃、かなりひどい腰痛に悩まされました。腰にベルトを巻かないと仕事ができず、整形外科にかかって検査を受けましたが、全く異常はありませんでした。痛み止めを服用して胃を壊しながらも我慢しているうちに、仕事に慣れるに従って良くなりました。これは、今考えると、ハードな労働による腎虚と、ストレスによる過緊張状態が原因だったのかもしれませんが、その頃はあまり漢方の知識もなく、漢方薬を使えばもっと早く良くなったかもしれない、と思います。
さて、腎虚とストレスの両方に対処できる漢方薬が補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。腎虚に対する補剤であると同時に、ストレスによって滞った気の流れを正常に戻す働きがあります。また、比較的飲みやすいので、初めて漢方薬を服用する方にも適しています。
ストレスがメーンである場合は、柴胡剤と呼ばれる方剤が効果的であることが多いです。中でも、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)は、気を遣って疲れているタイプの人によく効きます。この方剤は腹直筋が緊張していて、脇が詰まったような感じがする方によく効きます。四逆散(しぎゃくさん)は、より緊張が強くて、みぞおちが張っているような人によく使います。具体例を挙げてみます。15歳の女性、腰痛、四肢の冷え、抑うつ気分があり、受診されました。1年前の5月頃から部活動でトラブルとなり、その頃から抑うつ気分と不眠が出現、徐々に家族に対しても心を開かなくなり笑顔を見せることもなくなった。心療内科でも抑うつ神経症の診断で加療を受けたが改善しませんでした。また、軽い側彎(そくわん)があったため腰痛があり、四肢の冷えがひどく夏でも靴下をはかなければならない状態でした。四逆散料を処方開始したところ、投与7日目で不眠・四肢の冷えが改善、1か月で家人に対して笑顔を見せるようになりました。3か月で冷えはほとんど消失し、元気になりました。側彎も改善し、腰痛も消失しました。
腎虚がメーンにある場合には、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)が適応になります。特に、牛車腎気丸は、基礎研究でも一酸化窒素(NO)という、交感神経を緩めて血液の流れを良くする物質の生成を促す働きがあると示されています。
適度な運動が腰痛を改善することは知られていますが、鎮痛剤を服用してもなおひどい腰痛があると、運動する気にはならないと思います。もし、漢方薬を併用することで痛みが和らげば、運動ができるようになり、より腰痛の改善に役立ちます。漢方で、腰痛の悪循環を抜け出すことができるかもしれません。腰痛に用いられる漢方薬
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
四逆散(しぎゃくさん)
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
八味地黄丸(はちみじおうがん)