科学アゴラより。
- 作者: 合原 一幸
- 出版社/メーカー: ウェッジ
- 発売日: 2015/05/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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医療やテクノロジーの分野でも、つい「科学とは本当に進んでいるのか」と懐疑的になる場面も少なくない。
いつも自分たち一般人は結果しか見ていないから、時には喜び、時には絶望するけれど、それを冷静に「科学」という目で「定点的に見る眼」はブレないためにもとても重要だと思う。
全然別の分野に見えますが、複雑系である脳と経済と地震には共通点があります。いずれも連続する時間の流れの中で、ある瞬間に事象が急に立ち上がります。これを「点過程」と言います。私たちのビッグデータ解析技術で研究しやすくなりました。
「脳と経済と地震」。
どれもが現代の難問だ。
どれも完全に解明されてはいない。
複雑系は、よほどのカオスに見えるが、実はそうではないかもしれぬ。(ぬぬぬ)
何だかとっても興奮するテーマだ。
DNB(動的ネットワークバイオマーカー:多数の体内指標物質)を定期的に検査しておけば、病気になる前の「未病」の状態をつかめ、超早期の効果的な治療につながることが期待されます。
もっとも漢方薬の研究者からは「漢方の世界では2000年前から知られていた」と言われましたが。
最先端の数理工学を追い続け。
二千年前の漢方の世界と相見える。
科学と自然の関係、は聞いているだけでも面白すぎるテーマ満載だ。
脳・経済・地震 意外な共通点
現実世界の諸問題を「数理工学」を使って解決したい
東京大学の合原一幸教授は「数理工学」という武器を引っさげ、様々な要素が絡み合った複雑系と呼ばれる独特な学問分野に挑んでいる。――数理工学とは何ですか。
抽象的な概念を探る純粋な数学に対して、数理工学は現実世界の諸問題の数学的な解決を目指します。理論のプラットフォーム(足場)に基づいて、非常に広い応用範囲をカバーするという特徴があります。――プラットフォームとはどんなものですか。
複雑系における動的な変化の制御、要素間のネットワーク構造の最適化、ビッグデータを駆使した予測という3つの基礎理論で構成しています。最適化は電力システムの安定化に大切です。ビッグデータの解析は、最近とくに注目されていますね。――どんな応用が考えられますか。
例えば多数のバイオマーカー(体内指標物質)の変化をとらえて治療に生かすことです。私はそれをDNB(動的ネットワークバイオマーカー)と名付けました。これまでDNAを通じて生命に関する基礎的な理解が進みましたが、今後はDNBも重要になるでしょう。「Aの次はB」です。DNBを定期的に検査しておけば、病気になる前の「未病」の状態をつかめ、超早期の効果的な治療につながることが期待されます。もっとも漢方薬の研究者からは「漢方の世界では2000年前から知られていた」と言われましたが。
――横断的な知見もあるのですか。
全然別の分野に見えますが、複雑系である脳と経済と地震には共通点があります。いずれも連続する時間の流れの中で、ある瞬間に事象が急に立ち上がります。これを「点過程」と言います。私たちのビッグデータ解析技術で研究しやすくなりました。脳の神経細胞は電気パルスを次々に点過程として生成し、情報を伝達します。為替相場などでは取引の成立が点過程に相当し、神経細胞のデータ解析手法が為替の解析に使えることが分かってきました。地震のデータもやはり点過程であり、高精度の余震予測が可能になっています。
――今後はどんな方面に研究の方向付けをしたいですか。
生物の仕組みをもっと理解することが大切です。脳をまねた電子回路の研究はもともと日本のお家芸でしたが、今は欧米に抜かれてしまいました。うまく集積化すると、高密度かつ圧倒的な省エネが可能です。若い人たちを「軍師」として支えながら、こうした研究に取り組みたいですね。
(池辺豊)