藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

卒論買います。買われます。

数年前、「夏休みの宿題」が業者に外注されて話題になった。
時代は進み、「卒論」もターゲットになっている。

コラムは「指導不足」を指摘するが、(確かにそうだが)問題は"日本の教育のコンセプト"にただ唯行き着くだろうと思う。
特に文科系の学生が、大学教育を軽んじる傾向は恐らく、戦後すぐから培われてきた体質だろうと思う。
確かに今の教育現場の「指導不足」はあるかもしれないが、その根本は「教育の意味」を問われていると思うのだ。

つまり、"外注やコピペを許し、評価される現代の教育"は根本的に、そのコンセプトを変えねばならないのである。
「卒論外注」はつまりそんな程度で単位を与えているという日本の大学の価値をそのまま顕しているのだ。

しかし、そうした意味では「改善の方針」は割合明確である。
まず「どうした人物が教育されてゆくべきか」という基本理念が最も重要であるが。
例えばこれから日本の若者に望まれるべき資質で、
・過去の歴史を客観的に把握できている
・今の日本の現状に対し、自分なりの景観を持っている
・日本の将来について、柔軟に考えてゆく希望と奉仕の心が備わっている

などといった方針が決まってしまえば、今の優秀な先生方が、それにしたがって面接選考すればよいのである。
決して悲観的ではない。
むしろ、ついに卒論がたった10万円で外注される時代になったことは、いよいよ"大学教育の変わり目"とも言えるのである。

社会人の間では、学歴の話はすでに十年ほど前から形骸化していたが、いよいよ教育制度そのものをドラスティックに見直す時期が来ているのではないだろうか。
学生が、「この大学に入り、学びたい」と素直に思える学び舎づくりは、大人の責任であろうと思う。
また、それには「企業の力」も大いにかけて、「これからの日本人像」などを議論しても良いのではないだろうか。

これこそ、戦後初ではないだろうか。
思い切った時代の切り替えはここにも来ている。

卒論代行、ネットで受注 1本10万円台
佐藤恵子】大学の卒業論文を学生に代わり、有料で作り上げる「卒論代行サービス」がインターネット上で広まっている。文部科学省は代筆による卒論の単位取得を認めない立場だが、実態把握はできていない。卒論作成が佳境に入る年末に向けて、学生による代行依頼は相次ぎ、専門家からは「大学側が十分指導できていない」との指摘も出ている。
■親が頼むことも
「就活等で時間がなくて、卒業論文、レポートを書けない方のための代筆を承ります」
ある卒論代行業者のホームページ上にあるうたい文句だ。料金は1文字あたり5円。「単位取得、合格点に届かなかった場合は料金の90%を返金する」とも書かれている。
名古屋市内でこの業者の男性(58)に話を聞いた。男性は就職支援業の立ち上げを目指しており、その一環として昨年11月から卒論代行を始めた。これまでに請け負った代行は20件程度。依頼者からテーマや文字数、納品期限の希望を聞き、7〜8冊の本を読んで構成を考え、約1週間で完成させる。2万〜3万字の字数で、料金は10万円台のケースが多い。
代筆を疑われないよう、受注の際には出来上がりのレベルについての希望も聞く。「例えば、わざと『そして』などの接続詞を多用し、つたない文章に変えることもある」という。
依頼は年末が多く、病気で卒論が書けない息子を卒業させようと、父親が申し込んだケースもあったという。代行する行為について、男性は「良い悪いという感覚はない。自分の知識が増えるのが楽しく、ニーズもあるから」と話した。
別の代行業者に電話で問い合わせると、男性が出た。記者と名乗ったうえで代行を始めた時期を尋ねると「10年ほど前から」。さらに、依頼件数や内容など詳細を聞いていくと、男性は「今は代行ではなく、修正や添削の依頼を受けている」と答え方を変えた。
ネット上で検索すると、各地の業者が次々と見つかる。東京都の住所で「卒業論文代行サービス」を名乗る業者は「K大学経済学部」「Y大学文学部」などの卒論代行を実績に挙げる。1文字あたり10円で、博士課程や修士課程を修了したスタッフらが代筆すると宣伝。「代筆くん」というホームページもあり、「学生さんの心強い味方!」とPRしている。
■「指導不足」指摘も
文科省大学振興課の担当者は「すべてを第三者に任せた卒論の単位は認められない」との見解を示す。愛知県内にある私立大学の教務担当者も「リポートや試験の代筆は不正として無効になるとの規則があり、卒論も代筆が確認されれば同様に無効だ」と話す。
代行業者の存在が問題視され、ネット上で規制する動きもある。ネット検索大手のグーグル社は「不正な学術代行サービスの宣伝は認めない」(広報部)として、検索結果の一覧画面の脇に表示される広告欄に、代行業者の広告が掲載されないようにする措置をとっている。
ただ、国も具体的な事例をつかんでおらず、これまで実態把握の調査なども行っていない。
「新版 大学生のためのレポート・論文術」などの著書がある日本大学文理学部の小笠原喜康教授(教育学)によると、卒業論文の代行サービスは20年ぐらい前から始まり、ネットの普及に伴って業者の存在が明るみに出てきた。
小笠原教授は「大学で論文が重視されなくなってきて、一部では学生への卒論指導がきちんとできていない例もある」と話し、大学側の対応にも問題があると指摘。さらに「代行を利用すれば、学生は考える機会を放棄することになり、結局は損をする」と警鐘を鳴らしている。