藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

制度の見直しを。

超大手企業に、「追い出し部屋」設置による社内失業が発生しているという話。

少し大きな企業であれば「アウトプレイスメント」などと呼称され、またそうした人たちの転職を専門に扱うビジネスが流行ったのももう十数年も前のことである。
いまさら何をと思うが、日本の雇用がここにきて遂に破たんし始めたことの表れかもしれない、と思う。

大手であれば系列があった。
様々な周辺業務を担当する子会社群に「民間天下り」のようなシステムで60-65歳までは面倒を見てくれるシステムがぱっちり出来上がっていたのである。

金融でも、生保でもメーカーでも、新卒で入社した社員が約三十年ほどもかけて徐々に篩にかけられ、五十代には八割がたが子会社や取引先に転籍する。

自分のように中小企業端を歩いてきた者にはその、見事なまでのすそ野の広い仕組みに大いに感心したものである。
"日本のホワイトカラーの強みの源泉"と言えたのではないだろうか。
なにより(恐らくは)「安心して働けた」ということだろう。

いつ一人になって転職したり、起業したりしなければならないか、を考えていては「大企業の一部門として」だけのキャリアに従事していてはバランスを損なうことも多いだろう。
安心して「生涯一部門」のようなことを担当し、皆が安定して業務できるためには、巨大なピラミッドのような「雇用の吸収システム」は有効だったのだと思う。

それが、遂に大手でさえキャパを超え始めたようで、ついに社内の「追い出し部屋」が出現したのだろう。
それにしても外資に勤める友人の話では「ある日突然人事に呼び出され、"fired"と言われて、その日に撤収」というようなことが当たり前だという。
法律という前に文化の差、というものを感じるけれど、日本の今の労働契約も従業者保護に偏って硬直していると感じるのは自分だけだろうか。

一時雇用者との契約とか、就業規則の運用などについても、法改正がなされる度に硬直化し、実態からかい離するばかり。
派遣法を改正したら、正規社員が減少したのはその例である。
「選ばなければ、今の日本に仕事などいくらでもある」という経営者も多い。

そろそろ制度を見直して、新しい雇用や起業に目が向くようなものにしなければならない。

「追い出し部屋」パナなど5社を実態調査 厚労省
 【内藤尚志】大手企業で社員から「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の設置が相次いでいる問題で、厚生労働省が企業への実態調査を始めた。まずはパナソニックなど5社への聞き取り調査を先行して行った。まともな仕事を与えられていない「社内失業者」を集め、「退職の強要」などの違法行為があれば、改善を促す方針だ。
 厚労省はこれまで、電機大手のパナソニックのほか、業績悪化などで人減らしを進めているシャープやソニー、NEC、生命保険大手の朝日生命保険の計5社を調べた。いずれも各社に「追い出し部屋」と呼ばれる部署があることなどを朝日新聞が昨年末に報じていた。
 5社への「先行調査」の結果の一部は、29日にも社名を出さずに公表する。大企業にこうした部署の設置が広がっていることを明らかにし、ほかの社に注意を促すねらいがある。今後さらに調査を広げて、民法の「不法行為」にあたる退職の強要などがないか、厳しく監視する。
 これまで調査を受けた5社はいずれも、厚労省に対して「該当の部署に問題があるとは考えていない」と答えたとみられる。厚労省も今のところ、違法行為があったとはみていない。だが、こうした部署への配置が長くなると、退職の強要や、まともな仕事を与えないまま放置するなどの違法行為につながるおそれがあるため、5社にそれぞれ注意を呼びかける方針だ。
 厚労省は今後も調査を続け、違法行為がないか重点的に調べる。日本では、経営難を理由にした解雇はきびしく制限されており、経営再建にとりくむ企業は社員に自主的な退職を促すことが多い。だが、しつこく退職を迫れば、違法になる。「追い出し部屋」などと呼ばれる部署でまともな仕事を与えない状態を長く続けていても、違法とされる可能性がある。