藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

並行する社会

善と悪。
表と裏。
陰と陽。
人以外の動植物にはない二面性。
これがあるから「人」なのだろうか。

今のデジタル通信全盛時代にも、もちろん両極は存在する。
流行りの、電話を使ったオレオレ詐欺では、交通事故や仕事の過失など、かなり込み入った「舞台設定」があっての犯行環境になっているそうだが、ネットの世界ではまだまだお手軽である。
が、その代りデジタルお得意の「自動で張れる罠」がそこかしこに張り巡らされ、特に初心者を中心に被害を拡大しているようだ。

スパムメールはそれこそ「万に一つもクリックされよ」とばかりに飛び交うし、ネット社会に経験の浅い人ほど戸惑い、被害に遭ってしまうのもまあ想像に難くない。

それにしても、今の時代、もはや「ネット犯罪」を行う側も簡単ではないだろう。
ネット上でIPアドレスをなり済ましたり、他国のサーバーを経由して誤魔化したりという手口は相変わらずのようだが、もう「お金をリアル化」する部分の警戒は相当なものである。

つまり銀行口座の開設は、ちょっと片手間ではできない大変な作業になりつつあり、また銀行の役割も以前にまして重いものになっているといっていいだろう。

*

それにしても。

新しいビジネスを考えたり、また社会貢献を志したり、そうした「善とか表の世界」があればあるほど、同様に「悪とか裏の世界」もある。

人間の性(さが)なのか、しかしそれが人の面白いところなのか、ヒーローものの「悪の組織」そこのけのリアル世界の様相である。
「悪の組織」は、その持てるエネルギーで、「表の組織を改革することを考える力がある」というのは通説だけど、まったく「その悪さを考える以上に、商売などに精を出せばよほど成功するだろうに」という犯罪は少なくない。
「悪」というのは、それだけでどこかアウトローの「妖しい魅力」を以て人を洗脳するのだろうか。
歴代の小説に登場する悪人も、富や権力に取り憑かれた人物というよりは「悪そのものの醍醐味に魅せられた」ような設定が多い。
善行と同様、悪にもどこか自分たちが魅力を感じる「英雄的な部分」があるのだろう。

それにしても、そんな構造が現実のネット社会でリアルに繰り広げられている様は興味深く、また今後の在り方について我われが考える材料になると思うのである。

スマートフォン、特にAndroid端末でのアダルトサイト詐欺の相談が急増している。パソコンやケータイのアダルト詐欺よりも悪質なので注意したい。

アダルトサイト関連の相談が急増


国民生活センターによるスマートフォンに関しての相談件数。デジタルコンテンツに関する相談が急増している
 国民生活センターが1月31日に「スマートフォンに関連する相談」の資料を発表した。それによると、スマートフォンに関する相談件数が急激に増えている。2012年の相談件数は5043件で、前年同期に比べて約2倍に増えた。スマートフォンの利用者が爆発的に増えているほか、携帯電話(フィーチャーフォン)からスマートフォンへのメールの移行がうまくいかない、端末のトラブルが多いといったことが理由だ。スマートフォンの通話料・パケット料、機器や通信サービスの品質などに関する相談が中心となっている。

 加えて、スマートフォンでのデジタルコンテンツに関する相談も急激に増えている。2012年のデジタルコンテンツについての相談は1万1673件で、前年同期比で5倍以上に急増した。国民生活センターに寄せられている最近の相談は、以下の通りだ。

スマートフォンで無料のアダルトサイトにアクセスし、年齢を入力したら登録されて料金請求画面が出た。支払いたくない。

・妻がスマートフォンで無料アダルトサイトに入り、高額な料金請求画面が表示されたようだ。なぜ請求が発生するのか納得できない。

スマートフォンで芸能人のサイトを検索し、画像を見ようとして年齢確認画面で「ハイ」をクリックしたら、有料のアダルトサイトに登録となり料金請求画面が現れた。

・以前から迷惑メールがたくさん来ていたが、メールの中に「無料でサイトの配信を停止します」というものがあったのでクリックしたら、サイトの登録料を請求された。対処法はないか。

スマートフォンに身に覚えのない請求メールが届いた。法的手段を取ると書かれているが、対処法を知りたい。

 数年前に問題となった「携帯電話でのアダルト詐欺、ワンクリック詐欺架空請求」とほぼ同じパターンが、スマートフォンでも繰り返されているのだ。ただしスマートフォンでは、詐欺の手口が悪質化している。スマートフォンのアプリを使い、電話番号などを盗みとって脅しの材料にしたり、高額請求の画面をトップに出し続ける、などの手口がある。

不正アプリで電話番号取得し脅し、請求画面を繰り返し表示


Androidのアダルト詐欺アプリの例。電話番号を読み取って、不正な料金を払えと脅しの表示を出し続ける(トレンドマイクロによる)
 国民生活センターでは、昨年の9月に「アダルト情報サイトの相談が2011年度の相談第1位に ――インターネットにアクセスできる機器すべてに注意が必要――(PDF文書)」という注意喚起を出している。それによると、以下のような相談事例がある。

【事例1】連絡先を抜き取った可能性のあるスマートフォンのアプリ
スマートフォンで、アダルトサイトのサンプル動画が見られると思いアプリをインストールした。数分間動画を見た後に、登録料9万円を請求する画面が出たが、不当な請求だと思い無視していた。しかし今日サイトから「登録料を払うように」とスマートフォンに電話が来た。「支払うつもりはない」と断ったが、サイトに電話番号などを教えた覚えはないので不安になった。インストールしたアプリはすぐに削除している。どうしたらよいか。(20歳代男性、給与生活者・東京)

 これは明らかにAndroidの不正アプリを使ったものだ。2012年はこの手の「アダルト架空請求アプリ」の被害がとても多かった。以前の記事「電話番号を読み取られるAndroidワンクリック詐欺」、「Android架空請求の詐欺アプリ出現」で詳しく取り上げているが、不正アプリによって電話番号が詐欺業者に知られてしまっているのだ。

 この不正アプリは以下のように動作する。

・動画再生と称して不正アプリをダウンロード・インストールさせる
・不正アプリが端末の電話番号やGPS位置情報を読み取る
・電話やSMS(メッセージ)で高額請求
・アプリが常駐して、繰り返し高額請求画面を出し続ける

 つまり、不正アプリを入れた時点で、あなたの個人情報が詐欺業者に渡ってしまっている。パソコンや携帯電話のアダルト詐欺ではあり得なかった事態が、スマートフォン時代になって起きているわけだ。

 知識のない人が見ると、「電話番号が知られてしまった。怖い」「請求画面が繰り返し出るので恥ずかしい」などと思って、料金を払ってしまうかもしれない。また、「規約に同意したから」といって脅しをかけてくるので、中高校生が怖がって払ってしまった例もある。

「絶対に払わない」「完全無視」がルール

 たとえ規約に同意していても、払う必要はない。規約自体が不当なものであれば、認められないからだ。高額な不当請求に対しては、絶対に払わないこと、連絡は無視することが重要だ。対策をまとめておく。

・アプリは公式サイトのみでダウンロードする
スマートフォンのアプリは、Google Playなどの公式サイトからダウンロードする。それ以外のサイトではダウンロードしない。

・アダルトや芸能関連の無料サイトは詐欺を疑え
アダルトや芸能関連のサイトが無料なのは、何らかの裏があると思うこと。詐欺を疑ってアクセスしないのが一番だ

・たとえ身に覚えがあっても反応しない
サイトを見たなどの行動に身に覚えがあっても、払う必要はない。請求が電話で来るなどしつこいようであれば、国民生活センターに相談しよう

・不正アプリ対策のセキュリティーアプリを導入する
スマートフォン初心者は、有料にはなるが不正アプリをシャットアウトするセキュリティー対策アプリを導入する

 以上のことを頭に入れておこう。特にスマートフォンを初めて使う中高校生の親御さんは、子供と話し合って、詐欺に遭わないように警戒してほしい。(ITジャーナリスト・三上洋)

(2013年2月8日 読売新聞)