藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

インフラ五十年〜。

木構造物の寿命は約50年。
例の笹子トンネルはまだ35年だったという。
東京オリンピックの年に一気に整備が進められたというインフラは、自分と同い年だった。
よってそろそろガタが来ている、ということらしい。(嘆)

人間もインフラも似たようなものである。
それはともかく。

道路などの社会資本。実に750兆円。
これを更新するには11年度から60年度までの50年間に約190兆円の費用が必要になるという。

実に年間4兆円という維持費は、税収の十分の一を超える。
高度成長期の負の遺産は、今の経済縮小時代にはこうした「維持費倒れ」をも引き起こす。

いま都心に立つ超高層ビル・マンション群も同様の問題にいずれ直面するだろう。
本当に数百年以上にわたって継続性、ということについては耐久性や維持コスト面などからも検証する必要があることなのである。

まだまだ社会資本が「上向きの充実」しかなかった時代と違い、まともに維持してゆくコストすら足りなくなってゆくのが縮小する社会なのだと実感する。
年金の世代間扶養が維持できなくなる現象と全く同じ「資本のショート」である。

インフラの拡張すら、もはやその維持コスト抜きに箱ものだけを作る時代は終わってしまった。
成熟する社会の次のテーマではないかと思う

疲労列島、試練の48.9歳 日本の都市は戦えるか
都市力再生〜綻ぶインフラ2013/2/8 14:54日本経済新聞 電子版

経済再生に向け動き出した日本。本格回復に向かうには主役である企業が活力を取り戻すことが必要だ。しかし、その企業が集積する都市とそれを取り巻くインフラには今、綻びが目立つ。日本経済新聞社が推計した日本の都市年齢は人間に置き換えると48.9歳。働き盛りを過ぎ疲れがたまる年齢だ。日本の道路は、トンネルは、オフィスは戦えるか――。日本の都市力を点検、強い都市に造り替えるための道筋を探る。

長崎市長崎空港大村市)を結ぶ長崎自動車道。空港に差し掛かる手前の高架橋「鈴田橋」の下り線で今年5月、「コンクリートがん」の摘出手術が始まる。
 コンクリートのがんとは内部の鉱物がセメントや雨水と反応して膨張、ひび割れを起こすアルカリ骨材反応のこと。放置すれば浸入した水で鉄筋がさび、いずれ「橋は落ちる」(業界関係者)。

■特殊樹脂で修復
 工事を請け負うのは準大手ゼネコン(総合建設会社)の三井住友建設帰省ラッシュが始まる8月までに問題となる箇所を切除、特殊樹脂でコーティングした鉄筋を埋め直して修復する。
 鈴田橋は1980年の完成。使用開始してからすでに30年以上が経過している計算だが、この鈴田橋の年齢は日本の橋の平均年齢でもある。国土交通省が把握している全長15メートル以上の橋梁は約15万7千本あり完成からの経過年数は平均31年だ。

専門家などによると一般に土木構造物の寿命は50年。日本の橋梁が寿命に到達するには時間の猶予はあるが、鈴田橋のように風雨と潮風にさらされる厳しい自然環境のなかにある場合は寿命は短い。笹子トンネルも開通してからまだ35年だが昨年、天井が崩落、9人の死者を出す惨事を招いた。都市をつなぐ橋梁は今、危機を迎えつつある。
 東京・新宿の大久保三丁目――。その地下で今、急ピッチで下水道の若返り工事が進む。大日本土木岐阜市)が手掛ける下水道工事で、下水道管の内側から補強テープを巻き付ける「SPR」と呼ばれる工法だ。
 補強テープを使う工法は東京都下水道局が民間企業と協力し自ら開発した。この工法だと下水道に水を流しながら工事を進められ、地上の道路を通行させながら工事ができる。工期もコストも短縮できる。
 ただ、これで東京都の下水道問題が片付くわけではない。東京の下水道は23区だけでも1万6千キロメートルあり、シドニーと東京を往復する距離。64年の東京五輪に合わせて整備が一気に進み、その分老朽化もいっせいだ。
 実際、すでに1割が法定耐用年数の50年を突破、20年後には50年超えの割合は5割に達する。なかには神田下水(神田駅西口周辺)のように明治時代の1884年に整備され、129年たった現在でも現役として働く下水道すらある。

東京都も建設費の半分にあたる年700億円を投じ修復作業を進めるが、それでも2011年度は760カ所で下水道施設が原因の道路陥没が発生した。国連の環境アドバイザーを務める吉村和就グローバルウォータ・ジャパン代表は「下水道の老朽化対策は待ったなし」と指摘する。

■社会資本750兆円
 建設経済研究所の推計によると道路などの日本の社会資本ストックの総額は約750兆円(10年度時点)。これを更新するには11年度から60年度までの50年間に約190兆円の費用が必要になるとも言われ国などの手に余り始めている。
 東京・新宿副都心の高層ビル群――。そのなかで東京建物などが保有する超高層ビル新宿センタービル」に最近、異変が生じた。10%の大台を割れなかった空室率がここに来て一気に5%台にまで低下したのだ。

 理由は耐震性能。同ビルは1979年の完成だが、大成建設が288台の特殊制振装置を設置するなど数十億円を投じて09年に改修、耐震性能を高めてきた。東日本大震災時にも対策が不十分な高層ビルに比べると大きく揺れる時間が半分になるなど成果が表れ、周囲に安心感が広まった。

 ただ、これはむしろ例外。日本不動産研究所によると、全国のオフィスビルは5853棟あるが、震度6強から7程度までの大規模地震に耐えられる新耐震基準のビルは6割強。残りの2000棟余りは震度5強程度までを想定した旧耐震基準で建てられ「万が一の場合は倒壊の恐れもある」(業界関係者)。

 100年単位の時間をかけ緩やかに都市形成が進んだ欧州に比べると日本の都市化の歴史はせいぜい半世紀程度。それだけに更新需要は今、一気にのしかかる。窮乏する国や地方財政をこれ以上傷めず、日本の社会インフラをどう再生するのか。知恵と工夫が試される。

日経産業新聞2013年2月8日付]
日経産業新聞の創刊40周年企画です。第1部は8日付の紙面から3回にわたって連載しています。