藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

経験知マップを想像してみよう。

子供のころは、まず親との経験。
そして学生の経験。
受験、進学などの経験。
そして大学や専門学校などに行く。
思うにこの辺りまでは非常に片寄った経験値しか備わらない。

そして、今の年でしみじみ思うのは「その後の経験値」も怖いほど偏在するということである。

五十年の人生でザッと振り返ってみたときに自分の経験値はどれほどのもの、つまり「経験知はどのようなものか?」というようなことを想像することが多くなった。

それは、もう「これから何でも、いくらでも経験できるさ」という強がりがもはや通用しない年齢であることをリアルに示している。(嘆)
それはともかく。

よく就活中の学生さんから「どのようなキャリアをつけるべきですか?」という質問を受けるが、それに「これこれこういう資格と、こんな経験と、こんな活動を・・・」という風には答えにくい。
何か「就職のためのキャリアありき」という感じがして、何か本筋ではない気がするのである。

これが「私はどんな経験をすべきでしょうか?」という質問ならとても良い。
サービス業や製造業のアルバイトをしてみるのもいい。
接客の難しさやマニュアルの役割や、また工場でのもの作りの様子や、いわゆる「商売のしくみ」にも触れることができるだろう。

学問としては経済学や金融、保険や文化に触れるのもまた違った経験値をもたらすだろう。
外国人とは英語でコミュニケーションはできた方がいいし、海外のネットにもすんなりアクセスできる方がさらに世界が広がるだろう。

そうして仕事や、学問や、文化に触れることで(よくいう自分探し、ではないが)より「自分のやりたいこと」とか「世の中はどんな原理で動いているのか」という重要な設問にも近づいていくことになるのである。

自分を振り返っても、ずい分いろんなものを齧ってきたと思う。
パチンコ、学生、アルバイト(運転手、家庭教師、接客、半導体工場)、プロのバンド(手伝い)、サラリーマン、プログラマー、営業、人事、音楽、起業、貸金、借金、友人、女性、と。でもまあ「普通の人が通るような道」といえばそれまでで、それでも知らない世界に触れるのは面白く、厳しいものだった。

そうして起業してからの経験はもっともシビアで、本気でお客さんに怒られることもあったし、また本気で下請けさんに怒ることもある。

自分が連帯保証してお金を借りたり、また貸したお金や仕事の代金が焦げ付いたこともあり。
また経営の姿勢について、先輩から厳しく叱責されたこともある。
会社のスタッフは経営者に情熱のないことが見て取れると、とたんに退職してしまうし、また新規採用も中小企業は大変苦労する。

そうした意味では、実務での経験はアマチュアのアルバイト時代に比べれば値千金、やはり「本番の経験知」に勝るものはないと思うが、その本番をどこで過ごすか、というのは若い人のこれからにとっては非常に重要なテーマである。
(つづく)