藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

生きる動機。

yomi dr.より。
1型糖尿病になった少年の物語。

ぼくは、ある日突然治らない病気になる辛さを知っています。そして、病気になってからいろいろな人に支えられてきました。ぼくも、多くの病気の人を助けてあげられる「医師」になります。

自らが、その道の専門家になるうえで、これ以上の動機があるだろうか。
そうした「職業の動機」こそ、あらゆる職種で若者に感じてもらいたいことそのものである。

少年の作文の題名は「先生、いつもありがとう」。
弱冠の小学生にせよ、その人間性、心意気は伝わってくるものである。
職業はそうした「動機のかたまり」にしなければ、これから先にも目指せる人がいないくなってくるのではないだろうか。
まず「目指したい先人」を我々は追い求めねばならないのではないだろうか。

第31回「心に残る医療」体験記コンクール
[小学生の部・優秀賞] 先生、いつもありがとう
谷川 和紀(はせがわ かずき) 愛知・小学6年生

ぼくは、一年生の時に1型糖尿病になりました。1型糖尿病はすい臓の病気で、体からインスリンが分泌されなくなるので、生涯インスリン注射をしないといけません。主治医の先生は、「注射さえきちんとすれば、あとは他の子と何ら変わらないんだよ。」と言ってくれます。今は、毎日4回以上、自分で血糖測定してインスリン注射をしています。給食の前にも、教室で血糖測定と注射をします。学校では、クラスの友達といっしょに勉強したり遊んだりしています。毎月、主治医の先生の診察を受け、血液と尿の検査をします。その時、学校の話をしたり、時々ぼくの飼っているカブトムシの話をしたりもします。何でも話ができる、スーパードクターです。

 昨年、歯ぐきにのう胞ができました。乳歯と新しく出てくる永久歯の間にあるため、手術で取り除くことになりました。夏休みに歯科大学附属病院に入院する予定になりました。しかし、入院前日に病院から電話があって、急に入院も手術も中止になりました。1型糖尿病のために、手術中に高血糖低血糖になる心配があるからだそうです。どうして1型糖尿病だとできないんだろう、と悲しくなりました。そんな時も主治医の先生は、「附属病院の先生に、きちんと話ししたんだけどなぁ。」と相談にのってくれました。

 その後、総合病院を紹介されて、口腔外科と内分泌科の先生の診察を受けました。外来でできる手術だけど、血糖が心配なので一日だけ入院することになりました。

 入院の日の朝、お父さんとお母さんと病院に行き、診察を受けました。先生は「心配ないよ」と言いましたが、ぼくは「やっぱり手術は怖いなぁ」と思いました。その日の午後に手術を受けました。手術中、先生はディズニーランドなどの楽しい話をしてくれて、怖さも半分になりました。無事手術が終わって、口の中から血が出てきましたが、体調はよかったです。先生は何度も病室に来て、「大丈夫だよ」と言葉をかけてくれました。ほかにも、先生の趣味のトライアスロンのことなども話してくれました。すてきな先生でした。

 この病院は「ぼくが生まれた病院」と、お母さんから聞きました。この病院で、ぼくのことを心配してくれるやさしい先生に手術してもらえて、よかったです。お父さんから、「附属病院の先生も、ぼくのことを考えて総合病院を紹介してくれたんだよ」と話してくれました。多くの先生がぼくのことを考えてくれているんだと思うと、うれしくなりました。

ぼくは、ある日突然治らない病気になる辛さを知っています。そして、病気になってからいろいろな人に支えられてきました。ぼくも、多くの病気の人を助けてあげられる「医師」になります。1型糖尿病に負けず、「将来の夢」が実現できるよう、勉強や運動などを精いっぱい頑張っていこうと思います。