藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

これからの十年について

日経のここ最近で一番しっくりくるマクロの見通し記事より。
過去の増税後の推移を引き、これからの長期不況への警鐘を鳴らす。

(中略)しかし増税後の5〜7月は2万円台を回復し、堅調に推移しています。
株価が下げに転じたのは8月以降で、背景にはアジア通貨危機山一証券北海道拓殖銀行の経営破綻がありました。12月には一時1万5000円を割り込み、その後1万3000〜1万8000円前後のボックス相場が2000年まで続きます。それから12年にかけ、1万円を割り込む場面が増える長期低迷期となるのです。

今度のシナリオは前回とは違う、と言い切れるだろうか。
というより、GDPの低下とか人口減とか、国の債務残高とか、前回以上によろしくない環境だと思うのは自分だけだろうか。
世界全体の金融資産の量は、世界各国の国債という手段を使って確実に前回よりも膨れている。
金融緩和が麻薬のように常態化し、それでもチキンレースのようにどこの国も「最初の不況くじ」を引こうとはしない。

自分たちの生活に焦点を当ててみれば、金利の上昇に備えておくとか、貯金を現金だけに偏らせないとか、より「実体のあるもの」に注意を払って生活基盤を見直すべきではないかと思う。
高級賃貸マンションに住んでいた知人は、「いよいよ不穏な感じがするので、都心の便利な中古マンションに住み替えた」とのことである。
賢明な判断ではないかと思うがどうだろうか。

消費増税は入り口 あなどれない長期株安のリスク
経済ジャーナリスト・西野武彦

2014/4/3 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 株式市場が注目の新年度に入りました。最大のポイントは、4月から消費税率が8%に引き上げられたことが個人消費や景気、企業業績、株価にどんな影響を与えるかです。

 消費税が5%になった1997年の増税時には景気悪化を招き、日経平均株価も大きく下落。日本経済はマイナス成長に陥りました。サラリーマンの平均年収も低下の一途をたどり、デフレに拍車をかける結果となったのです。

 歴史は繰り返す、といいますから、私たちは97年の消費増税の教訓を頭に入れておくべきでしょう。もちろん当時と今とでは株価水準も国内外の環境も、細かくみれば違いがあります。しかし我々人間自身が同じような行動をとってしまうことも多いので、やはり歴史に学ぶことは必要なのです。

 いまの株式相場で気になるのは、海外の悪材料も多いなかで消費増税の影響を軽くみて強気の株価予想を打ち出している市場関係者が目立つことです。強気の大半は「そうあってほしい」という願望であって、純粋な予想とは大きくかけ離れていることが少なくありません。個人投資家は市場の予想をうのみにせず、最悪の事態も起こり得ることを想定したうえで自分なりの投資戦略を立てていくことが肝心です。

 日本株は97年前後にどう動いたのか。2月20日付「消費増税相場の足音 97年に学ぶリスクシナリオ」で触れましたが、改めて簡単に振り返ってみましょう。日経平均は96年6月に2万2666円の高値をつけた後、97年3月末までは一時1万8000円を割り込む場面もありました。しかし増税後の5〜7月は2万円台を回復し、堅調に推移しています。

 株価が下げに転じたのは8月以降で、背景にはアジア通貨危機山一証券北海道拓殖銀行の経営破綻がありました。12月には一時1万5000円を割り込み、その後1万3000〜1万8000円前後のボックス相場が2000年まで続きます。それから12年にかけ、1万円を割り込む場面が増える長期低迷期となるのです。

 こうしてみると、消費増税心理的な影響だと思われる期間は比較的短いことが分かります。長期にわたる株価低迷をもたらしたのは、国内総生産(GDP)のマイナス成長や失業率の上昇、所得の低下、デフレ、国の借金増加といった増税以降の経済実態の悪化だといえるでしょう。

 今回もこれと同じようなパターンをたどると仮定すれば、5月ごろに1万6000円近辺まで戻る可能性はあります。しかしその後は年後半から下げに転じ、1万3000円を割り込む場面もありそうです。

 97年の増税後の株価下落は、アジア通貨危機や日本の不良債権問題によって加速した、という人もいます。しかしそれが原因なら、マイナス成長や賃金の低下があれほど長期にわたって続くことはなかったはずです。

 では日本株に影響を与えそうな今後の材料はどうでしょうか。悪材料としては消費増税による個人消費の低迷、増税でも増え続ける国の膨大な借金、外国人投資家の大幅な売り越し、米国の量的緩和縮小や新興国不安、中国の理財商品のデフォルトなどがあります。尖閣問題をめぐる中国との局地的な軍事衝突や、北朝鮮の核問題などの地政学リスクも無視できず、97年と比べても決して楽観できる環境ではありません。

 もちろん好材料もあります。日銀による追加緩和や5.5兆円の景気対策法人税引き下げ、公的年金の株式運用拡大などです。しかし例えば、景気対策に甘い期待は禁物です。前回の消費増税後には98年4月に16兆円、同11月に20兆円、99年11月にも18兆円もの資金が投入されましたが、効果はほとんどなかったのです。

 その理由として考えられるのは、消費増税は不況の最大の原因である需給ギャップ、すなわち需要不足・供給過剰をさらに拡大する効果をもたらすからです。需要不足を解消するためには、消費者の懐を温めて消費意欲を高める必要がありますが、消費増税はその逆の効果をもたらします。一方、景気対策に使われる公共投資や法人減税、金融緩和策などは供給サイドを強化し、供給過剰を加速してしまいます。

 このため、いつまでたっても需給ギャップは解消できず、不況と決別することができない状況が続いているのです。これは日本だけでなく、主要先進国でほぼ共通する問題です。

 安倍晋三首相の経済ブレーンである浜田宏一エール大学名誉教授も、4月1日付の日本経済新聞朝刊「経済教室」で、「個人の意見ではあるが、2%のインフレ目標を最優先にこだわるよりも、デフレギャップの縮小に主眼を置くほうが重要であろう」としています。

 安倍政権は供給サイド(企業)を支援することには熱心な一方、需要サイドには負担を強いる傾向があり、需要の縮小を招いています。また今春の労使交渉で企業に賃上げを強く促してきましたが、それに応えられるのは一部の企業だけで、賃金やボーナスが上がると期待しているのは働く人たちの2割以下という世論調査結果も出ています。

 公的年金で株式による運用比率を高めても、それが外国人の日本株売りの受け皿になるわけではありません。公的年金はその資金の性質上、株の買い支えなどに利用されるべきものではありません。そんなことをすれば運用成績が悪化して、公的年金制度を維持し続けることが難しくなるからです。

 消費増税は目先の株価より、日本経済や株価に長期にわたって影響を与える可能性があります。投資家は短期の上げ相場や持ち直しに浮かれることなく、慎重に見極めて投資判断する姿勢が求められるのです。

<筆者プロフィル> 1942年愛媛県生まれ。中央大学法学部を卒業後、株式専門誌などの編集・記者を経て、87年に経済ジャーナリスト・経済評論家として独立。証券、金融、不動産から経済一般まで幅広い分野で活躍中。的確な読みとわかりやすい解説に定評があり、著書は90冊を超えている。「もっともやさしい株式投資」「『相場に勝つ』株の格言」「世界で最も読まれている株の名著10選」(日本経済新聞出版社)などがある。