藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

総記録社会の中で。

運送業界ではいち早くドライブレコーダーが普及しているという。
数百万台が蠢(うごめ)く輸送手段に「もれなく目がつく」ということの意味は大きい。
「デジタル記録の網」は確実に、しかも網羅的に浸透している。
もう本当に人気のない農地とか山林とか、あるいは海の上くらいしか「死角」はなくなってきている。
監視社会ともいわないこうした「モニター社会」が急速に浸透してきて、近いうちにはもう「予定型の犯罪」というのは実行しにくい社会になるに違いない。
空き巣とか、ひったくりとか、あるいは交通事故とか、これまでは「どちらかというと捕まりにくいかも」という種類の犯罪は、「後追いすればほぼ全部が追跡できる」という社会になる。

ネットワーク社会でも同様。
ネットワークの匿名性はどんどん縮小され、「あえて匿名性を重んじるエリア」を除いてはリアル社会どうように顕名(名前を出すこと)こそが信用になる、という常識に向かっている。
混沌期のネットの匿名性は、ネットの重要性が増すにつれて失われつつあり、だからリアル社会の一部にっているのである。

近未来にはおよそ「死角が生じる」という部分には悉く「デジタル記録」の恩恵が浸透し、むしろ記録のない行為のほうが珍しくなるかもしれない。
いつ、自分のどのような所作が録画されているかもしれない、という「居住まいの正しさ」が、過去数百年の日本文化を経て、今また復活しているようで面白い。

それにしても、為政者でも実業家でも、「とりあえずの方便が通用しない時代」というのは、実に神経を使うやり直しの効きにくい時代になってきたものである。
けれど、こうしたデジタル技術の浸透がまた「その先」の発展をもたらしてきたのも今のIT技術の宿痾でもあるのは明らかで、だからあらゆる利用分野を考え、チャレンジしていきたいと思うのである。

ドライブレコーダー装着車増加 走る防犯カメラ

走行時の車の内外の様子を撮影する「ドライブレコーダー」(DR)の装着車が増えている。タクシーや路線バスはすでに5割を超え、一般車にも普及しつつある。事故の証明だけでなく、犯罪の証拠にもなり、警察も期待を寄せる。

 夜の交差点、タクシーが青信号で右折し始めた。突然、無灯火のミニバイクが闇の中から現れた。対向車線を直進してきたらしい。その瞬間、ドン!

 大阪市内で昨年、実際に起きた事故だ。多くの場合、相手は「自分に落ち度はない」と主張するが、この事故は映像のおかげで正確な状況がわかった。

 走行時の様子を一定時間、自動的に録画し続けるDRは、まず運送業界で普及した。国土交通省によると、2012年度時点の普及率は、乗り合いバス60%▽タクシー54%▽トラック24%▽貸し切りバス23%となっている。

 カー用品店でも売り上げを伸ばしている。オートバックスのDRの売り上げは、12年に前年の4倍超と急増。13年も前年比で倍増したという。大阪市浪速区オートバックスなにわ店では「話題のドライブレコーダー」と書いたのぼりを立てて販売に力を入れる。画質や容量などによって価格は8千〜2万5千円。売れ筋は1万円前後だ。イエローハットでも12年度に前年度の3倍以上売れた。

 この時期の急増について複数の業者が指摘するのは、京都・祇園で19人が死傷した12年4月の事故だ。暴走車を撮影したタクシーのDR映像がテレビで繰り返し流れ、その後、売れ行きが伸び始めたという。

 事件の証拠となるケースもある。大阪府警によると、駐車車両に当て逃げした車を映像で特定したり、動画投稿サイトの映像で速度違反を検挙したりした。大阪市の大手タクシー会社は全車の約600台にDRを装着している。09年に運転手が車内で首を切られ、売上金を奪われた事件がきっかけだ。

 警察庁は昨年、全国の警察本部に地元のタクシー、バス、トラック協会と事件・事故の発生時にDRの映像を提供する協定を結ぶよう要請した。大阪府警もパトカーや白バイに装着している。「走る防犯カメラ」(府警幹部)の普及で、検挙増だけでなく、犯罪の抑止効果にも期待している。(吉浜織恵、高野裕介)