糸井さんのブログより。
初対面の人によく自分たちは質問する。
「ご出身は?」「学生時代は何を?」「実家はどんな職業で?」
なんでこんなことを聞くのかというと「相手に対する興味」があるからである。
第一印象の良い異性のことを知りたい、という感覚に近い。
だからできるだけ「その人の外的環境」を知ることでその人を知ろうとするのである。
けれど一方。
「あなたの政治嗜好はリベラルですか、保守ですか」とか
「あなたの仕事に対する価値観は何で表現できますか」とか
「異性についての考えはどのようなものですか」というような質問はあまり出てこない。
初対面のお互いは、いろんな会話を通じてお互いを知ろうとするのである。
興味のない相手には質問は出てこない。
「気になるあの子」だからこそ色々と聞いてみたいのである。
歴史とか宗教とか、尊敬すると人とかポリシーとか。
好きな作家とか音楽家とか。
その人を知る手がかりは色んな所にあるものだ。
何かそういう「手がかり」を探して自分たちは未知の人との会話に臨んでいるのかもしれない。
そして「どんな質問を投げかけるか」ということは自分自身を実は晒していることでもあるのだ。
「こちらから投げかける会話のとっかかり」というのは自分にとっても案外重要な物なのではないだろうか。
・いわゆる芸能インタビューなどで、
「好きな花はなんですか」だとか、
「お好きな食べものを教えてください」
なんてのがあって、こういうのは、
いわゆる「しょうもない質問」の象徴のように語られる。
たしかにねぇ、取材に来た人が
「好きな食べものはなんですか?」と質問してきたら、
ちょっと脱力してしまうこともあるだろうよ。でもね、わし、思うんですよ。
これ、質問そのものがくだらないというわけじゃない。その人がどういう花を好きなのか。
また、どういう食べものを好きなのか。
好きな異性のタイプというのはあるのか。
そういうことは、その人をよく表わしていると思う。
本居宣長が、どれほど桜を好きだったか。
亡くなってからさえも、じぶんのお墓に、
どういう桜をどんなふうに植えてほしいかについて、
指示までしていたという。
池波正太郎が、好きな食べものについて
あれこれの文章を書いてなかったら、
まったくちがう人に見えていただろう。
じぶんの好きな花ってなんだろう。
わたしは、どんな食べものが好きなのかな。
どういう女性に心惹かれてしまうのだろうか。
そんなふうなことについて、
じぶんと話し合ったことのある人のほうが、
「考えたこともないなぁ」という人よりも、
親しみを持ってつきあえるような気がするじゃないか。
だからね、話す状況があるならば、
質問もしたほうがいいとさえ言えるだろう。
じぶんにも、話す相手の人にもね。
え、ぼくですか?
花はたいてい好きなんですけど、香りでバラだなぁ。
食べものもいろいろ好きですが、総合点でコロッケ。
女性は、もちろん、妻に似た人でしょう。
ほら、ちゃんと用意しているんですよ。