藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

著作物との関係。

本棚の様子はその人の"なり"や思想を表わすという。
確かに端的にその人の嗜好とか、興味の分野が集まっているには違いない。
それはともかく。

四十を過ぎたころから急に物の所有に情熱を失い、同時に「消費そのもの」にもあまりワクワク感を感じなくなってきている。
別にそんなに多くを所有したり多額の消費をした経験もないのに。
それもともかく。

物の所有について、最後に悩ましいのが書籍のこと。
立花隆さんは蔵書のためにビルを一棟買われたそうだが、何万冊もの本を維持しようとすると究極にはそういうことになる。
何万もの書籍を身近に置いて、果たしてこの先「触れ合う機会」は訪れるだろうか。
同様の理由で、一度買った本は捨てにくい。
また出会うことがあるかもしれないからだ。

漫画を多数所蔵する友人は先日、真剣に「全ての漫画を電子書籍にしようか悩んでいる」と言っていた。
自宅の自室は胸の高さくらいまでの摩天楼のように積まれた漫画の塔で埋まっているから深刻だ。
それでも漫画か否かを問わず、蔵書をすべて電子化して処分したという人は周囲にはいない。
書籍がリアルの自室の本棚に並んでいる、ということにはアナログの捨てがたい情緒や縁があるのだろうと思う。
増えていく一方の本にため息をつきつつ、もうしばらく付き合い方を考えたい思う。

本を読んだらアプリの棚へ タイトルや感想記入
他人の好みのぞける
2015/9/24付日本経済新聞 夕刊
 夏の暑さも和らぎ、夜長を楽しむ読書の秋がやってきた。こんな季節にぴったりなのが、様々な機能で読書を助けてくれるスマートフォンスマホ)のアプリだ。電子書籍にとどまらず、読書記録に交流機能などデジタル技術がもたらす新たな読書体験が広がりをみせている。

下垣皓大君のアプリ上の「本棚」はどんどん本が増えていく
下垣皓大君のアプリ上の「本棚」はどんどん本が増えていく
 「読んだ本で本棚がいっぱいになるのが楽しい」。都内に住む小学1年生の下垣皓大君は、お母さんと一緒に読んだ本の記録をつけるのを日課にしている。皓大君が話すのはアプリ内の本棚のこと。スマホ画面の本棚は、絵本の表紙でカラフルに埋め尽くされている。

■目指すは読書カード
 皓大君が使う「読書管理ビブリア」(無料)は本のタイトルや感想を記録するアプリだ。管理者の内田京介氏は「図書館にある手書きの貸し出しカードのように、読書が楽しくなるアプリにした」と開発への思いを語る。

 アプリはシンプルで使い勝手が良いと評判だ。タイトルや著者名による検索か、カメラを使ったバーコードの読み取りで簡単に本を登録できる。まだ漢字が読めない皓大君も、お母さんのスマホカメラで、器用に本を登録していく。図書館で借りた本や処分する本も登録しておけば、何を読んだか忘れてしまうこともなくなる。親しみやすい妖精のインターフェースもあいまって、子どもから大人まで使える読書記録アプリになっている。

 読書記録をつけるなら書店が手掛けるアプリも使いやすい。紀伊国屋書店の公式アプリ「紀伊国屋書店Kinoppy」(無料)は本を買う、読む、記録するという従来別々のアプリが担っていた機能を集約した。紀伊国屋書店から本や電子書籍を買う機能はもちろん、電子書籍リーダーの機能も備えるため、商品を購入してすぐ読み、アプリ上の本棚へ「記録」できる。


 「人の本棚をのぞきたい」。そんな読書家の好奇心に応えるのが、GMOペパボグループのブクログ(東京・渋谷)が手掛けるアプリ「ブクログ」(無料、一部情報は有料)。ブクログのデータベースには85万人の会員と700万件超の書評が登録されている。利用者がお気に入りの本の読み手を見つけると、アプリ上でその人の本棚(読書記録)をのぞける。作家など著名人を含め、多彩な本棚を通じて読書の幅を広げられる。

 オンライン上での読書会をイメージした「ブクログ談話室」では、利用者が「泣ける本」や「大切な人に贈りたい本」など好きなテーマに沿って意見を述べ合う。取締役の大西隆幸氏は「今後も利用者同士が交流しながら、読書の世界を広げる仕組みを作っていきたい」という。

■発売前から要約版
 「スキマ時間を有効に活用しよう」。フライヤー(東京・渋谷)が開発した「フライヤー」(無料、一部情報は有料)は忙しい現代人に向けた本の要約アプリだ。たとえば「21世紀の資本」や「7つの習慣」などの大著も、10分程度で読める文章に要約されている。アプリで要約版から読み始めることで「通常は読まないような本にも気軽に触れてほしい」と大賀康史代表取締役は語る。

 一部の本は発売前から直後に要約がアップされるので、「購入するか否かの判断にも使える」(大賀氏)。たとえば「21世紀の資本」は日本語版の発売2週間前に要約を発表した。要約の書き手は編集者やビジネスコンサルタントなどその道のプロ。出版社の担当者もチェックするなど、読み物としての質の高さを重視している。

 活字離れが指摘されて久しいが、今回紹介した読書アプリはいずれも利用者の増加が続いている。デジタル技術を通じて読書の魅力に改めて気がつく人が、確実に広がっているようだ。

(証券部 小森谷有生)

日本経済新聞夕刊2015年9月24日付]