藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

実利志向は必ずしも"正解"ではない。

よくこれまで「自分もIT業界にいながら、どうも業界の流行や(ゲームなど)利用に肩入れできない」と書いてきた。
今もその思いは変わらないが、でも「技術」とはそういうものなのかもしれない、とも思った。

昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授は「細胞の仕組みに関する基礎的な研究が認められた。だれもやらないようなこと、どんな応用法があるかわからないようなことにずっと取り組み成果を出してきたのはすごいことだ」と話している。

基礎研究は、その予算を確保する団体や企業の志向に左右される。

「儲からないかも」とか「役に立たないかも」というのはビジネス社会では"NGワード"である。
けれど、そのビジネス社会も「そのスタンス」では長期の発展は覚束ない。
時代はだんだんそうなりつつあると思う。

企業といえど、

「ひたすら面白味のあること」とが「将来性がありそうなテーマ」に対してどこまでリソースを割いて投資できるか。

古の日本や外国の成功企業も、実はこうした「危ない投資」の賜物ではなかったか。
変に企業経営が分析され、合理化されてしまったから「一見、目的のはっきりしない投資」については厳しいのが常識になってしまった。

「怠慢」と「基礎研究」が同列に扱われてしまっている現在は、企業経営者の「目利き」が鈍っていることの証ではないだろうか。

「これは(ビジネスはともかく)手掛けておくべき」とか「この話は(白黒つくまで)追求しよう」という判断は経営者やリーダーが積極的に下していかねばならないと思う。
リーダーの役割って「それ」でしかないのではないだろうか。
規定のルールどおりの話の判定は、もう人間がしなくてもいい時代がやってきている。

独創の研究 花開く 大隅氏、誰もやらぬ分野に没頭

2016/10/4 1:30

 ノーベル生理学・医学賞に決まった大隅良典氏が解明したオートファジーは、細胞が不要なたんぱく質をいったん分解し、再び必要なたんぱく質を作り出すリサイクルの仕組みだ。今でこそ世界的に注目されるようになったが、大隅氏が研究を始めたときには、ほとんど注目されていない分野だった。

 早熟の天才ではない。米国留学や東京大学助手を経て1988年に43歳で東大助教授となり、1人で研究室を構えた。「誰もやっていない分野」という理由で、生物実験のモデル生物である酵母たんぱく質を分解する仕組みの研究をテーマに据えた。

 細胞は飢餓状態になると、自身の中にある不要なたんぱく質ミトコンドリアを分解し、新たに必要なたんぱく質を作る。この仕組みを、実際に観察できないかと考えた。

 酵母を栄養が足りない状態にして顕微鏡で観察し、内部にたんぱく質を取り込んだ小さな粒がたくさん生じていることを見いだした。この粒が酵母の中にある液胞(液体が詰まった袋)と融合すると、たんぱく質アミノ酸に分解することがわかった。「大変感動し、何時間も顕微鏡を見ていた」と大隅氏は振り返る。

 オートファジーにかかわる遺伝子を調べるため、さまざまな遺伝子に突然変異をおこした酵母を約3000種類つくり、その機能を調べた。「ATG1」ほか計14個の遺伝子がオートファジーに関連するとつきとめ、93年に論文発表した。

 酵母を使った地味な研究が花開き始めたのは、岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所に移ってからだ。医師の水島昇・現東京大学教授や哺乳類に詳しい吉森保・現大阪大学教授が研究に加わり、大隅氏とともに哺乳類の細胞でもオートファジーが起きていることをつきとめた。

 水島氏は哺乳類のオートファジー関連遺伝子を10個以上みつけた。2000年にはたんぱく質を取り囲んだ膜を光らせることで「オートファジーが目に見える」マウスも作った。またオートファジーができない遺伝子組み換えマウスをつくり、オートファジーが胎児の成長などにも関係していることを示した。

 師である大隅氏のことを「根っから研究好きの学者だと思う。役に立つことを前提にせず、本質的に面白いことを堂々とできる人」と評する。

 吉森氏は哺乳類におけるオートファジーの仕組みを研究し、細胞内に侵入してきた病原菌を除去する作用を持つことなどを明らかにした。今年9月には、オートファジーが正常に働かなくなることで脂肪肝が起こることを動物実験で突き止めた。

 大隅氏が研究を始めたころ、オートファジー関連の論文は年間10件程度しかなかった。だが大隅氏の研究をきっかけに次第に注目が集まるようになった。今では論文は年間3000件を超え、国際学会での発表も年々増えているという。

 昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授は「細胞の仕組みに関する基礎的な研究が認められた。だれもやらないようなこと、どんな応用法があるかわからないようなことにずっと取り組み成果を出してきたのはすごいことだ」と話している。