藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

設計ミスは命取り。

日経の「やさしい経済学」はとてもやさしい。
特に川島教授の農業の話はわかりやすく示唆に富んでいる。

農業振興を掲げるから地方は再生しないのです。

地方再生。
「観光立国」とか「新興国への農業輸出」とよく言うが、"他国のサルマネ"では全然イケてないことがよくわかる。

それぞれの国には独自の地政と持ち味がある。
世界に一つだけの花、ではないが「地方それぞれ」に独自性がなければ人は集まってはこない。

「どうすりゃいいか」よりも「なぜわが町なのか?」を先に考えたほうが解決に近いに違いない。
産物、食べ物、歴史、立地、観光資源、地場産業、治安、などなど。

思えばこの地方創生の話って、そのまま「自分探し」などととてもよく似ている。
他人を見て、他人の選択を知って「その対象としての自分」で自分自身を確認する。

そうじゃなく。
自分の優れるところ、弱いところ、持ち味なんかを冷静に考えてみる。
ダメなところはダメとする。とりあえず。
本当に「押し出して、戦えるところはどこか」ということを十分にわかってから行動に移さないと、折角の投資は破綻するだろう。

設計の間違いは、後々の完成品に致命的なダメージを与えるものだ。
日本の地方が「強いローカル都市」になるためには、独自の個性的な政策が必要なのだ。
そのためにも「魅力ある街づくり」を住民上げて練っていかねば、と思う。

農業の効率化と地方創生(8)地方再生、農業と切り離す必要
東京大学准教授 川島博之
2016/10/12付

 オランダ型農業という言葉があります。高度に自動化された温室でトマトなどの野菜を工業製品のように生産する農業のことです。日本農業再生の切り札とされますが、オランダ型農業に転換しても地方を再生することは難しいでしょう。

 オランダは野菜を英国やドイツに輸出していますが、日本にそのような隣国は存在しません。EU(欧州連合)のような自由貿易圏があってこそ、オランダ型農業は生きてきます。

 仮にオランダ型農業がうまくいっても、地方経済が再生するわけではありません。農業生産額が国内総生産(GDP)に占める割合はオランダでも1.7%にすぎません。日本は1.2%、英国0.7%、フランス1.7%、農地の広大な米国でも1.2%です。

 先進国では人口の1%程度が農業に従事すれば十分です。日本で食料生産に必要な人口は家族を含めて約100万人。1家族3人として、農家は30万戸ほどあればよいことになります。地方創生の議論はこの数字を前提にすべきでしょう。

 農業振興を掲げるから地方は再生しないのです。地方が再生するには、徹底した規模拡大を行って農業人口を減少させると共に、地方を食料の消費地として再定義する必要があります。

 地方再生ではドイツが良い手本です。農業生産額がGDPに占める割合はわずか0.5%ですが、特色を持つ小都市が数多くあり、地方の疲弊は問題になっていません。旧西ドイツの首都だったボンには今も多くの行政機関が残り、首都機能が分散しています。ドイツは16州で構成される連邦国家ですが、日本も道州制の検討が必要でしょう。

 重要なのは、特色があり多くの人が憧れる文化を持つ小都市を地方に多数作ることです。日本では地方創生というと、オランダ型農業や一村一品運動、そのための技術開発などが挙がります。しかし、食料の生産が容易になった21世紀の地方に必要なのは農業ではなく、食料を消費する都市です。農業振興と地方創生を切り離して論じられるようになった時、日本の地方創生は本当の第一歩を踏み出すことになるでしょう。

(次回から「ROE重視と企業価値創造」を連載します)