藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

愛するものと、大事なもの。

プラネタリウムよりも、介護施設の方が必要な自治体も多いでしょう。

今、自分が大事に思うものと、本当に必要なもの。
この話は時を変え、時代を経ていつも出てくる。

自分の生活の中で「自分が大事に思うもの」と「本当に必要もの」はどちらがどちらだろうか。

自分と恋人。
自分と家族。
自分と友人。
自分と仕事。
自分と他人。

自分と「関係者」にとって本当に必要なもの、は果たして何だろうか。
「愛するものには囚われる。」
囚われって怖いけれど大事なものだ。

星を作る人 作家 北村薫
2016/11/4付
 東京工業大学社会人アカデミー主催、蔵前工業会共催になる講演会『深海と宇宙』の最終回に行って来た。「地上最高の星作りを目指して」と題し、大平貴之氏が話された。子供の頃、プラネタリウムを観(み)て感動し、《自分の手でこれを作ってみたい》と思い、それを実現された方だ。

 わたしも少年時代、プラネタリウムに連れて行ってもらった。記憶に残るその会場は、大体育館のような広さだ。そんなはずはないのにそう思うことが、いかに強い印象を受けたかの証明だ。しかし、投影機を自分で作ろうとは思わない。なぜならそれは、すでにそこにあ(ゝ)る(ゝ)ものだからだ。

 しかし、大平氏は、現実を超えようとする。より小型で、はるかに多くの星々を映すものを作ろうと考え、実現させる。大平氏の開発したMEGASTARは、従来の百倍以上の星を投影でき、世界十一か国に設置されているという。一方で氏は、家庭用のプラネタリウムまで作り出す。
 その歩みを語るお話は実に魅力的だったが、講演後の質疑もまた素晴らしかった。

 ――近くにあったプラネタリウムが閉鎖されて久しい。今日、大平さんの機械の投影を見て、深い感銘を受けた。ドームがあっても上映されていないようなところに、営業活動というか、MEGASTAR利用の働きかけはなさらないのでしょうか?
 という問いに、大平氏は、

――プラネタリウムよりも、介護施設の方が必要な自治体も多いでしょう。
 と、答えられた。
 愛することには、とらわれるものだ。即座にこういえる大平氏の判断力、人間的な大きさに感じ入った。