藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

常に全体を考えてるってこと。

少子化対策担当大臣、なんていうポストがあるくらいだから、大事なことなんでしょうけど。
それにしても「本当はどうあるべきか」を考える"大人"が減っていないか。

少子化かどうか、とか
減税か増税か、とか
会社か個人か、とか。

どれも一通りで解決は出ないけれど、考え抜いて結論を導いていくべき問題だ。
それには「年金」とか「教育」とか「貿易」とかいう外部を巻き込む問題も多い。

ふえた以上、国家は彼らを食べさせなければならない。そこで19世紀のヨーロッパでは、ふたつの正反対の主義が生まれた。ひとつは他国をわがものにしようとする帝国主義、もうひとつは自国の富を徹底的に管理しようという共産主義

国民が増えり減ったりする「人口ベルト」は国が意図して操作するのは難しい、という。
伝染病とか戦争とか災害とかがあったりするとさらに不安定要因が増える。

まず政治は「国民の衣食住」と「生まれてから死ぬまでの生活」をもう一度決め直してから制度設計すべきではないだろうか。
最近医療・介護・社会保障のことを勉強しているが、知れば知るほど「どエライシステム設計の迷路」に入り込んでいるのがわかる。
そして何より恐ろしいのは、役人も、政治家でさえ本当に「全体」を考えている人がどうやら居なさそうなことだ。

だったらお前が考えんかい、という話だが、自分はこれから事業家の立場でそういうことに関われたらなあと思っている。
人生を12年づつ、72歳までの「六つ」と考えたら、自分はもう五つ目、つまり"ラスマイ"にいる。
何か方向性をしっかり持てたらと思っている。

人口がふえたら 門井慶喜

 日本の人口が減少している。50年後はさらに減る。どうしようと皆さんおっしゃいますが、30年前までは、

 ――多すぎる。

 の論調が主だったのではないか。

 いわく、ヨーロッパ諸国を見よ、イギリス、フランス、イタリア、みんな1億もないから国民ひとりひとりの質が高い。老子の言う「小国寡民」さながらの理想郷。それに比べれば日本人など文化を知らぬエコノミック・アニマルにすぎないと、ほかならぬ日本人が言っていたのだ。

 その主張の正否をいまさら云々(うんぬん)する気はないが、ただ、ひとつ事実誤認を指摘するなら、当時のヨーロッパの人々は決して自分たちの国を「小国寡民」とは思っていなかった。どころかむしろ、多すぎるとため息をついていた点では日本人と変わらなかったろう。

 8千万でも3千万でも、主観的にはおなじである。なぜならその一つ前、19世紀において、彼らは未曾有(みぞう)の人口急増を経験していた。スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットは、こんにちでは古典となったあの『大衆の反逆』のなかで、経済学者ゾンバルトから得た情報だとことわった上で、

 「六世紀から一八〇〇年までの十二世紀ものあいだ、ヨーロッパの人口は一億八千万を超えられなかった。ところが一八〇〇年から一九一四年までのたった一世紀と少しのあいだに、四億六千万に増大した」

 理由はいろいろ考えられるが、いちばん大きいのは、この世紀がそもそも産業革命の世紀だということだろう。工業化がすすみ、資本の形成がすすみ、そのためまず都会にたくさん人が入った。

 もちろん彼らは、蒸気機関車に乗って来たのである。都会はまことに包容力があった。1843年に刊行されたディケンズの中篇(へん)小説『クリスマス・カロル』にはこんな場面がある。クリスマスの晩、主人公である会計事務所のオーナー、老スクルージのところへ紳士が来て、

 「何十万という貧しい人や、身寄りのない人に、肉や、飲みものや、燃料を贈りたいのです」

 当たり前のように寄付を要求した。老スクルージはけちだから、

 「救貧院があるでしょう。私はそのために多額の税金を払っている」

 ここからわかるのは、当時のロンドンには何十万もの生活困難な人がいて、とにかく善意の寄付や税金によって生きられたということである。彼らはたいてい地方出身者だった。一時代前なら農村から出られず、過酷な労働、栄養の欠乏、病院の未整備などにより、なすところなく死んでいたであろう人々。産業革命は社会制度を充実させ、そのことが人口をふやしたのである。

 ふえた以上、国家は彼らを食べさせなければならない。そこで19世紀のヨーロッパでは、ふたつの正反対の主義が生まれた。ひとつは他国をわがものにしようとする帝国主義、もうひとつは自国の富を徹底的に管理しようという共産主義

 正反対だが、おなじコインのうらおもて。こんにちでは、どちらも世界に災厄をもたらしたと評判の悪い思想だけれども、それならば人口減はむしろ善になりはしないか。

 胃ぶくろの数が減ることは、つまり邪悪な「正義」が減ることではないかと主題を整理したところで紙数がつきた。ここから先は、みなさんもごいっしょに。