一番「自国」へのこだわりを持っている。
でもビジネスではそんな話は微塵も見せず。
総じて「他国との自由なつきあい」は苦手だ。
いくら「ガラパゴス」と言われても。
日本という島国の特殊性を説明する文献は多いけれど、いよいよ今の時代になっては「これまで」よりは「これから」の話に違いない。
グローバル化への意欲が世界一高いのは日本企業だった。
だが運営能力が追いつかず「意欲と能力の差が最も開いたのも日本」だという。
一体グローバル化したいのか。
それともローカル国でいたいのか。
どちらにしても「グローバル世界のルール」に一度は則り。
それから自国優先のローカル色を出せば、それなりの色が出てくるだろうと思う。
シャイな田舎者だったから、あまり話も上手にできなかったけれど、終戦後70年の今ごろ、そろそろ率直な対話をしてはどうだろうか。
多様性問う グローバル化 本社コメンテーター 中山淳史
ソフトバンクグループの孫正義社長は6月21日の株主総会で「アービトラージ」という言葉を2度使った。例えば、英半導体大手のアームを買収した時に同グループの株価が下落した。孫氏は「デビューの時というのは往々にして誰も(本当の価値に)気づかないもの。だが大多数が気がつかないからこそ莫大なアービトラージのチャンスはある」と振り返った。
アービトラージとは「裁定取引」「サヤ抜き」のこと。ヘッジファンドが企業のM&A(合併・買収)や株式上場に目を光らせ、現物と先物の値差を狙って株を売買する時などに使われる言葉だ。
孫氏の場合は日本と海外、特に「日米間の差異をテコにした裁定取引経営」だと言われる。IT(情報技術)革命の進展は日本より米国の方が速い。その時間差と円高・低金利を利用したM&Aがこれまでの戦略だったわけだ。最近できた932億ドルの基金、いわゆる「10兆円ファンド」もそうした戦略の延長線上にありそうだ。
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思い出すのは経営学者ピーター・ドラッカーの言葉だ。「未来は予測できないが、すでに起きた未来はある」(1964年の論文)。つまり、出生率が将来の労働人口を決定づけるように、「結果が確実にわかる現実」を見つければアービトラージは可能である。
投資に限った話ではない。日本企業の海外戦略もやはりアービトラージだと言われてきた。世界経済はグローバル化し、安くて品質の高い製品を求める消費者が増える。だから生産コストの安い国に立地して輸出で稼ぐ。
だが、最近は環境が変化し、以前ほどアービトラージを効かせにくくなったという。ボストン・コンサルティング・グループによれば、世界の国内総生産(GDP)に占める貿易の割合はリーマン・ショック(2008年)以降5年間で0.2ポイントしか増えていない。1960〜2008年には35ポイント上昇したにもかかわらずだ。
背景にあるのは経済のデジタル化や保護主義、グローバル化の深化だとされる。例えば、デジタル技術の発達で、安くて品質の良い製品はどこかで大量生産しなくても需要地で必要なだけ生産し、供給できるようになった。中国から本国ドイツに生産の一部を回帰させたアディダスなどが好例だ。
貿易依存度が高い日本企業には逆風かもしれない。世界の株式時価総額ランキングを見ても、日本勢の最高はトヨタ自動車の48位と低調だ。浮揚の兆しはない。
だが、変化をもろともしない企業も世界には少なくない。スイスの食品世界最大手、ネスレが一例だ。時価総額は13位と米国勢やIT企業を除くと最も高い。6月下旬にはもの言う株主で知られる米ヘッジファンド、サード・ポイントが株主還元の拡大などを求め、株式市場の関心を一段と集める。
売上高の3分の1は今もコーヒーだ。創業から151年間で赤字決算は一度だけ。買収先を除く売上高は世界のGDPを超える成長率を常に達成してきた。秘策は特にない。191カ国・地域に進出し、1袋15円でコーヒーやスープを売る途上国から、高級食材、見守り機能付きコーヒーメーカーを売る先進国市場まで、きめ細かい商品展開でひたすら稼ぐ。各国・地域に根ざして発展を追いかけ、アービトラージを重ねるわけだ。
「日本企業はオールジャパン。スイスはオールグローバルなのが違い」と話すのは日本での駐在経験もあるマイケル・ブリナー副社長。同氏が率いるアジア・オセアニア部門があるスイス本社3階を訪れると社員は40人しかいない。国籍が100カ国以上に及ぶ社員のほとんどは世界中に散らばり、中央集権的経営はしないという。
スイスには実はこうしたグローバル企業が多い。時価総額で世界21位の医薬品大手ロシュ・ホールディング、29位のノバルティスも社員の国籍は100カ国近くに上る。日本企業と明暗を分けるのは多様性を生かす力量ではないか。
スイスの経営大学院IMDが毎年まとめる「国際競争力ランキング」によると、92年まで5年連続首位だった日本は「失われた20年」をなぞるようにその後順位を下げ、17年も26位に低迷。一方のスイスは香港に次ぐ2位を守った。順位の差は何か。アルトゥーロ・ブリス教授は「多様な人材を呼び込み、世界の接点として存在感を高めているかどうか」とみる。
やはり多様な国籍の研究者を抱えるというIMDの授業を取材すると、ちょうど日本に言及していた。担当のステファン・ジロー教授らの別の調査によれば、グローバル化への意欲が世界一高いのは日本企業だった。だが運営能力が追いつかず「意欲と能力の差が最も開いたのも日本」だという。
日本にとってグローバル化の次のステップは「スイス」かもしれない。同じく国土は狭いが、公用語のほかに英語が通じ、海外人材の受け入れに積極的だ。そこから学ぶべきは、外国人を管理する日本人の養成ではなく、多様な海外人材を集め、日本人だけでは不可能だったアービトラージを狙うことだろう。日本で学位を取ったIMD前学長のドミニク・テュルパン教授も「日本に問題があるとすれば意識の持ち方だ」と話す。
最近はIMDにも「多様性を学びに来る日本企業幹部が増えた」とも語る。日本もようやくカジを切ろうとする兆しだろうか。だとすれば「日本は変われない」との屈辱的なレッテルを返上し、グローバル企業大国としての新たな一面を示してほしい。