藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

過渡期を抜けたあと。

日経より。
機械の普及を恐れて職人が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」。
今度の「ロボット化」は多分それ以上になる予感がする。
何せ前回の産業革命は「製造の機会化」がほぼ中心だった。

今度は「考える」とか「制御」とか「画像認識」とか「サービス」がターゲットだ。
投資にすでにAIが導入されているとあっては「ほとんどの仕事は代替される」と想像するのも無理はないだろう。

で。
今のように「ロボットが考えて貯金して税金を払う」かどうかはわからないけれど。
多分、今の自分たちの仕事の多くはかなり自動化されて、一時は「失業か?」というような時期もあるかもしれないけれど。

物やサービスの生産性はどんどん上がり、人間は労働からは解放されるのは間違いなさそうだ。

そうなったら人は廃人になるだろうか。
多分ならない。

もっと政治とか国とか環境とか資源とかのことを真剣に考えるに違いない。
それが人の叡智だと思う。

そう考えると、今の時代はいよいよ「武人・争いの時代」から「叡智の時代」へと移行する過渡期なのかなぁ、などと思える。
今出ている未来への萌芽が、いよいよ成長するのが2020年からなのではないだろうか。

ちょっと未来は明るいような気がしませんか。

ロボットへの課税 労働者に恩恵?

 産業革命時代の英国で、織機の普及を恐れた手工業職人が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起こったように、米マイクロソフトがどれほど人々にパソコンを金づちでたたき壊したい気持ちにさせたとしても、同社の創業者ビル・ゲイツ氏は現代版ラッダイト(技術革新反対者)だとは思えない。そのゲイツ氏が最近、米オンラインメディア「クオーツ」のインタビューで、自動化が急速に進めば社会は混乱するのではないかとの懸念を示した。混乱回避のため、各国政府はロボットへの課税を検討すべきであり、それで自動化の進展が遅れれば、それに越したことはないという。これは興味深い考えだ。たとえ実務上不可能だとしても、自動化がもたらす多くの課題を提起するからだ。

■急速に自動化が進めば失業者が増加

 遠い将来、ロボットは自分で考え、貯金もし、会計士に相談もして、我々と同じように所得税を払うようになるかもしれない。しかし、ゲイツ氏が主張しているのはそんなことではなく、導入したロボットに対し、あるいは自動化で人件費が浮いて上積みされる企業利益に対して課税せよということだ。税収は労働者の再教育に使える。授業や高齢者、病人の介護など、自動化が難しい仕事が多い教育や医療の拡充にも充てられる。

ロボット課税は労働生産性の改善を遅らせる可能性も=ロイター

 ロボットの導入は高炉やコンピューターの設置と同様、設備投資になる。経済学者は通常、増産にかかわる設備には課税すべきでないと主張する。課税が投資を妨げる一方、税収は大して増えず、人々の生活は苦しくなると考えられるためだ。ゲイツ氏は、ロボット投資が石炭火力発電所の建設と少し似たところがあると主張しているようだ。生産量は増えるが、経済学者が「負の外部性」と呼ぶ社会的コストも生まれるからだ。自動化があまりに速く進めば、失業した労働者を雇用する新産業の育成が追いつかないだろう。社会的に高くつく長期失業者が増え、政府に自動化推進を妨げるような政策をとるよう圧力がかかりそうだ。ロボット課税はそうしたリスクを減らすので、試す価値は十分あるかもしれない。ちょうど高炉から排出される有害物質に課税すれば環境汚染が抑えられ、社会がよくなるのと同じだ。

 ところが、現実はもっと複雑だ。ロボットを導入しても労働者を使い捨てにはせず、彼らの生産性を高められるはずだ。逆に、ロボットに課税すれば、労働者が不幸になることもあり得る。一部の労働者はロボットに仕事を奪われるかもしれないが、製品やサービスの価格が下がるので、全体としてみれば労働者の生活は向上する可能性がある。医療分野で機械化を遅らせ人間が引き続き仕事をこなすのは、社会の安定を維持するうえで有益に見える。だが、もしそれで医療費が急増し、労働者の所得の増加分が持っていかれてしまうなら、全く引き合わない。

■労働力が安価な国では生産性改善に遅れ

 ゲイツ氏の提案で最も厄介な問題は、少なくとも今のところ、自動化の進捗度合いが速すぎるのではなく、遅すぎることだ。機械化は本来、生産性上昇率の向上、ひいては経済成長率の上昇として数字に表れるはずだ。米国では1990年代後半と2000年代初頭、労働生産性が急激に上昇した後、生産性の改善も経済成長率もずっとさえずにいる。

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 自動運転車が街を走り、倉庫が無人管理される時代が間もなくやって来るとゲイツ氏が心配するのはもっともだ。ただ、安価な労働力があふれている国では、省力化投資をする企業はほとんどないかもしれない。大勢の労働者が最低賃金でもいいから雇ってくれと列をつくっているのに、なぜ倉庫を自動化する必要があるのか。ロボットに課税すれば、労働者よりロボット関連の費用がかさむため、生産性の改善が一段と遅れる恐れがある。

 自動化の勢いが実際に速まった場合でも、ロボット課税は適切ではないだろう。資本投下による機械化推進が自動化だとすると、失業者が困窮しないように、投資に伴う収入の一部を彼らに配分する必要がある。一案は、ロボットなどの自動化のための機械を多くの人が持てるようにすることだ。例えば、自動運転車をタクシーとして使い、運賃収入を所得の足しにできればいい。もう一つの方法はロボット課税による税収を再分配することだ。

■企業の市場支配力が強ければ人も機械も憂き目

 だが、生産現場が自動化されるにつれ、自動化で得られる収入にも労働者賃金と同じ圧力が加わるようになる。企業が生み出した付加価値に占める労働者の取り分を示す労働分配率は、何十年も低下し続けている。原因の一つは労働力の余剰だ。ところが、数の多さでは機械も人間も変わらない。工場では複雑な装置も量産できる。同じソフトウエアを2本つくっても100万本生産しても、コストはほぼゼロだ。大型トラックの運転手には1人ずつ指示を出す必要があるが、高度な自動運転システムは際限なく複製できる。労働者同様、機械も多過ぎれば、経済成長の果実の公正な配分にあずかれないことは明らかだ。

 米シカゴ大学の研究者は新たな報告書で、労働分配率はここ数十年、下がったが、ロボットなどの設備投資に向けられる資金の割合はそれ以上に大きく減ったと論じた。拡大したのは、企業が生産コストに上乗せできる利幅、すなわち企業利益だ。1月に発表された全米経済研究所(NBER)の調査報告書も、労働分配率の低下は「超有力企業」の台頭と関係があると分析している。有力企業が勝者として市場をほぼ独占する構図が色濃くなっているという。

 巨額の利益をあげられるのは市場支配力が高い証しだ。市場支配力は、多くの企業などとつながるネットワーク力から生まれるのかもしれないし、優れた生産文化や政府の保護政策、あるいは別のことが影響している可能性もある。自動化の波が到来すれば、超有力企業の利益を分配する必要があるだろう。上場企業なら株式の配分で、非上場なら利益への課税強化を通して実施するのだ。ロボットは悪役に仕立てるにはうってつけだが、ゲイツ氏は課税対象を変えた方がいいかもしれない。企業の市場支配力が圧倒的なら、労働者も機械も同じように憂き目をみるからだ。

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