皆が「狂気でしかない」と引いていた企業が、その狂気を貫いた結果市場を制覇する、という図式は昔からあった。
その度にその経営者は賞賛されたり、疑問視されたりしてきたと思う。
それはともかく。
つくづく「再び一文無しになるかもしれない」と思いながらのチャレンジは必要だ。
せっかく手にした今のポジションは居心地がいいけれど。
もう一度「雑巾掛け」からやったるで、という覚悟があればいい。
多分、次も成功するだろうと思う。
つまり
成功するかしないのか、というのはそういう、いわば「捨て身の原理」のようなものなのではないだろうか。
この"捨て身の気持ち"は実に簡単だ。
今お金や人脈がなくてもいい。
必要なのは「自分の気持ち」だけである。
ひょっとしてamazonが躍進しているのも「そんなマインドセット」ではないだろうか。
一度ジェフ・ベゾスに聞いてみたいものだ。
「あなたは捨て身で経営しているのではないですか?」と。
「Amazonされる」など造語が誕生するほど恐れられるAmazonの悪夢のような底なしの欲望
by CanonicalizedAmazon倉庫の過酷な労働環境が明らかになったり、Amazon本社で飛び降り自殺が起きたりと、Amazonの職場環境についてはこれまで何度も批判と称賛が飛び交ってきました。そんなAmazonについて、ジェフ・ベゾスCEOは「『Amazonのやり方が正しい』とは言わない、しかし20年で根付いた文化だ」とコメントしているのですが、新たにBloombergが「どうやってAmazonはアメリカ企業にとっての悪夢となったか」というコラムを投稿しています。How Amazon Became Corporate America’s Nightmare
https://www.bloomberg.com/graphics/2018-amazon-industry-displacement/Amazonは世界で最も驚異的で、不合理に拡大を続ける恐るべき企業です。今では石けんを販売しながらテレビ番組などの制作を行い、政府にはコンピューティングパワーを売りつけ、クリスマスイブでもユーザーの求めるものを戸口まで配達してくれます。
2018年には地球上で最も価値のある企業とランク付けされたAmazonですが、年間利益はサウスウエスト航空よりも少なく、世界で426番目に多いという程度。ただし、Amazonのジェフ・ベゾスCEOは世界で最も裕福な人です。Amazonはインターネット上で誕生したECサイトですが、今では自前の倉庫や食料品店を持っており、エンパイア・ステート・ビル換算で90棟分の不動産を所有しています。
Amazonはその影響力を年々増しています。ベゾスCEOはAmazonがあらゆる業界で確固たる地位を確立することを望んでいるかのようであり、総合格闘技UFCのPPVを販売したりリアル販売店舗をオープンしたりと、事業の拡大はとどまるところを知りません。また、ベゾスCEOは「Amazonで築いた富を宇宙旅行事業実現のために使う」と発言しており、宇宙旅行事業にも関心を寄せていることが明らかになっています。
急速に成長してきたAmazonですが、それがなぜ他の企業にとっての悪夢となっている状況について、Bloombergは「アメリカの大企業の幹部たちは、2017年に投資家との電話の中で何千回もAmazonについて言及しており、その回数は『トランプ大統領』や『税金』よりも多い」と、Amazonの影響力の大きさを表現しています。検索エンジンのGoogleが「検索する」という動詞として使われるようになったように、「Amazon」という単語は「他の企業に損害を与える」ことを示す動詞として使われるようになり始めているそうです。実際、一部では「be Amazoned(アマゾられる)」という用語が「あなたのビジネスは他企業の参入によりダメになるかもしれない」という意味で使われているとのこと。
以下のグラフは「be Amazoned」がいかに他の企業にとって脅威であるかを示すもの。2018年1月30日にAmazonはJPモルガンやバークシャー・ハサウェイと協力してヘルスケア市場へ参入することを発表したのですが、その前後でのヘルスケア関連銘柄の値動きを示したグラフ。1月29日の終値を100としており、100以上になっていれば「1月29日の終値よりも高い」、100以下なら「1月29日の終値よりも低い」ということになります。1月30日の発表後、ヘルスケア関連銘柄は全て100以下に落ちています。
以下のグラフは、各業界における「Amazon関連のニュースが出た日の株価の下落率」を示したもの。縦軸が下落率で、横軸は日付を表しています。丸は企業の株価を表しており、丸の色が企業の属する業界を示しています。なお、青が食品業界、赤がヘルスケア業界、黄色が小売業界、ミント色が配送業界、紫色が自動車業界、グレーがテクノロジー業界、緑が不動産業界です。
そんなAmazonでも2014年には行うあらゆることが間違いであるかのような大きな失敗を犯しました。2014年、Amazonは独自開発のスマートフォン「Fire Phone」を発売します。大きな期待を持って登場した端末で、発売当初は性能の高さを印象づけるレポートが続々登場しましたが、結局は「失敗作」の烙印を押されついには販売打ち切りとなります。Fire Phoneの販売不調によりAmazonは大赤字を計上。2014年のホリデーシーズンの収入の伸びは、2001年以降で2番目に悪いというもので、これもFire Phoneのせいにされる始末でした。
そんなFire PhoneはGIGAZINEでもレビュー済み。一体どんな端末だったのかは以下の記事でチェックできます。
本当にAmazonスマホ「Fire Phone」は失敗作なのか1週間ほど試してみて分かったこと - GIGAZINE
2014年の失態によりAmazonは株価を20%も下げますが、1年後には市場価値を5倍にまで膨れあがらせます。2015年はアマゾンウェブサービス(AWS)躍進の年でもありました。2006年のAWSのサービス開始以降、Amazonはクラウドコンピューティングサービスにおいて常に市場をリードしており、AWSは誕生したばかりの若い企業やスタートアップだけでなく、Netflixなどの大企業からも利用される存在へと進化を遂げます。そんなAWSの2015年における営業利益は、Amazon全体の営業利益の3分の2を占めていたそうです。なお、AmazonがAWSに支えられる構図は記事作成時点の2018年になっても続いています。
Amazonのクラウドサービス「AWS」が絶好調で株価が急上昇 - GIGAZINE
2015年はAmazonが有料会員向けに行う大セール「プライムデー」を初めて開催した年でもあります。2017年のプライムデーにおいて、Amazonは2000億円以上の売上を記録しており、Bloombergは「Amazonはより多くのものを顧客に買わせる方法を見つけた」と記しています。
2014年12月には購入した商品が1時間で届くサービス「Prime Now」をスタート。約1年後の2015年11月には日本でもPrime Nowのサービスがスタートし、2016年に入ってからはサービスエリアが東京以外の大阪・兵庫・横浜まで拡充されています。
他にも、2015年に所持していた109の流通倉庫は2018年までに150にまで増加。さらに、音声認識AI搭載のスマートスピーカー「Amazon Echo」をリリースし、同分野においてAppleやGoogleを先行しています。また、2017年には高級スーパーマーケットのWhole Foodsを1兆5000億円で買収しています。
AmazonがWhole Foodsを買収した狙いは、以下の記事を読めばよくわかります。
Amazonの1兆円超えのWhole Foods買収に見るAmazon帝国構築に向けた取り組みとは? - GIGAZINE
多くの企業にとって恐ろしいのは、Amazonが小売事業においても成長の余地を持っているという点です。アメリカでは小売事業における売上の90%以上が物理店舗上で発生しています。オンラインショッピングの割合は増加していますが、Amazonは買収したWhole Foodsの実店舗を持っており、他にもAmazon GoやAmazon booksなどの実店舗も有しています。
AmazonがWhole Foodsを買収する動きを察知することが難しかったように、Amazonが次にどの業界に進出するのかを予測することは非常に困難です。2018年2月27日にはスマートホーム家電の「Ring」を買収したばかりですが、2018年3月12日には「小規模事業者向けクレジットカードを計画」とも報じられており、これによりAmerican Expressの株価は約1.4%下落しました。
そんなAmazonも無敵というわけではありません。北米では電子商取引における利益率はわずか2.7%で、多くの人々が想像するほど大きな利益を生み出せているわけではありません。しかし、今のところAmazonやベゾスCEOの狙いを封じ込められるような力を持つ存在は一握りであることは明らかです。