藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

コードのない世界

*[ウェブ進化論]すべてを充電。
日経MJより。
いつの間にか自分のiPhoneもワイヤレス充電になっているが、これが加速するという。エネルギー業界は「電気」の一人勝ちの様相だが、それは「充電との戦い」でもあった。環境によくないと思いつつも乾電池を使ったり。
いつの間にか「ケーブルの奴隷」と化していた我われが解放されるかもしれないという朗報だ。
それにしてもいずれは「宇宙(衛生)で発電し街中に給電する」ということにまでなれば、まるで様子が変わりそうだ。車も電車もまるで永久機関かと勘違いするような世の中になるらしい。
新幹線はさらに早く走れるのではないだろうか。
改めて技術というものの凄さを感じるクリスマスなのでした。
 
 
衛星から届け電力 未来の技術「無線給電」開発競う
 
2019年10月1日 2:00
 

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

遠隔から無線で給電できる技術「無線給電」の実用化に向け、パナソニックなど電機大手やスタートアップ企業がしのぎを削っている。工場で稼働するセンサーの電池交換が不要になるなど、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の生産設備への導入が加速する。将来は宇宙に太陽光パネルを打ち上げ電力をマイクロ波で地球に送る技術にもつながりそうだ。

 
無線給電はスマホ向けで採用が進んでいる
センサーの電池やケーブルが不要に
 
「ケーブルや電池のいらない、工場のIoT化を進められる」。パナソニックマニュファクチャリングイノベーション本部の梶原正一主任技師はこう強調する。同社がいま開発しているのは、電力を携帯電話の通信や電子レンジに使うマイクロ波に変換して送受信する技術だ。電源ケーブルがなくても遠隔から無線で電波を送り、受信側で再び電力に変換できる。
 
現在実用化されている無線給電はスマートフォンを充電器の上に置くシステムが一般的だ。一方、パナソニックが開発している無線給電技術は、数メートルと送信側と受信側の距離が離れていてもマイクロ波に変換することで電力を送れる点が特徴だ。
 
「例えば、工場に取り付けて品質管理に使うセンサーに活用できる」と梶原主任技師は話す。半導体や化学品は温度や湿度に敏感で、工場では製品が劣化しないように室内環境をセンサーで調べている。
 
マイクロ波を発信するアンテナを工場内に取り付けることで無線でセンサーに給電ができるようになるため、センサーの電池交換が不要になる。IoTの活用に向け、2020年度をメドに実用化する考えだ。

 
電気自動車向けの無線給電の実用化が期待されている(2018年、北九州市での展示会)

配線が困難な場所にも送電可能に

スタートアップ企業のスペースパワーテクノロジーズ(SPT、京都市)は工作機械の異常検知センサーに活用する。例えば、金属を加工する機械にはドリル付近に振動センサーが付いており、ドリルの異常な振動を検知して故障を予知するという機能がある。センサーの駆動には電池が使われており、頻繁に交換する必要がある。
 
ここにSPTの技術を導入すれば、電池を交換する必要がなくなる。また、家電やIT(情報技術)機器の部品を置く棚には、従業員が部品を取り出すなど作業の実行を確認するために表示器のボタンがあるが、これも無線給電に置き換えられる。「空間をうまく使い配線が困難な場所でも電力を送れるようになる」と古川実社長は強調する。SPTには関西電力が出資するなどエネルギー大手も無線給電技術に成長を見いだしている。

 
パナソニックなど大手メーカーも無線給電システムの開発に余念がない
マイクロ波による電力の送受電は技術的には宇宙ビジネスに応用が可能とされている。宇宙空間に太陽光発電パネルを打ち上げ、発電した電力を地球に送る。地球に巨大なアンテナを設置しておけば受電が可能になる。1960年代から米国を中心に研究されてきたが、80年代以降は日本が推進役を担ってきた。
 
宇宙システム開発利用推進機構は19年、ドローンにマイクロ波を飛ばす実験をした。ドローンが移動しても問題なく地上から送信できるかを確かめた。経済産業省は地上や宇宙での実証を通じ、50年ごろに宇宙太陽光発電を実現するロードマップを描いている。
 
海外では中国が技術面で追い上げている。中国国内で宇宙太陽光発電の実験棟が建設されており、中国空間技術研究院は25年までに100キロワット級の送電実験を実施し、50年までに商用化する計画だ。A・T・カーニーの石田真康プリンシパルは「中国は安全保障のほか、エネルギー自給の観点から開発を進めている」と分析する。
 

宇宙で発電、商用化にはハードル

ただ、宇宙太陽光発電の商用化への道のりは険しい。地上に直径4キロメートルほどの受電アンテナを置く必要があるほか、宇宙には2キロメートル四方の衛星を打ち上げる必要がある。宇宙航空研究開発機構JAXA)の過去の試算では1兆2000億円の総投資額が必要で、現在ではこれをさらに上回る金額が必要だとの見方が強い。
 
国内企業は足元で工場のIoT化につながるマイクロ波の無線送電技術を開発しながら知見を蓄える。宇宙太陽光発電に詳しい京都大学の篠原真毅教授は「マイクロ波無線送電の技術を民間で開発し、プレーヤーを増やしていくことが重要だ」と指摘する。

 
TDK無人搬送車向けのワイヤレス給電システムを開発した

11年にシャープがスマホに採用

無線給電技術は現在、主にスマホで実用化されている。11年にシャープが「アクオス」ブランドから世界初の対応機種を発売。その後、15年に韓国サムスン電子が「ギャラクシー」で展開したことから普及が一挙に加速した。
 
スマホ向けの国際規格となっているのは「Qi」。「エアフューエルリゾナント」など別の規格も存在するが、米アップルが「Qi」を「iPhone」で採用したことがスタンダード化の決め手となった。
 
矢野経済研究所は19年の無線給電の世界市場が2197億円になると予測する。23年には1.6倍の3590億円に拡大するもようだ。足元ではスマホなど小型電子機器での利用がほとんどを占めるが、次なる主戦場と見られているのが電気自動車(EV)で、20年以降に本格的に市場が立ち上がると見られている。
 
自宅の駐車場や路面に電力を送る給電システムを組み込めば、ドライバーはその上にEVを止めるだけで済む。EV普及の妨げの一因にもなっていたケーブルによる充電の手間を省けることから、早期の普及が期待されている。
 
EVにおける無線給電の規格争いは米ワイトリシティと米クアルコムが主導してきた。19年にワイトリシティがクアルコムから無線給電に関する技術や知的財産を買収したことから、ワイトリシティが業界のスタンダードとなる可能性が高い。ワイトリシティはトヨタ自動車TDK、ダイヘンなど日本の大手企業とも組んでいる。
 
スマホやEV以外に工場で稼働する搬送車両など産業用途で普及すれば、無線給電の市場は一気に花開きそうだ。
 
(企業報道部 杜師康佑、国際部 志賀優一)