梅田望夫さんの「ウェブ進化論」が、いまだに高い評価を維持している。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20061224/p1
維持、というより陳腐化していないので、常に新しい読者層に認知されているのだ。私も未だにパラパラ人に配っている。
検索キーワードランキングでも8位と高い。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20061220/p1
1位…W-ZERO3
2位…功名が辻
3位…極楽とんぼ
4位…X01HT
5位…Wii
6位…ライブドア
7位…上川隆也
8位…ウェブ進化論
9位…日本沈没
10位…Mio P350
また、アマゾンの「Best of 2006 和書総合ランキング」では、なんと年間4位。ハリーポッターと国家の品格に続く。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/feature/-/1000017806/ref=amb_link_19666006_1/250-7822474-3349865
なぜか。
そりゃ、「ウェブ進化論」はページ数も抑えめ、簡潔に書かれているし、分かりやすい。
でなく。もっとスゴいのじゃないか。
この本には、「原則」が書かれているからでは。と。
一部ではなく、全部。
著名人の講演で、よく「フラット化する世界」〔トーマス・フリードマン著〕が引用される。
読み応えはある。
が、「web2.0」と言われるものの「原理」についてはあまり浮かび上がってこない。(読み手のオツムの問題かもしれぬが。)
例えば、「ウェブ進化論」で言えば
・第一の法則:神の視点からの世界理解
・第二の法則:ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
・ 第三の法則: (≒無限大) ×(≒ゼロ)=something消えて失われていったはずの価値の集積
といったパラダイム(理論的枠組み)。
このパラダイムは冒頭に提示さる。
以後、首尾一貫しているので、一冊全体を通してとても理解しやすい。
という意味では、「パラダイムの非常にしっかりとした」著書、とも形容できる。
また、著者の言う
「オプティミズム(楽天主義)と共通言語(ネット世代と、それ以外が共に意思疎通できる表現)」
といった配慮(性格づけ)も、この本を「明るく、爽やかな感覚」で包む。
梅田望夫さんの人柄が透けて見えるよう。
これは本書の重要な「人格」だろう。
自分の読了感も、「今どきのWeb」について、「ずい分、頭の中がスッキリしたなー」だった。
7つの習慣、とダブる。
先日、「7つの習慣」をレビューしたが、その根本は「人格主義(原理原則)」だった。
逆は、「個性主義」=how toによる一時的解決。
個性主義(how to文化)の特徴は、一つにはその「扇情的な」題名にある。
「人を動かす」
「他人の3倍売る交渉術」
「一年で3千万円貯まる!仕事術」
「ツキを呼ぶ魔法の言葉」
どれも「お手軽ですよー」と誘う。
翻って、webの世界でも同様に、
「人格主義的」、あるいは
「個性主義的アプローチ」の著書に分かれている、と気づく。
何でもそうか。「本質を説く本」と「現象に終始する本」。
個性主義の本は、「すべてが間違っている」わけではない。部分的には正しい。
ただ、「根本」を捉えないから、いつまで経っても「思考の核心」に行き当たらぬ、ということ。
Web2.0について記された本も数多い。Googleに焦点を当てたもの、youtube、yahoo、マイクロソフトに言及したもの。
だが、どれも「あるワンシーンのお話」に見える。
そのうち、何となく、〝情報過多〟。
「人格主義的」な本
「ウェブ進化論」は現在の『web世界の〝原理・原則〟』を捉えている。
なぜそうと分かるか?
事実を見れば明らか。
著者が語る。
(日経BP社のロングインタビュー。梅田望夫さんの今年の総括と言ってよい)http://itpro.nikkeibp.co.jp/a/it/alacarte/iv1207/umeda_1.shtml
ウェブ進化論を2006年1月に脱稿して、11ヶ月経っています。
この11ヶ月間で唯一書き足さなければいけないのは、ユーチューブだけなんです。
細かい動きは、全部この中に書いたことで説明可能です。
と。「今の原則」を掴んでいるから、時間が経ってもブレてない。
とても完成度が高いのだ。
また、この一年について。
ユーチューブは2006年最も話題になった企業です。
つまり、ユーチューブはネット産業における2006年の差分だった。
それをグーグルが買い取った。
要するに、グーグルはネット産業における2006年の差分を全部買い取ったわけです。
と。相変わらずの分かりやすさ。
ブログも人格的に。
自分の「脳」の一部分と化すブログ。
だが、そこに「個性主義的な」情報ばかりuploadしても、あまり役に立ちそうにない。
例えば、毎日3食の献立ばかりをupしている友人がいる。
最近、一年分の献立を通して、自分の栄養摂取を考え、健康を考え、そして、食材を考えるようになった、と。
彼のブログのテーマは「ある日の献立」から「究極の健康食材」へ、そして、その先の「生きる意味」という所へと変遷していくようだ。
日常の「考える素材」から、〝なぜか〟を追求し、いつしか原理・原則へと迫っていく。
梅田望夫さんは〝出版のための執筆〟のことを「思考の断片の構造化」と表現する。
「知的生産ツール」としてのブログは、
自分の頭の中の「あらゆるテーマ」を記録し、
「脳がその真理を追求することを助ける」のだ。
深い。