藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

次世代のしくみ。

先月、アラバマ州ジェファーソン郡が米破産法9条を申請して破たんした。
地方の群にして40億ドルの負債である。
破たんの原因は「下水道システム改修のための地方債での資金調達」だという。
利払いにデリバティブを活用していたというが、こんな「身近な資金調達」にもファンドは利用され、またその影響は「下水道」にも及ぼうとしている。

下水道ファンドが破たんすれば、下水道は流れなくなるのである。
あらゆる債権がファンド化され、世界中に「沁み込むように」浸透している。
一旦破たんの危機になれば、その影響は「財テクだけでしょ」というわけにはいかず、我われの日常生活にも影響するレベルに達している。
もちろん不景気がもたらす減収とか、普通に感じる景気感とは全く別のシステムで、経済の停滞は思わぬ生活苦をもたらすかもしれない。

インフラしかり。
安全しかり。
ニュージャージー州カムデンでは、治安悪化を覚悟で警官の数を半分にしたり、囚人を消防士に登用しているという。
こういった現象の意味するものは何か。

「既存の公共システムの崩壊」だろう。

そうしてその最も大きいものは、日本の年金システムではないだろうか。
ジリジリと条件を緩和し、範囲を狭めて乗り切ろうとするものの、「世代間扶養というシステム」に乗り移った段階で、人口減少という事態には耐えられないことを考慮すべきだった。

導入されてしまった今では、どこかでリセットをかけないともうシステムの維持が困難になっている。
そんな時のために、「国」というものには信用が付与されている。
それが国債
今こそ「脱世代間扶養」のために国債を大増発し、「当事者扶養の年金システム」へと変える時ではないだろうか。
今の若手も、大きな荷物を背負うだけの未来では、勤労意欲も湧くはずもない。
そんなマクロポリシーが何よりも必要な時代ではないだろうか。

傷む米地方財政グリーンスパン氏の予言
「構造的なひずみに直面しているのが地方政府だ。我々は破綻をもっと見ることになるだろう」。10日、ニューヨーク。米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン元議長がシンポジウムで“予言”した。

前日の9日夜、アラバマ州ジェファーソン郡が米連邦破産法9条の適用を申請、財政破綻した。負債総額は約40億ドルを超え、1994年12月のカリフォルニア州オレンジ郡(同17億ドル)を上回る過去最大の地方政府の破綻劇だ。

 グリーンスパン氏はFRB議長時代にオレンジ郡の破綻を見ている。FRBが94年2月に利上げに転じたことで、低金利が続くことを前提にしていた金融派生商品デリバティブ)が裏目になり、巨額の損失が出たのがオレンジ郡だった。ただ、このときは景気がよくなっていく局面。自治体が次々破綻することはなかった。今回は違うかもしれない。言葉少なに語る元議長の胸中にはそんな予感があるように見えた。

 ジェファーソン郡の破綻の主因は、下水道システム改修のために2008年に地方債を発行して実施した資金調達だ。利払い部分でデリバティブ取引を積極的に活用していたが、金融危機裏目に出て利払い負担が一気に重くなっていた。また郡の政治家の汚職問題も発覚。格付け会社からの格下げも受け、財政状態は悪化の一途をたどっていた。

 ジェファーソン郡破綻後の米地方債市場への直接的な影響は、今のところ小さいようだ。調査会社EPFRグローバルによれば「9日時点で10週連続で地方債ファンドには資金が流入している」という。今回のジェファーソン郡の債券は一定の信用保証があり、州政府も支援する意向を示している。債券保有者からすれば大きな債務削減にはならないとの読みが今のところは大勢だ。ただ、下水道利用料が跳ね上がるなど別のところにしわ寄せが向かうため事態の行方に不確定さは残る。

 ジェファーソン郡破綻のほぼ1カ月前にはペンシルベニア州ハリスバーグ市がごみ処理施設の修繕コストの負担に耐えられず破綻した。市長がハンガーストライキまでやって財政再建を探ったが、州政府の介入や増税、公共サービスの劣化を嫌がる市議会が、破産法9条申請の方を選んだ。洋の東西を問わず破産法申請は、信用回復に時間がかかりよほどのことがない限り回避するのが常識とされてきたが「地方政府が破産手続きに入ることに抵抗がなくなりつつある」との見方も浮上している。

 固定資産税など税収の減少、インフラ改修費負担、年金の積み立て不足といった構造問題は、多くの地方政府に共通する。しかも隠れた不安は、地方債市場を支える信用保証制度の傷みだ。すでに金融危機で保証会社の破綻・縮小が続いているが、ジェファーソン郡の規模の破綻が相次げば、保証会社の信用が一段と低下、地方債がさらに格下げされ、金利負担の上昇と、影響が広がる可能性も危惧される。

 市場の問題だけでない。地方の財政難は社会問題として深刻化し始めた。例えばニュージャージー州カムデン。もともと治安の悪い地域にもかかわらず、財政難を理由に警察官を半分近く削る大量レイオフに踏み込んだ。強盗事件でも警官の到着に5〜6時間かかるような事態になり、地元住民の不安は高まる一方だ。予算不足で消防士も減り、囚人を消防活動に参加させる案まである。

 3年前に破綻したカリフォルニア州バレーホでは、警官不足を補うため市民が自警団を組まざるをえない状態にある。「ウォール街を占拠せよ」から始まり全米各地に広がった反格差デモでも、教職員など公務員組合が顔を出している。財政難を理由にした公務員削減が止まないからだ。

 金融危機から3年。米国経済の行方をみるうえで、地方に火種がくすぶるもう一つの債務問題を見逃すことはできない。