ローマ・クラブのレポート「成長の限界」のメンバーでもあるランダース教授の追加発表。
色んな「五十年後の仮説」があるけれど、地球全体の人口の規模や、先進国、新興国、途上国の成長の様子にはどれも似たようなところがある。
不思議に、地球の資源の増量(技術革新)が続き、経済成長は50年以上続く、といった見解はなく、みな「あと半世紀で成長は止まる」というのである。
また格差についても、貧困層は無くなる、といった方向の見解はなく、今と同様か、途上国では変わらず、先進国ではむしろ増えるだろう、という意見も多い。
自分はもうその頃には生きていないが、はたして人類の叡智はこの半世紀でどこまで成長できるだろうか。
先進国かどうかを問わず、世界規模で考えてみるシンポジウムを毎年開催してはどうだろうか。
各国各界の有識者だけではなく、十代や六十代、さらに高齢の人にも加わってもらい、割合まじめに"五十年後"について議論してゆくのである。
最初は「餓えたくない」とか「不安」とか「格差の是正」とか「自分たちの世代の欲求」ばかりが出てくるかもしれないが、真剣に考えれば自分たちの要求ばかりでは、全体がまとまらないのははっきりしている。
未来を考え、だから現実を直視して「痛いこと」も実行していく姿勢が醸成できるのではないかと思うのだ。
見て見ぬふり、考えて考えぬふりをしていては問題は先送りになるだけ。
日本でも有権者が目先に心地よい公約にばかり靡くから、政治家は「そうしたことばかり」を口にする、と考える方がよい。
政治家の無策を嘆くのは「自分のせい」だと思う方が将来のためである。
よく経営論で「将来像を明確にイメージする」ということが言われるが、自分たちの将来の政策、政治、経済、生活をきちんと思索してみることこそがもっとも大事な試みのような気がする。
リアルな五十年後を考えてみたい。
ランダース教授 「世界の人口、80億人で頭打ち」
2013/6/12 19:33
日本経済新聞社は12日、電子版シンポジウム「未来からの警鐘」を都内で開いた。講演では経済・社会予測の専門家でBIノルウェービジネススクールのヨルゲン・ランダース教授が「世界の人口は80億人でピークを迎える」との予測を紹介。日立製作所の川村隆会長は対談で「新事業創造のため、日本で有能な海外人材を管理職にすることも考えていく」と述べた。
講演するBIノルウェービジネススクールのヨルゲン・ランダース教授(12日、東京・大手町)
ランダース教授は1970年代に世界的な影響を与えたローマ・クラブの報告書、『成長の限界』の研究メンバーの一人。新たにまとめた2052年の世界の姿の予測について触れ、女性の社会進出などにより「世界人口の直線的な増加は続かない」と説明した。
今後の経済成長については、米国は「過去40年間で国内総生産(GDP)が最も伸びたが、2040年を境に減少に転じて貧困層が増える」と予測し、理由にサービス産業など生産性の低い労働人口の増加を挙げた。
一方で中国は「今より5倍裕福になり欧州レベルに達する」としたほか、「新興国は半分は裕福になるが残り半分は過去40年間と同じ道をたどる」と見通した。人口減が進む日本は「世界ではネガティブな見方もあるが逆だ」と分析し、環境改善技術を高く評価した。
日立の川村会長は早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授との対談で、「日本企業の成長には新事業創造が必須」とし、実現には「規制緩和が欠かせない」と強調した。
川村会長は「世界で闘うため、人事制度は年功序列から能力型に変更していく」と説明。インドの現地社員で優秀な人材を日本の部長ポストに配置する意向も示した。内田教授は「共通解はなく、それぞれの企業が勝ちパターンを確立することが重要だ」と応えた。
コンサルティング大手のプライスウォーターハウスクーパースの椎名茂社長は、ミャンマーを視察する日本企業で実際に進出する例が少ない実情を挙げ、「韓国や欧米系に比べ非常に遅い意思決定や組織改革のスピード感を高めなければならない」と警鐘を鳴らした。
日経BPイノベーションICT研究所の桔梗原富夫所長は「ICT(情報通信技術)が日本の成長戦略の鍵を握っている」と述べ、「規制緩和、技術の標準化が非常に重要だ」と指摘した。