藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

スマートな老後

今や定年後や老後、年金の記事を目にしない日はない。
それほど関心が高いのは、よほど日常も豊かになり、長寿になった証に違いないと思う。
まだまだ元気な六十、七十代の人たちが自分の年齢だけを気にして「自分も老後に入ったに違いない」という呪縛に囚われているような気がする。
ドラッカーも言っていたが真剣に老後についてを考えるのは七十代後半か八十からではないだろうか。

六十代で定年を迎え、「それから」を老後にしてしまうから、退職時に何千万の貯えが必要、とかおどろおどろしい話になる。
低エネルギー、低消費で暮らすつもりならばそれほど恐れることもないのに。
日経の記事では「月に6万円程度の趣味の費用を考えると1400万円の確保を」とのこと。
月に六万円の趣味、というのはなかなかのコストだと思うがどうだろうか。

仮に、六十代で全く仕事からリタイアした場合、確かに"時間の過ごし方"について事前に考えておかないと、「生活の勘が狂う」ということはありそうである。
いたずらに読書とか映画鑑賞とか釣りとか言っても、なかなか時間を使い切るのは難しいかもしれないと思う。
月に六万円もかけず、充実した一年を過ごしていくには「上達する性質」の趣味をぜひとも準備しておくべきではないだろうか。
運動とか、食べ呑み歩きとか、は健康が損なわれたら直ちに支障が出るし、旅行が趣味、というのは楽しいかもしれないがお金もかかる。
それこそ若いうちは気がつかなくとも、「お稽古ごと」に属することを一つか二つは準備しておきたいものである。

自分などは歴史とか文学の研究に打ち込む、というタイプでもないし、スポーツもあまり好まないタチである。
なのであまりお金のかからないテーマを今から考えておく、というのは何千万円にも匹敵する重要なテーマなのだと思うのであった。

趣味を一生楽しむために 最低1400万円確保
趣味の持ち方(4)
2014/9/23 7:00
日本経済新聞 電子版
今月は趣味とお金について考えてきました。しばしば趣味は経済的問題と直結していることに多くの読者が気づいたと思います。
老後を考えても同様です。むしろ老後は収入が限られる分、「趣味の予算」を意識しなければなりません。重要なのは現役時代に老後の趣味も意識して資産形成をはかることです。

■老後の生活だけなら公的年金で何とかなる
会社員として定年まで勤めあげた人であれば、老齢厚生年金と老齢基礎年金(国民年金分にあたる)が受けられます。夫婦であれば老齢基礎年金は2人がそれぞれ受けられますし、共働き夫婦なら老齢厚生年金もそれぞれ受けられます。

会社員と専業主婦のモデルケースでみても、月額22.7万円の年金が受けられます。新卒社会人の初任給より高い水準です。経団連の「新規学卒者決定初任給調査結果(2013年3月卒)」によると大卒の初任給は20.9万円です。しかも年金生活者は税金の負担が低く厚生年金保険料を納めずにすみますから、手取りではもっと差がつきます。

定年時に持ち家を取得している前提なら家賃もかかりません。これだけの年金額があれば普通の食事をし、必要最低限の衣服を買うには困らないはずです。
しかし、それは「老後の日常生活のことだけをいえば」の話です。確かに公的年金だけで衣食住を維持することはできるでしょう。ですが老後が20年ある時代に味気ない話です。

■老後のお金をためるのは一生趣味を楽しむため
よく老後のために3000万円をためましょう、という話があります。一部は超長寿への備え、消費増税や健保・介護保険の自己負担増への備えとして欠かせませんし、計画的に残しておく必要があります。

しかし、すべての老後資金を手つかずで20年残しておくために3000万円ためるわけではありません。むしろ、毎月少しずつ取り崩しながらセカンドライフを過ごすのが一般的です。

総務省の家計調査年報(平成25年平均)でも、高齢夫婦無職世帯(つまり年金生活世帯)においては公的年金だけでは不足で、毎月5万7592円の取り崩しが生じているとされます。この水準は「教養・娯楽費2万6055円」「交際費3万1612円」の合計にほぼ匹敵します。
もし趣味に毎月5.8万円出費するなら、20年のセカンドライフで1392万円必要です。これがセカンドライフを通じて一生趣味を楽しむ予算となります。

■自分の趣味を把握し、必要な額を備える
先々週に指摘しましたが、お金がかかる趣味とそうでない趣味があります。お金がかかる趣味も年間100万円以上かかるものもあれば、毎月数万円程度で済むものもあります。

私たちは他ならぬ自分のセカンドライフにおいて、趣味にかかる予算を把握する必要があります。なぜなら、セカンドライフを通じて趣味を楽しみ続けるための予算が大きく変動してくるからです。

先にあげた1400万円の予算はあくまで統計的な平均値にすぎません。それ以上に趣味のお金を投じたいのであれば、老後の準備資金を上方修正しなければなりません。趣味だけで老後に3000万円使いそうな人は、3000万円の貯金でリタイアしてはいけないわけです。

なお、統計的に65歳の平均余命は男性が約19年、女性が約24年です。20年くらいの予算を確保しておくと、セカンドライフの趣味の予算としては十分でしょう。自分なりに「セカンドライフの趣味コスト」を概算してください。

■今趣味をセーブして老後のお金をためる
現役時代の今(特に独身者)と同じ予算を年金生活でも趣味に投じることができるかどうかは、自分のがんばり次第です。それを自覚しなければ、現役時代は趣味をたっぷり楽しんだのにセカンドライフは趣味に回す予算が全くない、となってしまうでしょう。

もし人生を通じて趣味を楽しみたいのであれば、今の趣味を少し抑えて、老後のお金をためることも考えるべきです。なんとなく老後の家計のために貯金するのは楽しいことではありません。実行は困難です。

しかし、今のガマンは将来の自分の趣味に還元されると思えば、老後資金準備も少しだけ前向きに考えられるのではないでしょうか。

趣味にお金をかけるのが大好きな人たちにとって、その予算をゼロにされるのはとてもつらいことです。自由な時間がありあまるセカンドライフだというのに、趣味の予算を緊縮するのはつまらないことです。当然ながら趣味も楽しめない老後はバラ色とはいえません。

自助努力の目的はまさに「死ぬまで趣味を楽しみつくす」ためだと考え、バラ色老後の備えをしてはいかがでしょうか。まずは毎月数千円でもかまいません。老後への資産形成をスタートさせてください。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『お金の知恵は45歳までに身につけなさい』(青春出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる(@yam_syun)。ホームページはhttp://financialwisdom.jp