藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自由に働く時代。

日本の社会人の象徴だった初任給が揺さぶられている。
かくいう自分も、就職の時に「なんでこうもすべての会社の初任給は20万円に揃えられているのか」と不思議に思ったものだ。
年功序列はともかく、「終身雇用」の色は未だに濃く、一時期は「日本的経営」のお手本のようにも取り上げられていた。
しかし時代は遷ろう。

自分は雇用契約は、お金次第で絶対に流動化したほうがいいと思うが、いよいよ今年あたりから「日本的雇用」は変わり始めているのだと思う。

同質性を最優先した初任給や昇級のシステム、失業保険や退職金。
全社員を対象にした就業規則や割増し賃金制度とか。

「スタートアップの俺についてきてくれるのなら月に50万出す!」とか。
大企業でも「当プロジェクトは出来高制、ストックオプションを出します!」とか。

そう思えばこれまでの雇用慣行というのは、凄まじく「右向け右」だった。
気持ち悪いくらい。

あまりに狩猟的に報酬が上下するのも殺伐とするけれど、仕事の内容とか、パフォーマンスとか、ゴールとか、そんなものに個別に呼応していく時代がついに来たようだ。

みんなが喜んで自発的に参加してくれるような仕事はやりやすくなるのに違いない。

中国発「初任給40万円ショック」 賃金革命 (ルポ迫真)

 4月1日に社会人になった吉田真也(24)は大学でコンピューターサイエンスを学んだ。就職活動中、何社かから声がかかり、選んだのがいま東京・新宿の本社に毎日通うLINE。「自分の技術を適切に評価してもらえている」というのが入社する決め手になった。

 そう感じたのは就活中の2016年12月だ。18年春入社が内定した吉田は会議室で採用担当者と向き合った。「これが吉田さんの初任給です」。福利厚生など労働条件を一通り説明した担当者はおもむろにホワイトボードに数字を書いた。

 同社のエンジニアの初任給は最低で年間501万6千円。選考過程の成績に応じて高くなる。吉田は通常の正社員だが成果に応じて毎年の給与が決まる年俸制。成績優秀者の初任給が100万円以上高い「スペシャリスト選考」枠に選ばれた。

 経済産業省の16年の調査によると日本のIT(情報技術)人材の20代の平均給与は年間413万円。米国の1023万円に比べると少ないが、世界規模での人材争奪を意識する日本企業も徐々に引き上げている。

 初任給を見直す動きも目を引く。売り手市場という理由だけではない。能力や意欲があり結果を出す人材に厚く配分する仕組みが初任給にまで行き着いた。LINEの人事担当執行役員、落合紀貴(43)は「個々人が納得する年俸を提示しなければならない」と言う。

 3月上旬、フリマアプリのメルカリ(東京・港)にエンジニアとして1カ月後に入社予定の毛利竹宏(23)にメールが届いた。差し出したのはメルカリ人事部。入社は半ば決まっているのに、「メルカリの一員となっていただきたく、以下の条件で採用オファーをさせていただきます」と恭しい文面だった。年俸は1年前に決まっていた額よりも高かった。

 一部の内定者の年俸に入社前のインターンシップなどの成果を反映し数十万円から数百万円を上乗せする制度が適用された。毛利は米子会社で新機能を開発した実績が評価された。「メルカリで本気で世界を目指したくなった」。毛利は言う。

 日本企業の人事担当の間で昨夏から「ファーウェイ・ショック」がささやかれる。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の日本法人が理工系専攻者を対象に、いくつかの職種で大卒予定者40万1千円、修士修了で43万円を提示していた。

 「欧米企業にやっと肩を並べたレベルで、珍しくはない」というのが華為技術日本法人の公式回答。だが、業界ごとの横並びが多かった日本企業に、初任給から能力にみあった待遇を用意しなければ優秀な人材を獲得できなくなるとの危機感が急速に高まった。

 「入社後は給料が上がるけど初任給が低いのは不満だった」。サイバーエージェント社長の藤田晋(44)は17年11月、社内の食事会で若手のエンジニアの声を耳にした。すぐに制度変更を指示し、今春入社の約50人のエンジニア職を対象に一律の初任給制度を廃止した。専門技術を持つ人材に年720万円以上を支払う取り組みも始めた。

 技術のディスラプション(創造的破壊)が人材獲得競争に拍車をかける。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)は企業の盛衰を直接左右する基幹技術となった。大和総研主任研究員の溝端幹雄(45)は「日本企業は潜在能力を重視して新卒を採用してきたが技術革新のスピードが増し即戦力が重視されている。実力主義の給与体系が広がる可能性がある」と話す。

 初任給だけではない。ファーウェイは時に年収3千万円ともいわれる条件で日本の電機大手から社員を引き抜いている。待遇を上げなければ、人材を採ることも流出を防ぐこともできなくなる。

 「今、引き上げないと競争力が確保できない」

 「ベース給まで上げる必要があるのか」

 今春、ベース給で15年ぶりの引き上げを決めたソニー。一時金を含めた年収ベースで5%増となる。議論を始めた17年末から意見が二分した。

 ベース給引き上げは長期間にわたり業績への影響が大きいが、ソニーというブランドで採用を有利に進めた過去と今とは異なる。人事企画部統括部長の宇野木志郎(45)は「電機業界全体が埋没するという危機感があった」と振り返る。年功序列や業界横並びの賃金制度はもはや通用しない。

 (敬称略)

 大手製造業の主導で賃金相場が決まるモデルは崩れた。生産性や国際競争力を高めるには賃金をどうすればよいのか。