藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

形式主義の終わりに。

欧米と日本の年間労働時間の比較だという。(週休二日だとすれば、平日の1日あたり3時間近い差だ)
日本はこの25年間変わらずの数字で、さらに成長率は何と欧米の1/3のだという。
無駄というか、日本の「硬直性」を表すショッキングな数字である。

最近、銀行などがRPAなどと言って「間接業務がなくなる」と騒いでいるが、何を今さら。
自分は出自がIT系なので知っているが、原因は「行政の規制」だ。
流通やサービスの世界ではとうに電子化されていたものが、特に金融分野では未だに「手作業や自主規制や業種規制」が義務付けられているものが何と多いことか。

与信審査とか、対面販売とか、リスク説明とか、個人情報とか、業種規制とか。
アリペイやamazonが一年で飛び越えてきたことを、30年もかかってようやく気づいたことになる。

銀行のシステムかを手がけた時に、あまりの手続き書類の多さに驚いた。
IT屋として直感的に「この業種、長くは保たないな」と感じたのが20年ほど前のこと。
本格的に「そういう部分」が自動化される局面になってきた。

いよいよ本音で「必要なこと」を考える時代になったのだ。

変革までに残された時間軸
働き方改革が叫ばれている。短時間労働で生産性の向上が求められるが、長時間労働による頑張りを評価する管理職も依然多い。ある程度の長時間労働が可能な定型化された業務は、いずれ機械に代替される。

人間にしかできないことは、アイデアを生み出すことやチームを作って全体をデザインするリーダーシップなど、新しいことを思考することだ。だが、人間が頭を使って集中できるのは2時間が限界といわれる。長時間労働では力を発揮できない。また、アイデアを生み出すには、自分とは異なる価値観の人との触れ合いが不可欠で、そのための時間を作ることが重要だ。

欧州は年1400時間の労働時間で年2〜3%の経済成長を実現。日本の労働時間はこの25年間、約2000時間で変わらず、1%程度の成長率。製造業の現場で改革が進み、高い生産性を実現しているのに対し、管理部門の生産性の低さは顕著だ。本社と現場の意識のかい離も潜在的リスクだ。社会は変わっているのにそれに適応できない企業風土が、日本経済の長期低迷の一因となっている。

生産性向上には多様性に富んだ異質な価値観を取り入れることが不可欠だ。そうした組織風土を作る具体的な施策を遂行できるか、経営者の覚悟が試される。

ある企業で勤務年数や学歴、性別、年齢、名前などを伏せ、キャリアと現在の職務、将来の希望で評価して配置転換したところ、多様性が進み、生産性が大きく上がった。多様性あるグループは居心地の悪さは感じるが、高い成果を出したという米国の研究もある。

人間は物理的な制約を課すと、解決のためのアイデアを生みだす動物だ。時代に適応した組織運営のためには、多少の居心地の悪さがあっても多様な人材を組み合わせた意思決定が必要だ。まずは経営陣の選定において、異なる価値観をもつ人を選ぶことから始めることではないだろうか。

テクノロジーによる社会構造の変化は時間軸の捉え方が成否を握る。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入で事務作業の多くが自動化される。例えば、監査法人では3〜5年で業務の8割が代替されるという。働き方改革と人材育成に残された時間はない。これまでの価値観を捨て、意識を変えることだ。
(小五郎)