藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

信用こそワタシ。


10年ほど前に「知らない人に会う前にその人をググってから」というのが流行っていた。
そもそも検索して出てこない人は旧人物、というわけだ。

ネットは醜聞も広がりやすいが、少なくとも「確かなレーティング」はどんどん進む。
今は金融機関が持っている「クレジット」とか「犯罪歴」とか「病歴」とか「職歴」とか。

格付けはどんどん進む。
すでにネット通販では、頼んでもいないのに「あなたはシルバー会員です」とか言われている。
いろんな「自分の格付け」がほとんど露出されるのはそう遠い将来ではないと思う。

「格付け」こそが「未知の相手に自分を証明する」唯一の手段になってくると、もはや「格付けこそ」が自分のアイデンティティになってしまいそうだ。
酒癖が悪く、出入り禁止になったりしていると街中の居酒屋にも入れないかもしれない。
サイバー社会の恐ろしい部分である。

「私」が奪われる(3) AI依存どこまで マネー・信用…人生すら
 2017年12月、米ロサンゼルス近郊。3カ月に及んだ人工知能(AI)の国際競技が幕を閉じた。世界90チーム以上の技術者が集結したが、人は脇役。戦いはAI対AIで繰り広げられた。

画像の拡大

 「現金支払機の画像にフィルターをかけ、防御システムを欺け」。課題を受けたAIが見えない空間で超高速の自動攻撃を繰り返す。街頭の監視カメラへの応用を想定した競技だ。攻撃側が認識を狂わせるノイズを埋め込むと、防御側のAIが検知してはじき出した。

猛烈な成長速度

 大量のデータを操るAIが進化し、いつの間にか人知を超えた力を持つ。そんな「データエコノミー」が実現し始めた。

 6月13日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見。その中継をじっとにらんでいる「目」があった。中国・香港に拠点を置くベンチャー、エモティクスのAIシステムだ。

 「賃金上昇には時間がかかる」。パウエル氏が答えた瞬間、AIが反応した。人の目には冷静に見えても、見逃さない。眉間に一瞬、刻まれたしわや口元のゆがみを検知。AIは会見中、賃金上昇の鈍さにいら立ちを示す「嫌悪」の感情を計15回、読み取った。

 経済予測に役立つ金融トップのデータはヘッジファンドに高く売れる。野村証券の水門善之氏も、欧州中央銀行のドラギ総裁や日銀の黒田東彦総裁を分析する。

 「0.2秒ごとに表情を読み取る」(エモティクスのレイ・ホーラン最高経営責任者)、「一瞬の表情が感情のデータになる」(水門氏)。何事にも動じないポーカーフェースの特訓を受けても、AIは新しい癖を学習し先回りする。

 AIの力にあらがえないなら、その力に乗る方が賢明かもしれない。

 「点数を上げるために頑張った」。中国・上海の男性会社員、蘇静さん(仮名、35)が気にする点数はアリババ集団の「芝麻(ゴマ)信用」。一人ひとりのユーザーを950点満点で評価する。

 学歴や職歴から資産内容まであらゆる情報を提供。対話アプリは高評価の友人とだけ、公共料金や税金は滞納しないよう心がけた。アリババのAIはブラックボックス。評価対象は不明だが「優等生」として振る舞う方が有利な傾向はあった。

口コミより信用

 点数が765点まで上がった蘇さんは、電子決済の与信枠が600点台だったときの2000元(約3万4千円)弱から1万5千元に上昇した。

 点数は1億人が登録するお見合いサイトにも掲載され、AIのスコアが口コミより高い信用力を発揮する。そんな状況は不気味でも「実利があるなら構わないという人が増えている」(上海在住のコンサルタント)。

 気が付けば生活のあらゆる場面にAIが浸透し、AIに支配される時代が訪れようとしている。ただその判断は常に正確とは限らず、往々にして偏る。どこまでをAIに委ねるのか。真剣に考え始めるときだ。

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