藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

10年先からのアドバイス。

*[次の世代に]自分に訊け。
鴻上尚史さんの人生相談より。
村上春樹氏の人生相談も読んだが、こういう分野は独特な難しさがあると思う。
もちろん茶化すわけではなく。
かといって事実を詰問するわけでもない。
それでいて、時には問題の焦点を明るく希望的なものに誘導したり。
時には厳しく批判したり。
時には自嘲的に共感してみたり。
「どこに焦点を当てて、どうまとめるか」という武者修行のようなものだろうか。
(ただこうした相談にフィードバックがないのは残念だ。まあやり始めるときりがないのかもしれないが)
 
で。働いて30歳で体調を崩して就職に悩む人からの相談。
「まだまだお若いのに」と自分などは言いたくなってしまうが、当人にとっては深刻に違いない。
どんなアドバイスも、当人にとっては「それが最大の問題」である。
相対的な事例を引いて「大したことないよ」というのは、頭では理解できても実感がないだろう。
そこで。
「あなたの10年後から、今のあなたにアドバイスをもらいなさい」というのは面白い。
他人ではない。
10年後の私。
今の延長だ。
しかも50年後とかの、そんなに先ではない。
30歳なら40歳の。
50歳なら60歳の。
70歳なら80歳の、「自分との対話」を促すのはまさに「未来の内省」を促すものだ。
普通内省は過去を反省するものだが、「未来から過去を内省する」というスーパービジョンみたいなやり方だ。
 
25歳の自分が今の15歳の自分を見てもいい。
いろいろと助言できることがあるのではないだろうか。
65歳の自分が55歳の自分を見るように、これからのことを考えてみようと思う。
 

就活で「絶望」… 30歳男性に鴻上尚史が勧めるパワーの出る一言とは?

連載「鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」

2019.4.16 16:00#就活
 鴻上尚史の人生相談。2年前に過労で体調不良を起こし、焼き鳥チェーン店を辞めたという30歳の男性。最近就職活動を開始するも、採用試験に落ち続けてふさぎ込む相談者に鴻上尚史が贈る、人生を生きていくための、いくつかのコツ。
 
【相談25】就活がうまくいかず、絶望的な気持ちです(30歳 男性 ぼーず)
 
焼き鳥チェーン店で5年働き店長にもなりましたが、2年前に過労で体調不良を起こし、会社を辞めました。大学時代にアルバイトしていて、そこからなりゆきで社員になったのが間違いでした。もう、心身ぼろぼろでした。大好きだった彼女にも別れを告げられました。
 
ですが病院にも通い、最近、なんとか再就職のための活動を始めました。今度は本当に続けられる仕事、興味がもてる仕事、人間として扱ってくれる会社、と思って活動しているのですが、のきなみ落ちて、絶望的な気持ちです。
 
でも、もうちょっとがんばりたい、自分の道を見つけたい。鴻上さん、こんなときに前向きになれるための、おすすめの気晴らし方法があったら教えてください。この鴻上さんの相談連載、読んでると本当に救われる気持ちになることがたくさんあります。ぜひ、僕にもアドバイスをお願いします!
 
【鴻上さんの答え】
 前向きになるための、気晴らし方法ですか。うーん。そんな特別な方法はないですねえ。
 
美味しい物を食べるとか、親しい友達と騒ぐとか、力をくれる名作の映画や演劇を見るとか、旅行に出るとか、有名な遊園地に行くとか、たっぷり寝るとか、好きな作家の小説を読むとか、美術館に行くとか、好きな音楽を聴き続けるとか、青空を見上げるとか、僕が落ち込んだ時にすることは、こんなことです。
 
あと、口癖として「大丈夫」と意識的に言うことです。放っておくと、「もうだめだ」と言いそうになる時、無理に「大丈夫」とつぶやくのです。
 
言葉というものは不思議なもので、「大丈夫」と言うと、本当にそんな気になってきます。なんとかなるという気持ちになって、パワーが出てくるのです。
 
だまされたと思ってやってみてください。
 
あと、「自分は、10年先から戻ってきたと思う」という方法も使っています。
 
ぼーずさんは、今、30歳ですが、本当は40歳だったと思うのです。で、本当は40歳だったのに、タイムマシンを使ったか、時間の奇跡が起こったかして、10歳、若返って今、いるんだと考えるのです。
 
どうですか? 本当は40歳だったのに、30歳に戻れたと思ったら、嬉しくなりませんか? そして、まだまだやれるっていう気になってきませんか?
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「もう30歳だ」と思うと、パワーが減ってきます。でも、本当は40歳だったのに、奇跡が起きて10歳戻ったんだ、「30歳に戻ったんだ」と思うと、まだまだやれそうな気になりませんか?
 
40歳の人が、「もう40歳だよ」と言うのではなく、「本当は50歳だったのに、10年、若返ったよ」と考えるのです。
 
50歳の人は60歳だったと、60歳の人は70歳だったと考えるのです。そして、「奇跡が起こって、10年若返った」と思うのです。
 
どうですか、ぼーずさん。いい気晴らしになるかどうか、ためしてみてください。
 
まあでも、30歳は本当に若いと思います。まだまだ何でもできる時期です。焦らず、ゆっくりと。
 
あ、もうひとつ。0か100かと考えることをやめるってのも、結果的には気晴らしになります。
 
若いと、人生を「0か100」だと思い込みがちです。
 
「全然ダメ」か「最高」かの極端な二つになりがちです。
 
若い俳優は、例えば、二時間の芝居の最初のシーンで失敗すると「あ、今日はもうダメだ」と演技を投げがちになります。
 
そして、夜、飲み屋で「今日は0点だった!」と悔しがるのです。で、うまくいった日は、「今日はサイコー! 100点!」と騒ぐのです。
 
でも、演出家としては、最初のシーンで失敗しても、投げ出さないで、なんとか踏ん張って欲しいと思うのです。
 
人生は、0か100かではなく、48点とか76点とか54点とかで生きていくものだからです。いえ、生きないとしょうがないものだからです。0点か100点ですむのなら、こんなに簡単なことはありません。でも、中途半端な68点でも必死に生きていかなきゃいけないから、人生はしんどいし面白いんだと、僕は思っています。
 
ぼーずさん。就職活動の中でも、そして、就職が決まっても、いろいろあると思います。その時、0か100という考え方ではなく、69点とか82点とかでうんうん言いながら生きていくコツをつかむと、ずいぶん、生きるのが楽になると思います。
 
どうですか? ぼーずさんに、素敵な仕事が見つかることを祈ります。