*[ウェブ進化論]センサーとともに。
アシックスが「靴底に入れたセンサーでランニングのデータを取得する」スマートシューズを発売するという。
こういうのは「これからのIoT時代」を否応なく想像させる。
もうトイレもベッドも枕も財布も衣類も移動も仕事も…なんでも「センサー」される時代になる。けれどそれを窮屈に感じる必要はなく、「使い方さえ恣意的でなければ」自分たちの生活の向上にすごく役立つだろう。
どうも「健康状態を伸ばす」方向に技術は働きそうで、個人情報云々…と言う前に自分たちは「今見えていないものを可視化する」と言うITの浸透をよく見ておかねばならないだろう。
「人のすべての営みが材料になる」という時代には、恐れよりも前向きなアイデアがあってほしい。
いろんなセンサーがデータを集めれば、「人の老い方」についてのデータなんかも集まるだろう。
今の自分たちが考えていることを「そのまま受け付ける」ような機能もセンサーにはある。
そしてさらに。
せっかく靴にセンサーを組み込むのなら。
人の靴の中に簡単な発電機を入れ込んで、「人間の自家発電」をしてはどうだろうか。
自給自足を、まず自分の足から始めてはと思うのである。
2020年2月23日 4:30
スマートフォンにスマートスピーカー、さらにはスマートテレビにスマートカーと、IoTや人工知能(AI)技術の進歩により従来の製品に「スマート」をつけた新しいカテゴリーの製品が様々な分野で開発されている。その中でも最近注目しているのが「スマートシューズ」だ。
アシックスのスマートシューズは靴底に入れたセンサーでランニングのデータを取得する
スマートシューズという言葉をたどると、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する自動で靴ひもを締めるスニーカーをナイキが実際に開発した際に、一部で呼び出した歴史があるようだ。そういう意味でまだSFの話と思う人は少なくないだろう。ただ、アシックスが今年、米ラスベガスのテクノロジー見本市「CES」に出展し、日本のメディアでも取り上げられるようになってきた。
先行するナイキは2016年の第1弾発売から技術を進化させ、昨年1月には「ナイキアダプトBB」という自動でフィット感を調整できるバスケットボールシューズの量産モデルを発売した。3月には最新版を発売する予定だ。
一方で、アシックスは「ORPHE」というスマートシューズを手掛けるノーニューフォークスタジオ(東京・千代田)と提携。走るだけでフォームを確認・分析できる靴「GLIDERIDE」を20年中に発売すると発表した。
センサー内蔵のモジュールを靴のソールに埋め込むことで、走るペースやストライドの長さはもちろん、着地の重心位置や接地時間など細かいデータを取れる。
アシックスのスマートシューズ発表会
日本で開催されたアシックスウォーキングの発表会で、筆者は実物を見た。興味深かったのは、靴からランニングやウオーキングのデータを取得できるようになれば、高齢者の生活習慣病の予防や精神状態の変化の測定などにも将来は役立つのではないかという議論だった。
実は、スニーカーのソールにセンサーを入れて走る速度を測るというアプローチは、06年にナイキが「Nike+」とiPodの連携で実施しており珍しくはない。「Nike+」が基本的には走った距離や速度の記録を軸としたのに対して、アシックスは細かい足の状態まで測定できるのが大きな違いだ。
とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。
さらにデータが大量に蓄積されれば、子どもの靴選びや運動習慣をつけるための助言に確実につながるだろう。社会全体として歩き方のデータを見て、転ぶ人が多い場所のデータを分析し、街の設計を変える未来もあり得ない話ではなくなってくる。
重要なのは、走り方や歩き方という誰もがしているが誰も本当のことは分かっていない行動自体が「データ」として蓄積されると、新しい可能性が広がるという点だろう。
IoTやビッグデータというとSFや未来の話で自分には関係ないと思うかもしれないが、アシックス同様に自社の製品のデータを深掘りして見直すと、全く新しい事業領域が見える分野は隠れているのではないだろうか。
[日経MJ2020年2月21日付]