*[次の世代に]売らずに支援する。
日経クロストレンドより。
家具のネット通販で豊富なブランドを揃え、オンライン上でインテリアコーディネーターがレイアウトをCGで提案するフライミー社が急成長しているという。
一見それほど突飛に新しいビジネスには見えないが、随所に消費者の痒いところに手が届く工夫がされているようだ。
それはともかく。
改めてビジネスとは「選択肢の提供」なのだと思う。
サービス業も製造業も、いや農林水産業だって。
「これを買えばこんな付加価値がありますよ」というとに集約される。
「これを食べれば栄養になります」
「これを買えば掃除が不要に」
さらに
「うちで学べば優秀な大学に」
「就職相談はうちに任せて」
「保険は我が社に」
「投資は任せて」…
つまりそうした「決断」に自分たちは弱く、悩む。
あらゆる会社は「そうした悩める人たちの背中を軽く押す」ということを生業にしているのだと言えそうだ。
初めから自分の売りたい「何か」を熱心に勧めるのでは二流。
相手の事情を知り、相手の決断をサポートしてこそが商売人ということだ。
けれどそう言えば、不動産屋さんってこれに近くないだろうか?
「家具業界のZOZO」 撤退続きのネット通販で急成長
2020年3月22日 2:00
家具・インテリア専門EC「FLYMEe」を運営するフライミーは、家具版のZOZOを標榜する
家具・インテリアの電子商取引(EC)サイト「FLYMEe(フライミー)」を運営するフライミー(東京都武蔵野市)が好調だ。2020年7月期の売上高は前年同期比で2倍増を見込む。同社は20年2月26日、ウェブ上でのインテリアコーディネート事業を展開するコシック(東京・渋谷、旧KAREN)に出資。デジタルを活用した新しい売り方を取り込み、さらなる成長を狙う。
FLYMEeは500以上の家具ブランド、2万点超の商品を扱う国内最大級の家具・インテリアに特化した通販サイトだ。11年の創業以来、急成長を続けている。ここ数年は「毎年、売上高が1.5~2倍で増え続けている」(坂本如矢社長)と好調さをアピールする。
ブランド横断型の家具・インテリアの通販サイトは、大手企業が相次いで撤退している。19年6月にリクルートライフスタイル(東京・千代田)が「TABROOM STORE」を停止。EC事業のベガコーポレーションは19年11月に「Laig」を閉鎖した。いずれも「ブランドが十分にそろわなかったことが要因だろう」と坂本社長は分析する。
FLYMEeはブランドとの信頼関係を築き、500以上のブランドの商品を扱う
そうした中、競合他社にはないブランドを豊富にそろえていることが、FLYMEeの成長の源泉になっている。FLYMEeが扱うブランドの4割は、ネットだと同サイトでしか購入できないという。「家具・インテリアはブランド側の意向から、無店舗型のネット通販では契約しにくいブランドが多い」と坂本社長は説明する。そうしたブランドをネットで一覧して買い物できる利便性の提供で、家具・インテリア好きを顧客として取り込んでいる。
サイト成功のポイントは?
フライミーはさまざまな家具・インテリアブランドを集約し、比較できるオンラインプラットフォーム事業の展開を目指して創業した。ネットにこだわったのは家具・インテリアの主な販路はネットに移っていくと考えたからだ。「9割の商材は市場に出ていない」と坂本社長は言う。大型家具は広い展示スペースを必要とするわりに売りにくい商品。「競合他社は雑貨比率を上げて、家具の比率を下げている」(坂本社長)。一方、ネットなら「陳列スペース」は無限だ。
FLYMEeの開発に当たっては自社でエンジニアを抱え、サイトとしてのブランド色をそぎ落とし、扱うブランドの商品の価値を的確に表現できる設計を狙う。「個々のブランドが立ちやすいアパレルと比べて、家具・インテリアは知られていない」(坂本社長)ため、購入した店舗のほうが印象に残りやすい。そうならないように、家具・インテリアブランドの世界観を伝えるため、サイトデザインではFLYMEeの存在感をあえて薄くしている。
自社の開発部隊でSEO対策
そうした運営思想をブランド側に伝えることで、イメージを重視してネット販売に消極的なブランドの信頼を得てきた。「ZOZOは販売するサイトデザインや運営企業の商材に対する理解力、その信頼があってブランドが集まった。当社もそれに近い」と、坂本社長は自社を黎明(れいめい)期のZOZOに例えて説明する。
開発部隊を自社で持つことは、マーケティング上も大きな意味を持つ。フライミーは他社にはないアイテムを多数そろえているため、そもそもロングテールで検索サイトから集客しやすい。加えて、検索サイトなどが検索表示の仕組みを変えたときにも、機動的にサイトに改善を加えられる。そうしてSEO(検索エンジン最適化)を強化し、検索サイト経由の集客力を高めている。
商材の豊富さは消費者向けだけではなく、BtoB(企業向け)事業の成長も後押ししている。消費者と同様に、工務店やデザイン事務所、最近ではシェアオフィス事業者などが網羅的に家具を扱っているFLYMEeのサイトをカタログ代わりに活用する。フライミーは法人営業部部隊を組織として持ち、取引のあるブランドの商品を一括で仕入れられる。BtoB事業は消費者向け事業以上の高成長率で、売上高は前年比でおよそ3倍で増加しているという。
とはいえ、フライミーにとって主軸はやはり消費者向け。家具・インテリアを自由に選べる市場作りが命題だ。ところが多数のブランドや商品をそろえていたとしても、どれを選べば自分の思い通りの部屋になるか分からないという、知識のギャップがある。洋服などと違い、家具を一括で購入して部屋全体をコーディネートする経験は人生でそう多くはないだろう。選ぶという行為には知識や経験が必要になる。
また「家具はブランド単位の認知が低い。その上、どこで売っているかが分からない」(坂本社長)課題もある。好きな家具・インテリア店に関するアンケート調査では「無印良品」「ニトリ」「IKEA」「Francfranc」が上位を独占する。「日本の市場で高付加価値の家具が普及しなかったのは、そういう商品を売っている場所が知られていなかったからだ。その結果、(消去法で)大手ブランドが選ばれていた」のがその理由だと坂本社長は説明する。
ベンチャー投資でマーケ強化
このマーケティング課題を解消するため、フライミーはベンチャー企業への投資を決めた。投資先はネットを介したインテリアコーディネートサービス「COSIC(コシック)」を展開するコシックだ。コシックはもともと「KAREN」という名称でサービスを展開していたが、フライミーからの出資を機に社名とサービスのブランドを刷新した。
コシックはインテリアコーディネーターを組織化し、ネット上で部屋のトータルコーディネートを一括して請け負うサービスを展開する。家具選びの知識を持たない利用者に代わり、専門家が理想の部屋を実現するための家具を選定する。これなら家具のブランドを知らない消費者でも、納得して購入してもらえる可能性が高い。
利用するにはサイトに会員登録し、まずコーディネート料として1部屋当たり1万4900円を支払う。その後、オンライン上で部屋の写真、間取り、希望する部屋の雰囲気、自身のライフスタイルなどを入力する。その情報に合わせて、契約するインテリアコーディネーターが選んだ家具を3D画像で配置し、イメージとして提供する。手持ちの家具は2点まで追加可能。また、イメージの修正は1回まで対応する。
コシックが制作した部屋のコーディネートの3D画像
家具のイメージ図は独自で実物の家具を3D素材にモデリングをして配置するため、「部屋の3Dのイメージ図の再現性が非常に高い」と坂本社長は評価する。ネットだけで完結する形で家具を提案する上に、決して安くない商材だ。実際に家具を購入して部屋に配置した後に、期待していた通りの部屋にならなければサービスとしての信用を損なうことになる。だがコシックの技術力があれば、その心配は少ない。しかも、「スタートアップ企業にしては受注数が多かった」(坂本社長)ことから、コーディネートサービスが顧客拡大に有効だと考え、出資を決めた。
ただし、コシックは高い技術力を持つものの、先述した通り、家具・インテリアブランドとの契約の難しさから扱えるブランドが限られていた。そこで出資後はまずコシックとシステム連携をし、インテリアコーディネーターがFLYMEeの扱うブランドの商品を自由に提案できるようにする。これだけで、提案力の飛躍的な向上が期待できる。
さらに将来的にはコシックのサービスを、FLYMEe上に組み込むことも視野に入れる。以前からFLYMEeの顧客から部屋のコーディネートを依頼されるケースはあった。ただ、そこまで人を割けなかったというのがこれまでの現状だった。コシックとの連携でこのニーズに応え、シェア拡大を狙う。
(日経クロストレンド 中村勇介)