藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分なりの将来。

マイホームがあり、核家族がいて、その後老後を年金で暮らす、というのは高度成長期の一つの成功パターンだったのだろう。
それが今確実に崩れつつある。

けれど悲しむこともないと思う。
暮らし向き、という意味では今の年代が、過去の歴史の中でも最も豊かであり、寿命も長い。
これほどの暮らしむきになりながら、まだ将来の不安に嘆く姿は、イソップ童話の匹夫のように自分の姿が見えていないのではないかと思う。

人口やGDPが下降線を描き、勢いよく高齢化が進む社会の中で、「これまでと同じような繁栄の型とか、老後の生活スタイル」を踏襲しようと思うから無理があるのである。
もう恐らく、日本中の土地が値上がりは期待できない中で、一生の財産として(年収の数倍もの)巨額の住居(マイホーム)を買う必要があるたろうか。
それも都心の一等地ならともかく、ベッドタウンにそこそこの広さの住居を構えても、自分の老後の生活スタイルに合うかどうかも分からない。
もちろん地価が下がってくれば、必要な時に柔軟に処分するのも困難になってくる。
土地は必ず上がるから、まずはマイホームを無理しても買っとけ!というのはもう過去のスローガンではないかと思う。


それよりも、いろいろと考えておきたいことがある。
老後は、子供や親兄弟と住んでいるかどうか。
(生活スタイルとして)夫婦が別々になっていることはないかどうか。
都会に住んでいるのか、田舎に暮らしているのか。

リアルに考えてみる

自分たちはアリとキリギリスではない。
ともかく、夫婦で60歳までにカネを貯め、65歳までは嘱託で働いて年金までをつなぎ、それ以降は、毎月決まった予算で粛々と食べながら、やがて寿命を迎える・・・

そんなふうに、予め過ごしたくて生きているのではない。
「65歳からの年金モデル」はあくまで典型的な一例なのである。
そうした例をイメージしながら、自分の家族や夫婦で相談し、また自分自身に問いかけながら、自分の一生を考える。

自分は、環境を整えながら、自分ひとりであれば年金よりもずっと低消費で、やりたいことをやりながら死ぬまで生活してゆけるのではないか、と思っている。(まだそれほど鮮明ではないけれど)

今の若い人に必要なのは、そんな「自分なりの将来」を分からないまでも、いろいろと思い描いてみることではないだろうか。
ひょっとしたら、読書や趣味に興じているかもしれない。
文学や社会風俗に興味を持って没頭しているかもしれない。
あまりお金をかけず、世界中を旅しているかもしれない。

本当はどうしているか、完全に予想はできないけれど、でも「自分なりの将来を色々と想像する」ということが、結果自分の将来を作ってゆくことにつながるのだと思っている。
なんとなく、与えられるままに65歳の年金受給を待つ人生、はアリさんの人生であり、さほど面白味のない物なのではないだろうか。
一度の人生、もう少し能動的に過ごしたいと思うのである。

受け身ではやってこない 20代のバラ色老後
 ファイナンシャルプランナー 山崎俊輔
日本経済新聞 電子版
 20代と老後をすぐに結びつけて考えにくいが、定年後に余裕のある老後生活を送りたいのならば、20代以降の生き方が重要なカギを握る。将来不透明な時代を乗り切るために20代からできるマネープランの数々を紹介する。
 若い人に将来の見通しをたずねると、現在に対する満足度は7割近いものの、将来に対しては「同じくらい?」と考える人が65.4%、「悪くなりそう!」と考える人が11.5%いるそうです。明るい未来というのがなかなか想像しにくい時代になっているからでしょう(内閣府「 国民生活に関する世論調査」)。
 別の調査(日経産業地域研究所)で20〜40歳代の男女にたずねたところ、長生きしたいとは思わない人が40%にもなるそうです。年金不安、病気や介護の不安もあってか、長生きすることの不安が大きいことが伝わってきます。
 これは大きな時代の変化です。親の世代や祖父母の世代では「今日より明日がいい日になる」というのが基本的な考え方でした。「今日がんばれば明日はもっと豊かになれる」と思っていたわけです。そしてそれはおおむね実現してきました。しかし、これからはとにかくがんばればどんどん給料が上がるような単純な時代ではありません。そもそも明日の雇用が守られるのかさえ危うい世の中になっています。
 だとすれば、私たちは現代に合った、生き方、お金の使い方、お金の貯め方・増やし方、老後へ向けた準備を考えていく必要があります。私はよく「親のお金の常識は、子どものお金の非常識」と言うことがありますが、そのくらい世の中の変化は著しく、それに対応していくことが求められています。
 そして、特に若い世代にとって重要性が高まっているお金の課題は「老後の準備」です。
 いま定年を迎える世代でも、老後は20年を考えなければならないほど長生きをする時代になりました。また長生きの可能性も高まっています。9割以上の人が無事定年退職を迎え、おおむね4人に1人は90歳を迎えるまで長生きするのが今の時代なのです。
 もちろん、20代の人は医療のさらなる進展や、食習慣の改善や運動等による健康維持の取り組みにより、もっともっと長生きする可能性が高いでしょう。
 となれば、老後の経済的準備は一層大変な課題になります。国の年金に頼り切りでなんとかなる時代ではありませんから、しっかり自分で備える意識が必要です。
 しかし、あきらめる必要はありません。今からでもきちんと備えていく意識があれば、「長生きしたくない老後」を「バラ色の老後」に変えることができます。
 例えば、毎日カフェラテ1杯程度の節約ができると毎月1.2万円の運用原資を捻出できます。これを新卒時から定年退職まで積立投資をすると、年利3%でも1000万円作ることができる計算になります。
 目の前に1000万円という柱をひとつ作ることができれば、「長生きしたくない」なんて気分は吹き飛び、老後をどう楽しむか考えられるのではないでしょうか。
 自分で自分の将来を見据え、しっかり実行に踏み切ることができれば、普通に働く人は誰でも自分の将来を豊かなものとすることができるのです。自分で自分の老後を備えることが今の20歳代の新しい常識になってきたといえます。
 また、老後の準備についてお金の問題をクリアにしていくことは、目の前のお金の問題の整理にもつながってきます。住宅購入の資金繰りや結婚、子育て費用なども「老後の準備」という背骨がしっかりしているとすっきり整理できるようになるからです。
例えば、「高い家を買う前に老後の準備の重要性を知っておけばよかった」「もっと早く老後の準備の重要性が分かっていれば、もっと真剣に子どもの学費を貯めておいたのに」という人が増えています。
 「自分はまだ若いから老後のことなんて」と考えるのは、実は逆です。
 老後のことをしっかり考えることは、毎日のお金の問題をしっかり考えることでもあります。つまり、「バラ色老後づくりはバラ色人生につながる」わけです。
 これから、毎月1テーマを掲げて若い世代のための「バラ色老後の作りかた」を考えていきます。ぜひ一緒に考えていきましょう。
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法律学法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『お金の知恵は45歳までに身につけなさい』(青春出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる(@yam_syun)。ホームページはhttp://financialwisdom.jp