藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

理想の形へ

池上さんの東工大講義録より。
米国家予算(歳出)310兆円、国防費67兆円。
日本の国家予算は218超、国防費6兆円。(2012年)
この破格な予算組成をみても、(さらにはアメリカの国家予算は連邦の負担があって全体では376兆円となっているが)米国がなぜ世界の統治を考え、その恩恵を享受しようともしてるのか、ということがうかがい知れる。
「実入りとコストの関係」が昨今は危うくなってきているということである。

自分たちがリアルに過ごしてきた戦後からだけを見ても、米ソの冷戦、東西ドイツ統合、ソ連崩壊、そして今に至る最大の問題「イスラム・中東問題」が91年から続いている。

同時代を肌で感じてきた自分たちにしてみれば、ほんの数年の出来事にも思えるが、軽く半世紀が経とうとしている。

二次大戦の終わりからみれば、半世紀どころかほぼ70年。
米ソが対立し、中国が資本主義を標榜して台頭、新興国が勃興してきたというのが経済的な変化。
国際関係では欧米・ロシアの覇権から、確実にイスラムが存在を示しつつあるのが今の時代だろう。
何か大きな動きの中で、固まることのない国際情勢も「いつかの安定」に向かっているという風に見立てたいものだと思う。
「貧困の根絶こそが平和」という金言もある。
これからの数百年でどのような統治スタイルを人は発明し、実行していけるのだろうか。
少しづつはそんな「政治・宗教、民族・経済」の均衡へ向かって進んでいるのだと思う。
無人機は人を殺めず、情報探査のみ」を国際協定にしてはどうだろうか。

米国の戦い、終わりなきテロの脅威
戦後世界のかたち(9) 東工大講義録から

2014/4/7 3:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 米国が今春、新しい国防方針を発表しました。陸軍兵力を減らし、海軍の艦船をアジア太平洋に重点配備する計画です。イラクに続いてアフガニスタンからの撤退を進める一方、テロや反米を掲げる国々の脅威にも備えます。しかし、米国は財政危機に直面しており、同盟国の協力も必要としています。日本が掲げる「平和への貢献」や防衛を巡る議論も、米軍再編の枠組みを無視しては語れないのです。

■米軍、アジア太平洋に艦船の6割を配備へ

 米国が3月に発表したのは「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」というものです。戦略の見直しは4年に一度発表し、米国の安全保障政策の指針となります。同盟国や友好国との協力関係を強化し、テロやインターネットの世界を舞台にしたサイバー戦争などの新たな脅威に備えていくのが狙いです。

米国は10年を超えるテロとの戦いで戦費が膨らみ、国家財政の大きな負担となっている(2010年2月、アフガニスタン南西部)=ロイター
米国は10年を超えるテロとの戦いで戦費が膨らみ、国家財政の大きな負担となっている(2010年2月、アフガニスタン南西部)=ロイター

 例えば米海軍は2020年(平成32年)までにアジア太平洋地域に配備する艦船の割合を現在の50%から60%に引き上げます。このほかにサイバー能力を強化して「サイバー特命部隊」を組織する計画なども掲げています。

 米国には2001年(平成13年)の同時多発テロ後、テロとの戦いのためにアフガニスタンイラクでの戦争に突入し、巨額の戦費を投じて経済が疲弊した反省があります。厳しい財政事情を反映して、2015会計年度(2014年10月〜2015年9月)の国防予算案(戦費を除く)は約4956億ドル(約51兆円)となり、前年度より微減となりました。米陸軍は兵力を約15%減らして52万人体制から44万〜45万人体制にします。

 米国経済は2008年(平成20年)のリーマン・ショック後の景気悪化を乗り越え、徐々に回復しています。ところが、慢性的な巨額の財政赤字を抱えています。政府は国債の購入者に満期になった国債の代金を返せない「デフォルト(債務不履行)」という事態に陥りかねない状況にもあるのです。

 米国は対テロ攻撃などを担う特殊作戦部隊の増員など新しい方針を打ち出しました。背景には戦いのかたちが大きく変わってきている事情があります。その代表例が無人機を使った攻撃です。数百メートルから数千メートルぐらいの上空を、それこそ音もなくゆっくりと十何時間もぐるぐる飛行できる無人機を開発し、実戦配備しています。地上攻撃用のミサイルも搭載しています。IT(情報技術)やハイテクを駆使した最先端の軍事技術です。

■操縦者はカリフォルニアにいる

 実は無人機自体は海外の紛争地帯から遠く離れた米カリフォルニア州の軍の基地で操縦されています。その結果、たとえば、こんなことが起きたこともあります。ある日、アフガニスタンのある家に大勢のひげ面の男たちが車で集まってきた。銃も持っていて、発砲している。「何か悪いことをたくらんでいるのだろう。よし、攻撃してやろう」とミサイルを撃ち込む。ほぼ全員が即死状態です。ところが後になって、実は結婚式のお祝いに集まっていた人々だったということがわかりますが、手遅れです。かの地では、結婚式のお祝いで銃を発砲することもあるのです。

無人機の投入によって戦争のかたちが大きく変わりつつある(米軍の無人偵察機グローバルホーク」)=ロイター。
無人機の投入によって戦争のかたちが大きく変わりつつある(米軍の無人偵察機グローバルホーク」)=ロイター。

 無人機攻撃でテロリストの殺害にも成功していますが、まったく関係ない人たちも殺されています。この技術が今、世界で大変大きな問題になっているのです。

 その背景には米国が「テロとの戦い」を掲げて軍事介入したイラクアフガニスタンで、多くの米兵が亡くなり、政権は厳しい批判にさらされてきたという事情があります。無人機を使えば、兵士の人命という代償を払わずに米国への脅威の芽を摘むことができるからです。

 オバマ米大統領は2014年(平成26年)1月の一般教書演説で外交分野に関してこうした発言をしています。一部抜粋してご紹介しましょう。

 「同盟国と共に我々はアフガニスタンでの任務を年末までに完了し、米国の最も長い戦争は終わる。(テロの)危険は残っている。我々は(国際テロ組織)アルカイダの中核指導部を敗退に追いやったが、アルカイダ系組織や他の過激派は世界の様々な場所に根を下ろし、脅威は進化している。(中略)必要な戦争は遂行しなくてはならない」

 このメッセージには、オバマ大統領のアフガニスタン撤退に対する決意だけでなく、10年以上も続くテロとの戦いへの苦悩が映し出されているといえるでしょう。そこで東西冷戦の終結後、米国が直面したテロとの戦いについておさらいしてみましょう。

■リーダー無き、流動化する世界

 1989年(平成元年)12月、当時のブッシュ米大統領パパ・ブッシュ)とソ連ゴルバチョフ書記長によって、東西冷戦の終結が宣言されました。あれから四半世紀がたちました。米ソの緊張緩和によって、世界は核戦争による人類滅亡の危機から解放されました。ベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統合されたことは、そんな新しい時代の幕開けと評価することができます。

 その一方で、ソ連の崩壊や米国の外交分野での影響力低下によって、世界の秩序を強力な軍事力で支配できるような時代ではなくなりました。良い意味でも悪い意味でも、強いリーダーシップを持つ国がなくなったのです。

いけがみ・あきら ジャーナリスト。東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年(昭25年)生まれ。73年にNHKに記者として入局。94年から11年間「週刊こどもニュース」担当。2005年に独立。主な著書に「池上彰のやさしい経済学」(日本経済新聞出版社)。長野県出身。63歳。
いけがみ・あきら ジャーナリスト。東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年(昭25年)生まれ。73年にNHKに記者として入局。94年から11年間「週刊こどもニュース」担当。2005年に独立。主な著書に「池上彰のやさしい経済学」(日本経済新聞出版社)。長野県出身。63歳。

 米政治学者のイアン・ブレマー氏はこうした世界を「G(グループ)ゼロの時代」と名づけました。経済や貿易に関する新しい枠組みは広がっても、圧倒的な影響力を持つ国やグループがなくなりました。いわば世界は流動化してしまったのです。

 そして、新たな危機が生まれました。それがイラク、イラン、北朝鮮などの反米思想を持つ国家の台頭であり、イスラム過激派に代表されるテロ(テロリズム)集団でした。米国はこうした脅威との終わりなき戦いに直面しているのです。

 その始まりを象徴する紛争が1990年代初めにペルシャ湾岸を舞台に起きました。イラクの当時の独裁者フセイン大統領は、1990年(平成2年)8月、豊かな隣国クウェートの石油資源を入手しようと侵攻しました。湾岸危機と呼ばれます。

 同じく石油資源が豊かな隣国のサウジアラビアイラク軍の侵略に危機感を持ちました。石油の輸出先でもある米国に防衛を依頼し、ブッシュ大統領パパ・ブッシュ)は、要請に応えて米軍を派遣します。さらに世界各国に呼びかけて多国籍軍を結成し、1991年(平成3年)1月、イラク軍を攻撃してクウェートから追い出したのです。これが湾岸戦争です。

 当時のサウジアラビアには、後に米国へのテロ攻撃を実行することになるウサマ・ビンラディンがいました。ビンラディンは富豪一族の出身で、イスラム教の聖地メッカとメディナがあるサウジアラビアに、異教徒の軍隊が駐留することが許せませんでした。国王を批判したビンラディンは国外追放となり、反米意識を募らせました。

 ビンラディンは1979年(昭和54年)12月、ソ連軍のアフガニスタン侵攻に対し、戦うイスラム教徒の兵士たち「ムジャヒディン(イスラム聖戦士)」を支援する活動に関わっていました。世界各地から集まってきた兵士たちの名簿を整理するためにつくった組織が後に「アルカイダ」になりました。

 アルカイダのアルは英語の定冠詞「the」、カイダとは「ベース(基地)」という意味です。当時は東西冷戦下、米国はソ連と戦うイスラム勢力を応援しました。結果的に、ビンラディンを育てたと言っていいでしょう。

アルカイダは生きている

 アフガニスタン紛争で実質的にビンラディンを援助したように、中東地域で強大な力を持ったイラク軍を援助したのも米国でした。それは1980年(昭和55年)から8年も続いたイラン・イラク戦争がきっかけでした。イランが反米国家だったからです。

米軍によって指導者のウサマ・ビンラディンは殺害されたが、国際テロ組織「アルカイダ」の活動は拡大している=ロイター
米軍によって指導者のウサマ・ビンラディンは殺害されたが、国際テロ組織「アルカイダ」の活動は拡大している=ロイター

 2001年(平成13年)9月11日の米同時テロの直後、米国のジョージ・ブッシュ大統領は、首謀者はアルカイダを指揮するビンラディンだとして、かくまっていたアフガニスタンタリバン政権に引き渡しを求めます。しかし、タリバン政権はこれを拒否。ブッシュ大統領は「テロリストをかばう者も同罪だ」として、英国と共にアフガニスタンを攻撃したのです。

 2003年(平成15年)になると、ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を掲げてイラクを攻撃しました。湾岸戦争後も政権を維持していたイラクフセイン大統領が大量破壊兵器の開発を進めているというのがその理由でした。また、フセイン政権が、パパ・ブッシュの暗殺計画を立てていたことにも怒っていました。しかし、大量破壊兵器は見つかりませんでした。

 米国の攻撃によって政権は崩壊し、フセイン大統領は死刑判決を受けて処刑されました。この後、イラクは内戦状態に突入します。内戦による混乱は、開戦前から予測できていたことだといわれています。フセイン政権を倒せば、宗教対立や民族対立を抑え込んでいた重しがなくなり、内戦状態になる可能性が高いということを攻撃前に報告されていたからです。

 米同時多発テロから10年後の2011年(平成23年)5月、米軍の特殊部隊がパキスタンに潜伏していたビンラディンを急襲して殺害しました。しかしアルカイダを名乗る勢力は中東やアフリカなどに勢力を伸ばしています。アラブ世界には「反米」という共通の軸があり、兵士として加わったり、水面下で資金援助をしたり、協力者が絶えないからです。

 宗派対立は日本人が考える以上に民族紛争や内戦の大きな火種になります。いわゆる中東の民主化運動「アラブの春」によって、シリアでは独裁的なアサド政権に対する反対運動、民主化運動が内戦へと発展しました。アサド政権は、イスラム教徒をスンニ派シーア派にあえて分ければシーア派に属します。さらにいうと、シーア派の中でもごく少数のアラウィ派に属します。

 つまり、シリアという国はアラウィ派という少数派が多数のスンニ派を支配してきたのです。その結果、スンニ派シーア派という宗教的な対立の色彩を帯びてきて、周辺のスンニ派の国であるサウジアラビアカタールが、シリアの反政府勢力を支援して激しい内戦状態になったわけです。

■「悪の枢軸」と名指しした

 その混乱に乗じて、今度はアルカイダ系組織が入ってきました。シリアで戦闘地域を広げている反政府勢力を攻撃し始め、反政府勢力の支配地域を奪い取ってアルカイダの勢力範囲を広げるという複雑な構図になっているのです。

 米国がテロとの戦いに直面していた2002年(平成14年)、ジョージ・ブッシュ米大統領が演説で、イラクとイランと北朝鮮、この3つの国を「悪の枢軸」と名指ししたことがありました。

イランは穏健派のロウハニ大統領の就任によって、米国との関係改善を進めようとしている(1月、スイス・ダボス世界経済フォーラム年次総会)=AP
イランは穏健派のロウハニ大統領の就任によって、米国との関係改善を進めようとしている(1月、スイス・ダボス世界経済フォーラム年次総会)=AP

 枢軸国というと、第2次世界大戦の際に連合国軍の敵だったドイツ、日本、イタリアの3カ国をイメージさせます。

 イランは1979年(昭和54年)のイラン・イスラム革命で王制を倒した後、テヘランにある米大使館の占拠事件を起こして以来、反米国家として厳しく対立してきました。しかし、ブッシュ米大統領がイランを「悪の枢軸」の一つとして名指しした時、当時は欧米文化にも精通した知識人のハタミ大統領が米国との関係改善を目指していました。核開発疑惑を国際社会から批判され、核開発の凍結を表明してもいました。

 ところがそんな矢先に「悪の枢軸」だと名指しされ、ハタミ大統領の立場が危うくなりました。米国のイラク攻撃もあって、イランでは保守強硬派が台頭し、2005年(平成17年)に反米保守強硬派のアハマディネジャド大統領が就任したいきさつがあるのです。歴史に「もしも」はありませんが、イランと米国の関係改善が進んでいたら、中東情勢は変わっていたのかもしれません。

 イランでは最近の大統領選挙でロウハニという穏健派の大統領に交代しました。オバマ大統領と電話会談をするなど急速に米国と接近しています。

 私は2013年(平成25年)秋にイランを取材した時、こんなことがありました。テヘラン市内に「米国は信用ならない」というポスターが掲示されていたのですが、突然撤去されたのです。どうやって世論調査を実施したのかは不明ですが、「国民の9割が米国との関係改善を望んでいる。だから、反米的なポスターは撤去する」ということになったというのです。

 枢軸国と名指しされたもう一つの国である北朝鮮は、今も米国を敵視する政策を変えていません。核開発やミサイル開発を諦めていないのです。米国を直接対話の交渉のテーブルに着かせようとしているからです。

 事実上の3代にわたる「金王朝」を守るには、米国の軍事介入を防がなくてはならないと考えています。イラクアフガニスタンの政権が崩壊したのは、核兵器を持っていなかったからだと信じています。北朝鮮が国際的に孤立を深める中で、今後どのような手段に打って出てくるのか全くうかがい知ることができません。

■日米同盟はどう変わるのか

 この講義の冒頭で取り上げた米軍の国防戦略は、冷戦終結後のこうした脅威との戦いを踏まえた新たな方針なのです。テロとの泥沼の戦いは終わっておらず、米国が難しい課題に直面し続けることに変わりはないのです。しかし、脅威に対する判断を誤ったり、強引に他国へ介入したりすると、混乱がさらに大きくなって収拾がつかなくなることを歴史は物語っています。

オバマ大統領はアジア太平洋地域を重視する方針を表明した(今年1月の一般教書演説)=ロイター
オバマ大統領はアジア太平洋地域を重視する方針を表明した(今年1月の一般教書演説)=ロイター

 2009年(平成21年)にブッシュ政権を引き継いだオバマ大統領は、終わりの見えないイラクアフガニスタンでの戦いから米軍を撤退させる目標を定めました。いつも米国が撤退の口実にするのは、「米軍がいなくても治安は維持できるから」という言い訳です。ベトナム戦争から手を引く時も同じでした。

 まず戦闘部隊をイラクから撤退させましたが、自爆テロなどの混乱は続いています。撤退方針を決めているアフガニスタンでも、米国の空爆で一時崩壊状態にあったタリバンが復活して攻勢を強めています。依然として治安は好転せず、イラクと同様に混乱が残されたままなのです。

 オバマ米大統領は2014年初めの一般教書演説で、「我々は引き続きアジア太平洋地域を重視する。同盟国を支援し、より安全で繁栄する未来を形作る」と宣言しました。沖縄の米軍普天間基地の移設問題もそのアジアでの米軍再編計画の中にあります。この宣言の意味が、今後の日米同盟を巡る議論の中で明らかになってくるでしょう。今後、米軍と自衛隊の新たな協力関係にも大きな影響を及ぼすことが考えられます。

 米国の新戦略とほぼ同じ時期、中国が発表した2014年の国防予算(中央政府部分)は4年連続で2ケタ増の8082億元(およそ13兆4400億円)となりました。初めて8000億元を超えました。国防予算の公表額では米国に次いで世界2位に相当します。

 しかし実は、公表額の数倍の国防費があるというのは、軍事関係者の常識です。中国は経済成長率の伸びが鈍化しているものの、米軍のアジア太平洋地域での戦略に対抗する狙いがあります。

 報道によれば、李克強首相は3月の全国人民代表大会全人代、国会に相当)で「国家の海洋権益を断固守り、海洋強国づくりに力を入れる」と、領土問題には強い姿勢で臨むことを表明しています。

■中国の強硬姿勢招く可能性も

 日本では安倍晋三政権の下で、日本国憲法の解釈を変更し、歴代の内閣が否定してきた集団的自衛権の行使を巡る議論が動き出しています。その根拠の一つが、国際貢献を前提にした「積極的平和主義」というキーワードです。その背景には、米軍との協力関係を深め、行動範囲を広げ、機動力を高めるようにしようという思惑があります。その根幹となるのが日米安全保障条約なのです。

米軍のアジア太平洋シフトが進む中、沖縄に集中する米軍基地の役割も重みを増す可能性がある(政府が米軍普天間基地の移転先として埋め立てを計画している名護市辺野古沿岸部)=共同
米軍のアジア太平洋シフトが進む中、沖縄に集中する米軍基地の役割も重みを増す可能性がある(政府が米軍普天間基地の移転先として埋め立てを計画している名護市辺野古沿岸部)=共同

 安倍首相は先日、3月にオランダで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議での議論の中で、東アジアで存在感を高める中国の動きをけん制し、「東シナ海南シナ海でも力による現状変更の試みが行われている」と批判したことを明らかにしました。

 先週の教養講座の中で、「ロシアによるクリミア半島の強引な編入は、プーチン大統領が相互依存を深める欧州連合(EU)とロシアの関係、米国の外交分野での指導力低下を読み切っているためだ」と指摘しました。

 これと同じ事態がアジアでも起こる可能性があります。中国の経済成長に勢いがなくなり、民族問題などをきっかけに治安の悪化が広がるような事態に陥った場合、中国がこれまで以上の強硬な行動に出てくる可能性があります。

 米軍のアジア太平洋シフトは好むと好まざるとにかかわらず、日本の安全保障や防衛に関わる問題を引き起こす可能性が高いことを覚悟しておかなくてはならないでしょう。