藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

安易な稼ぎはないこと。

一時は大問題になっていた振り込め詐欺も、次第に複雑化し、もはや「小劇団」が関わっているような大じかけになっていると聞いた。
銀行や町中の交通機関でも注意喚起のアナウンスが盛んに流れ、「親子の電話には合言葉を決めましょう」と言われて、「お父さんの好物は?」「納豆」とかいう会話が挟まる親子の会話も変なものだ、と思っていたら、現実はもっと違う変異を遂げていた。

こうここ数年、銀行の口座開設とか振り込みや現金引き出しの限度額などがどんどん規制を受け、犯罪の余地も少なくなっているだろうと思いきや。

敵もさる者。
彼らは、今度は「現金を下ろして確保するまで」を被害者側の仕事にしたようである。

そして下ろしてきた現金を「受け子」と言われるまあ運び屋のような存在に担当させ、リスクを分散しているという。
受け子は社会人経験のない学生も多く、また受け子を斡旋するのも部品化しているとのことである。
なるほどの顛末。

それにしても、いつも思うのだがこうした「犯罪をプランする」ということには一種独特の「魔力」があるのだろう。
恐らくは犯罪全体のプランや、実行に向けてのスタッフや道具類の手配、成功させるための訓練とか、例外対応への気配りなどを考えると、それは「まっとうな仕事と同様程度の」熱意と努力が必要なはずである。
それでも悪の道に血道を挙げてしまうのには、一度それに染まったら抜け出しにくい心理状態があるのだろうと思う。
古代から、悪事をなす側とそれを捕まえる側の「鬼ごっこ」は変わらぬ関係だけれど、巨悪の中心にいるのではなく「楽して稼げる」という末端の人たちが、「結局は現場で危ない橋を渡り、囚われる構図」というのもまた変わらない特徴であろう。

どうせやるなら悪の中心に、とは言わないけれど、考えなしに人の言われるままになって「使い捨て」では人生つまらない。
というか、そんな人のせいにばかりする人生は気分が悪いものである。
何をするにしても”軽はずみ”という失策には気をつけたいものである。
自分も全くそうだったが、若い時にはこうした「悪魔のささやき」が一度や二度は訪れるものである。

そこで少しばかり冷静になって、一息ついて考えるほうが良いものだ、と特に学生さんには知っておいてもらいたいのである。

軽いノリ、いつしか受け子 女子大生使いSNSで勧誘 若者狙う詐欺のリクルーター
オレオレ詐欺など電話口を通して不特定多数をだます詐欺の被害額は昨年、487億円で過去最悪となった。「振り込め」から「受け取り型」へ。手口を変える詐欺犯の、裾野を広げているのは誰なのか。

 「リクルーター」と警察が呼ぶ存在に行き着いた。被害者から金を受け取る役目の「受け子」を勧誘し、電話でだます首謀者のグループに斡旋(あっせん)する――。いわば、受け子の派遣業者だ。

 「『ニートはいないか』と勧誘」。そんな小さな新聞記事に目がとまった。働いていない若者をオレオレ詐欺の一味に誘い込んでいたという。

 記事に出てくるとび職の男(23)は、東京地裁で裁判中だった。複数の高齢者から100万〜300万円をだまし取ったとされる罪だ。昨年10月、東京拘置所の面会室で向き合った。身長170センチほど。髪を軽く逆立て、手の指に小さな入れ墨がある。人なつこく笑う若者だった。

 被害が減らない理由を知りたい。そう頼むと、匿名を条件に取材に応じた。

 ■「友達」数百人

 実際に男が勧誘していたのは、主に大学生や専門学校生だったという。

 とび職は逮捕時の職業。リクルーターをしていた時期は、千葉市にあるホストクラブの経営者だった。

 「自分たちみたいな身なりの人が声をかけても警戒される。そこで私は、女子大生や20歳前後の女の子に誘ってもらっていた」

 早朝の割安な時間帯に来店する女子大生らと親しくなる。狙いはその人脈だ。SNS(交流サイト)を通じて数百人規模の「友達」がいることも珍しくない。900人という客もいた。

 SNSからメッセージを送ってもらう。

 〈いい仕事があるらしいんだけど、誰かいない?〉

 知人の女の子からの頼み。割のいい仕事。一度の呼びかけで数十人から反応がある。連絡先には、男のレンタル携帯電話の番号を知らせてもらった。

 ■実行後に大学

 顔は合わせない。名乗るのも偽名だ。携帯電話を通してやりとりする。

 「行った先で渡される書類を受け取って『失礼します』と帰ってくるだけ」

 実際の行き先はだまされた人の家。受け取る書類は現金が入った袋だ。

 ファミリーレストランで待機させ、受け取りに出る前に初めて、「行った先にいるおばあちゃんには営業部の○○と名乗ってください」などと指示を出す。

 「えっ、偽名?」

 怖くなって逃げる者もいた。実行後に「これって詐欺ですか」と電話してくる者もいた。「俺もわかんないです」ととぼけた。現金をコインロッカーに入れるか、公園トイレの個室越しに受け渡して終わる。

 詐欺とわかると、多くが次には断った。疑問を口にしない者には報酬に色をつけ、次も、と頼んだ。受け子の取り分は詐取額の2〜5%。500万円取れれば2%でも10万円になる。

 実行後、これから授業があると言って、大学に行く受け子もいた。「本人は軽いノリですよ」

 罪悪感は無かった、と男も言う。仲介手数料で得た金は月100万〜300万円。それでも、「自分は人を紹介していただけ。その先で何があるかなんて、関係ないと思っていた」。

 ■豪遊ぶり、エサ

 男から「リクルーターの仲間がいた」と聞き、千葉市中央区の歓楽街を訪ねた。雑居ビル地下のキャバクラへ。その仲間がよく通っていた店だ。ドレス姿の若い女性が焼酎の水割りを作ってくれた。客層は20〜30代が中心で、10代も時々いるという。「羽振りがいいけど、その若さで何して稼いでいるんだろう」。女性は不思議そうに言った。

 そのリクルーター仲間の男(24)も、東京拘置所にいた。一晩に何十万も使って豪遊していたといううわさ話を確認すると、「遊びじゃない。勧誘のための先行投資」と説明した。

 受け子集めを始めたのは2011年11月。逮捕される1年前だった。ヤミ金融業をする傍ら、「楽に稼げる仕事」を探していて、30代の暴力団関係者から頼まれた。以来、毎夜のようにキャバクラや性風俗店で遊び、金を使った。店長や客引きらが羽振りの良さの理由を探って聞いてくる。

 「何の仕事をしているんですか?」

 そこで切り出す。

 「日銭で仕事をやるやつはいない? 紹介してくれたらいくらか渡せる」

 話に乗った10代の売れないホストは、地元の友人や仕事仲間を次々に誘った。「書類を受け取るだけ。やる気次第で楽に稼げる」

 リクルーターの男は言う。「金に困ったやつは後先なんて考えない。1人見つければ、『ねずみ講』のように増えた」。未成年者から無職の年配者まで50人以上誘い入れたという。

 だが、逮捕される受け子が増え、送り出した2人に1人が捕まる事態に。追い込まれて使った顔見知りが捕まり、自身の逮捕につながった。

 男が起訴された事件は計15件、被害総額は約8千万円。昨年11月、東京地裁で懲役7年の判決を受けた。

 控訴した男は面会で量刑への不満を口にした。「利用されていただけ。受け子と一緒。俺も捨て駒だ」

 男に受け子集めを頼んだ暴力団関係者の法廷を見に、東京地裁に通った。裁判長らの質問に、時に笑みをたたえて黙秘を貫いた。

 2月の判決は、暴力団関係者を首謀者とつながる立場と認定した。だが、姿を隠して電話でだますそのグループの実態は、謎に包まれたままだった。(井上恵一朗)

 ■「安易に乗らないで」

 警察庁特殊詐欺対策室の原田義久室長は「受け子を捕まえても事情を知らず、依頼者が誰かわからないケースが少なくない。『簡単な仕事』と誘われても、安易に乗らないようにしてほしい」。特に、10代の検挙の7割以上が受け子で「詐欺に加担させないための呼びかけを強化する」と話す。

 ■受け子の検挙、昨年急増

 現金詐取に口座振り込みを使う手口は4割を切り、「振り込め詐欺」の呼称は実態に合わなくなった。警察庁によると、昨年検挙された1805人中、受け子は978人で54%。前年の709人(47%)から急増した。リクルーターも前年より24人増えて101人。ハローワークや居酒屋での勧誘、スポーツ新聞に架空の求人広告を出して集めていた例もあるという。