藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

リスクでない場所。

最近FPの人たちの間では「長生きこそリスク」というのがキャッチフレーズだという。
ひたすら平和を志向した、戦後70年でえらい時代になったものである。
「長生き」がリスクなら、あまりそうならぬように医療方法などをセーブしてはどうか、と思うがそちらはそちらで、ひたすら「長命」を志向する。
人間とはそんなアンバランスなものなのかもしれない。

それにしても、先進国でも福利厚生の手厚いといわれる日本で、退職時に四千万円もの貯金を持ちながら、座すれば81歳で無一文になるという。
長生きは本当に良くないことなのだろうか。

60歳で定年、それから30年も余生がある、というのがバランスを欠くという指摘も多い。
ドラッカーでさえ70歳定年を提言している。
実際、矍鑠(かくしゃく)とした70-80代の人も多い。
政治や時代、なにより人生についての洞察も深い。

これからは「60〜80歳の人たちにいかに仕事場を提供できるか」というのがビジネス界の注目点になるに違いないと思う。

その「年が活きる場」というのは、教育とか保育とか、また介護とかケアとか、そうした「人対人」の場面になっていくに違いない。
ITやアプリ開発は若い人に任せておいて、人生を生きるソフトウェアにこそ高齢者パワーを生かす先駆者になる必要があると思う。

「高齢者ベルト」はこれから増える一方、つまり「供給には困らない」という絶好の時代である。
若者消費の不景気を嘆くでなく、これからの労働圏にこそ思いを馳せ、機会を切り開いていくべきではないだろうか。

資産4000万円でも底をつく 人生90年の備え方
2014/4/15 7:00
「賃貸住宅に住み続けるべきか、思い切って自宅を購入すべきかどちらが得か迷っています」──。頑張って預金8000万円をためたある50代の夫婦。ファイナンシャルプランナー(FP)の小屋洋一氏に相談したが答えは意外なものだった。「持ち家でも借家でも、あなたの人生にとって大きな問題ではありません」

小屋氏が重視したのは、今後30年以上続くこの夫婦の残りの人生のお金の問題。「運用の仕方によっては1億円以上の損得が生じますよ」。預金一辺倒で運用など考えていなかった夫婦はこの日以降、相談内容を老後のマネープランに切り替えた。

■長生きは「リスク」
日本人の平均寿命は2012年で男性79.94歳、女性86.41歳。60歳で退職しても先は長い。2年で2%の物価上昇をうたった日銀の「異次元緩和」から1年たち、物価は上がり始めている。現金を眠らせておくままでは資産価値が目減りする。年金支給の開始年齢も段階的に引き上げられている。老後の備えは今や1人1人の切実な問題だ。

生命保険文化センターによると、老後の通常の生活にかかるお金は夫婦で最低でも月22万円、旅行などゆとりある生活には月35万円が必要。体調を崩し入院すればさらに1日平均2万1000円、介護付き有料老人ホームに入れば入居時に1000万円近くかかる場合もある。

日経ヴェリタスがFPの協力を得て夫の60歳の退職時に4000万円の金融資産がある年金暮らしの夫婦をシミュレーションすると、年金収入に加えて金利の付かない現金の状態のままの資産を取り崩して生活する場合、81歳で完全にお金がなくなってしまった。

「長生きはお金の面から見ればリスクだと認識し、しっかり備えなければいけない」。老後資金を研究する山口大学の城下賢吾教授は警鐘を鳴らす。

老後の必要資金をどのように備えるべきか。専門家は(1)資産運用(2)就労継続(3)資産の有効活用──の3点を助言する。

■70代でも資産形成
フィデリティ退職・投資教育研究所の投資家3000人調査では投資目的について、70代の回答でトップだったのは「老後の資産形成のため」(47%)。70代でも資産形成に励む必要があるという、現実の厳しい一面を示す結果になった。

先のシミュレーションによると年率3%のリターンで4000万円全額を運用した場合、お金が底をつくのは90歳。現金を眠らせる場合と比べて、9年遅らせることができる。

仕事のリタイア時期を延ばし、趣味の夫婦旅行を楽しむのは横浜市在住の72歳男性。60歳で大手メーカーを定年退職後、ビル管理技術者資格を生かし62歳から大型ビル管理の仕事を始めた。週4日ほどの勤務で月10万円稼ぐ。「生活費は年金、趣味は仕事の収入から。資産は取り崩さない」。金融資産の8割を株式投資に配分し、資産運用にも励む。「仕事と趣味、投資が元気の源」と笑顔だ。

自宅を担保に資金を借り、死後に自宅を売って返済する「リバースモーゲージ」も広がっている。東京スター銀行は2005年のサービス開始以降、利用件数は低迷し続けたが、ここ3年で急速に契約を伸ばし、2月には累計で3200件を超えた。

人生90年。豊かに暮らすにはお金がかかる。あらかじめ老後の負担を正しく把握し、資産を上手に活用することが長生きを謳歌する第一歩と言えそうだ。(詳細は13日付紙面に)

大酒丈典、飛田雅則、押切智義が担当した。

日経ヴェリタス2014年4月13日付]